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過去記事一覧

清酒の量産と品質

近代酒類流通の
  源流をたどる


京都老舗酒販店の
  明治・大正・昭和


東京下町の小売酒屋
 激動の昭和史


酒販免許前夜
 浪速の酒屋


食の洋風化と
  ワインの和風化


20世紀を象徴する酒
 甲類焼酎


ウイスキーの日本化は
  いかに進められたか


ビールこそが
  「20世紀の日本の酒」


自由度の高さと
  風土性の豊かさ
  −乙類焼酎の100年


宮廷の酒・国家の酒・
  大衆の酒−泡盛の100年


清酒の文明化と文化性
  の再構築


酒論稿集
20世紀の酒文化
清酒の文明化と文化性の再構築
日本文化の輸出
−今世紀は酒が世界中を移動した時代でしたが、清酒の国際化をどうお考えですか?
栗山 今、私共の「米国月桂冠」では「HAIKU(俳句)」というネーミングの高級酒を発売しています。企画したのはアメリカの若い女性です。俳句の国際化もここまできたかと、驚いているほどです。10年前、われわれが、アメリカに酒蔵を造ったのは、それまでの輸出では、米の値段や、輸送費からして、全く採算が合わなくなり、どうしても現地で造る必要が生じたからなのです。調査、検討の結果、米の産地で水のよいサクラメントに進出することにしたのです。
これによって、はからずも日本文化をいろいろと紹介できるようになったのです。未だに多くのアメリカ人にとって、日本はフジヤマ、ゲイシャ、サクラというイメージが強いのですが、それだけじゃないということを「俳句」というこの商品の普及で、日本文化PRの一翼を担うことができたと喜んでいます。

世界に通用する日本の「食」と「酒」
−異文化の酒が普及していく過程では、本来の酒のかたちが相当に変わります。外国人が清酒にトマトジュースを入れて「この方がうまい」と言うのを許せますか?
栗山 許せますよ(笑)。かつて、私がカルチャーショックを受けたのは、豆腐にケチャップをジャーとかけ、スプーンの尻でぐちゃぐちゃに潰して食べる。「これヘルシー」って(笑)。これなどは、「豆腐を使ったアメリカ料理」と言いたいけれど、実際、アメリカの寿司なんかもこれと同じで、カリフォルニアロールなどという手巻寿司にはびっくりしますね。しかし、異文化への入り口はそれでいいのだと思いますよ。
−日本にもいろいろな外国の食べ物や習慣が山ほど入っています。それに清酒が対応しきれなくなっている。日本料理と清酒の結び付きはものすごく強いですが、普段の食卓に伝統的な日本料理は並んでいません。
栗山 国籍不明の料理が並んでいる。
−そこに入っていく清酒というのが、ものすごく大きいのではないですか。
栗山 たしかに、今は模索段階でしょう。日本の家庭の食卓は、ますます無国籍化し、本当の日本料理は料理屋に行かないと食えなくなるのかも知れません。しかし、最近、健康と長寿の面から、伝統的日本食は世界的にも断然すぐれていることが、いよいよはっきりしてきました。近い将来、必ずや日本の「食」と「酒」も戻ってくるものと確信しています。その日本料理の本質は何かということは、薄味の京料理を解析していけばわかると思いますね。これによって日本の酒の本質も垣間見えてくるように思うんです。

清酒の本質は「文明の酒」
−話が戻りますが、さきほど今世紀の清酒に「科学」が果たした役割が極めて大きいというお考えを頂戴しましたが、一方で清酒は「文化の酒」だという意見があります。
栗山 日本酒と言うのは「文化の酒」か「文明の酒」かという議論もありますが、本質的には「文明の酒」だと私は考えます。
もちろん、あらゆる酒は「文化の酒」として発祥する。しかし、ビールも日本酒もワインでさえも、いまや「文明の酒」になっていると私は思っています。だから、その「文明の酒」にいかに「文化性」を残していくかを考えないといけない。
それには、今後、技術と流通の変革をしっかりと見極めてゆく必要があります。現に、技術ではもう大きな変革が見えています。遺伝子工学です。日本は粒麹を使うからこういう酒になったというが、その影武者は麹菌のグラBという遺伝子であったということが、最近、当社の研究によって発見されたのです。こうした解析が進むと、それによって日本酒造りの秘密といわれてきた、その本質もだんだんわかってきて、的確な手が打てるわけです。「文明の酒」というのは、見方を変えれば、再現性を高めていった酒です。偶然ではなく、狙った酒がきちんと造れるということです。麻井宇介(酒文化研究家)さんは、「現在の清酒はピュア、純粋さを追いかけた結果、均質な純林のようになってしまった。本来、酒はいろいろな雑多なものを取り込んだ自然林であって、純林にしていくのはいかがなものか」との疑問を投げかけておられます。しかし、これからは十分にコントロールできる技術があっての自然林です。それにはまず純林を作る技術も必要です。ついで、それらを組み合わせ、上手に共生させてゆくべきだと考えます。
最近、若林三郎(醸造研究所・室長)さんから「今世紀最大の発明」と評価して頂いた「液化仕込」なども、いい酒を造るための確実性の高い、21世紀へ向けての技術革新だと思っています。
その結果、21世紀には、酒の技術はさらに大きく飛躍し、これまで想像もしなかったようなきわめて魅力的な新商品が次々と生まれるものと確信しています。

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