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過去記事一覧

清酒の量産と品質

近代酒類流通の
  源流をたどる


京都老舗酒販店の
  明治・大正・昭和


東京下町の小売酒屋
 激動の昭和史


酒販免許前夜
 浪速の酒屋


食の洋風化と
  ワインの和風化


20世紀を象徴する酒
 甲類焼酎


ウイスキーの日本化は
  いかに進められたか


ビールこそが
  「20世紀の日本の酒」


自由度の高さと
  風土性の豊かさ
  −乙類焼酎の100年


宮廷の酒・国家の酒・
  大衆の酒−泡盛の100年


清酒の文明化と文化性
  の再構築


酒論稿集
20世紀の酒文化
免許制度以前の大阪小売酒屋
酒屋専用の引き車
−お酒をお買い求めになるお客様というのは、一般のご家庭ですか?
糀矢  ええ。近所ではね。叔父のところは飲食店に半分以上行ってたから。
−飲食店というのは、いまで言う居酒屋とか焼き鳥屋みたいな店ですか?
糀矢  そうですな、関東では焼き鳥屋というけれど、大阪では関東炊き屋といいます。そういうとこに四斗樽で売る。一般のご家庭でもようけ行くとこは樽で行きましたなあ。半荷の樽もあったですよ。
−大阪市内にはそういう店はいっぱいあったんですか?
糀矢  このあたりにはありません……。飲食店のいいところは大阪の南、北、東とか東西南北というようなとこですね。
−そこまで配達に行ってた?
糀矢  はい。車や自転車で。
−大八車ですか?
糀矢  大八車は大きいでしょう? 私ら酒屋専門の車は同じかじ棒を付けて、持つところはひとつですけれど、かじ棒がこっちに一本だけ付いてる。肩引き付けて、肩に掛けて、かじ棒持って。その上には板は引いてないんです。四斗樽がはまるように、落ちんように枠があるだけ。それで三丁積めますねん。
−それを何人で引くんですか?
糀矢  大きかったら、一人です。その時分は酒屋の店員がみな稽古してました。四斗樽を膝の上に持ってきて樽の上に乗せる二丁積み。わたしらは三つのところまでは乗せましたけどな。四斗樽抱えてね。醤油なんかはちょっと重い。そのかわり縄が掛かってる。
−樽は裸ですか?
糀矢  はい。薦は進物用とかでしたね。新地の料理屋に行ったら、仲居さんがおって三味線弾いて飲ますようなところがあるでしょ。そういうところやったら、入り口にザァーッと薦樽置いてました。

蔵は酒を桶で売る
−酒は問屋から買うんですか、それとも蔵元から直接買ったものなんですか?
糀矢  灘から来る酒は、大体新しい樽で来るんです。空いた樽は樽買いに売ります。小売屋は新しい樽を使いませんので、古い樽を買う。一空き、二空きと言ってね、新しい樽は高い。二空きくらいまでは高い。何回も使ってる樽は輪が茶色になっていました。
灘あたりだと馬力車で、樽を積んでいって酒を入れてもらってまた馬力車に積んで持って帰った。遠いところは汽車で行きますわな。先に買い付けに行って、蔵元には桶がようけありますから、きき酒してこの酒と決めといて帰ってくる。それでこっちから樽を送る。
小さい(小売)酒屋があるでしょう、そんなところは詰め口はしません。近所で5〜6軒の酒屋が組んで、うち5丁樽出すわ、うちは3丁出すわ。多いとこは10丁も出すし、大桶の酒一桶を全部詰めて、帰ってきて分けました。

どこでも売れた 手印で売った
−それを自分でやったのが問屋ですか。
糀矢  そう。桶一本買ってきて、それを二合瓶三本くらいにいろいろな酒を詰めて、小売屋の小さいところへきき酒用に持っていって「何丁買いますか?」と。小売屋がそれを二丁、三丁と買う。その当時の小売屋はそんなんが多かった。そうなると中身はどこの酒だかわかりませんわな(笑)。だから信用なかったら買わへん。問屋は自分の商標を持っていて、私のとこも二つか三つ名前があったからそれを付けて売っていました。よく売れたらその商標が売れました。酒は八百屋にも売ってるし、炭や薪を売ってるところでも売ってるし、そんな酒屋が30軒くらいこの辺でもありました。
−当時は誰でも酒を売れましたものね。
糀矢  そういうところへ私らは売りに行きました。こっちの店へ出てきてからはそんなことをしませんけどね。叔父の家におる折は、半分それをやりました。そんなとこへ行かん時には町内の家庭に売りに行きました。
−買い付けは灘が多かったんですか?
糀矢  灘が多いですけれど、兵庫県にもようけ蔵があります。伊丹、池田あたりにもありましたし、京都の伏見もよく行きました。もっと遠いところもありましたよ。四国から船で積んできたこともありますしね。その時分の仲買をトンビと言うんですよ。それが売りにくるんです。「どこどこの蔵にこんな酒があるから買おてくれ」と。そのトンビと心やすくなったら注文せんでも、もうない時分やなあと思ったら言うてくるんですよ。蔵は直接売りに来ませんねん。そういう仲買人に頼んで。
−小売酒屋がいくつかの樽の酒を混ぜて売ることもありました?
糀矢  十分ありました。辛口のに甘口のに、いろいろありますよ。色の付いた……。いまの酒は脱色してますれど、昔はそのままのがようけありましたな。

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