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清酒の量産と品質

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酒販免許前夜
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清酒の文明化と文化性
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酒論稿集
20世紀の酒文化
清酒の量産と品質
精米 人力による杵搗きが水力(水車)から電動式に変って、その効率の向上ははかり知れない。更に昭和五年に金剛砂を焼結し た切削式の今日の竪型精米機が登場すると、その効率の良さから、二〜三年の間に全国に普及した。今日では高価だが全自動式精米機 の利用が増加している。精米は玄米の層状構造にそって精米することが肝要で、扁平(原形)精米で、砕米を出さないことである。
洗米・浸漬 一、二分間で米を洗い、糠を除去して、浸漬槽に送り、所要時間浸漬する。ここでの問題は精米により米の水分が揮 散することの影響である。白米はその水分含量によって、浸漬中の吸水量や白米の割れが違う。
 七〇%精白米では米の水分含量は約二%減(玄米一五%が一三%となる)、五〇%白米では五%減で(白米水分一〇%)となる。水分 一三%の七〇%精米歩合米は浸漬によって白米重量の約二八%まで吸水して、飽和し、それ以上吸水しない。どの品種の米でも同じで ある。普通酒の白米はこの程度の白米だから、昔から浸漬には問題がなかった。ところが精米が進み、水分が少なくなると、減少水分 一%当り三%の水を吸水する(熊谷、野白)。そして乾いた白米は水に接するとひび割れを起こし、ここに水が入り込むから計算以上に 吸水し、水分の多い、軟らかい蒸米となり、好ましい酒質とならない。これを防ぐために従来は(今日でも)限定浸漬といって、短時 間浸漬して、表面の付着水とで、吸水量を調節した。筆者らは乾いた白米を加湿して、玄米水分の一五〜一六%にしてやることでうま くいくことを明らかにした。この調湿理論を上手に採用している工場が少ないことが気になっている。
 この浸漬の調節操作は蒸米を一定に仕上げて、以後の製麹やもろみの経過を定常化して、好品質を確保する為に重要である。

蒸し 今日、強い蒸気で、長く、十分に、が一般的である。蒸しは生デンプンをα化するためである。それは米粒中への蒸気の侵入 により起こる。これは色素の侵入を利用して一五〜二〇分であることが証された。これによって連続蒸米機(横式は月桂冠研究陣、 竪式は七条氏の発明)の横式は昭和三六年に開発された。
 従来の和釜と甑による蒸しの量は、白米二トンが最大で、五・六時間かかるから、一日一回の作業ということになる。連続化により 能力は図表3のように無限大になりうる。甑でも連続蒸米機でも蒸しの理論は同じであるから、一定の蒸米が得られ、酒質も常に同じ にすることができる。製造効率は大きく違うが。
 近年、蒸しによらない液化仕込や焙炒仕込法が開発された。前者は熱水に生米を入れ、耐熱性デンプン液化酵素を作用させて、米を 液化して流動性をよくし、これに麹を加え、発酵させる方式。後者は三〇〇℃くらいの熱風で瞬時にα化と蛋白変性をさせて仕込む。 両者とも蒸米機は不要である。前者はもろみの初期でも流動性がよく、大量仕込ができ、管理にメリットがある。本法はビール醸造法 に通じるように思う。両者とも特許で、米の分解様式が常法と違うし、香味にもう一歩のところがあるように感じるので、さらなる研 究を期待している。

麹造り 麹は麹蓋で造ってきたし、今日でも「伝統を守る」メーカーも数多い。麹造りは麹菌の生育にともなう発熱と炭酸ガスの 発生が激しいために、麹蓋に小分けするのだが、昼夜の別なく労力を要する。その為に箱麹法や床麹法など労力節約型の製麹法が考案 されてきた。昭和三五年河村氏は通風により温湿度調節を行う「自動製麹機」を考案した。以後、多くの形式が考案、実用されて、製麹 労力の軽減に貢献し、大工場では殆ど採用している。
 米麹は糖化力が非常に強く、ツキハゼ麹が優れているとされている。一方、水分が多く蒸米表面に菌糸が生育した「バカハゼ麹」は 酵素力が弱い。これは昔から言われていることである。最近、秦氏らの研究で米麹では特有の糖化酵素生成の遺伝子が強く形成される ことが明らかにされて、今までの経験に正しい理論付けがなされた。これらの理論を発展させると機械製麹によっても、ツキハゼ麹から 総ハゼ麹まで、目標とする麹造りが可能となろう。

酒母(d) 目に見えない酵母を集殖培養する酒母造りは長い歴史の間、試行錯誤により築き上げられたものである。米麹にはた いがい酵母が同居しているから、水を加えると酒になった。次第に大量化するにつれて、酒母造りの工程の必要性が認められ独立した。 生もとという乳酸発酵などを組み込んだ自然的酵母の純粋培養法の確立は世界に例を見ないすばらしい発明である。詳細は専門書によっ てもらいたいが、江戸時代に、この生もとによる安全醸造のために、灘が大発展し、その名声は今日も続いている。
 醸造試験所が設立された頃「酵素」の概念が広がり、「水麹法」とか、「櫂(かい)で潰すな 麹で溶かせ」という標語が生れた。生もとの重労 働の「山卸(やまおろし)」作業を「水麹法」で代替し、製造を簡易化したのが山廃もと(山卸廃止もとの省略名)である。これと時を同じくして、酒母 の乳酸の意義を明らかにして、これを活用したのが、江田先生による「速醸もと」であり、名前の通り約一〇日間で完成する。生もとは約 一ヶ月かかる。今日、殆どこの速醸もとが使用されている。このような効率的な速醸もとでも灘での積極的採用は昭和三〇年後半、生産の 爆発的伸長の頃からである(『灘酒』灘酒研究会編)。これは灘の酒質の維持の考えに基づいていたものと思うが、今日でもこの考え 方について、生もと酵母の特色(アルコール耐性が強く、細胞膜構成脂質に特色)の研究が行われていて、酒母育成法と酒質との関係の 解明は興味深い。
 最近は酒母造りを省略して、初添仕込の時に乳酸を加えて、乾燥酵母や自家培養した酵母による仕込も採用されている。

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