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過去記事一覧

清酒の量産と品質

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食の洋風化と
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  大衆の酒−泡盛の100年


清酒の文明化と文化性
  の再構築


酒論稿集
20世紀の酒文化
食の洋風化とワインの和風化
甲州種を使った高級ワインへの挑戦
−御社では、山梨は高品質のほうを中心にやっておられて、藤沢の工場などでは安価でたくさんの人に楽しんでいただけるものを造っておられると理解しておりますが……。
小阪田  そうです。勝沼でいちばん最初にわれわれが取り組んだのは、すでに日本にある甲州種のブドウを使っていかにいいものを造るかということでした。
いちばん最初に造ったのは、甘口でフレッシュなタイプの「ブランドブラン」。やや甘口で熟成タイプというのがその当時すでにありまして、これが「シャトーメルシャン甲州」です。
その次にわれわれが目指したのは、辛口タイプ。白ワインで甘口は比較的造りやすいんでが、辛口は当時からなかなかできなかったんです。それで、1980年代の前半、ムスカデの製法を参考にして造ったのが「甲州勝沼シュール・リー」で、これが辛口でややフレッシュなタイプ。マトリックスを考えていただきますと、甘口辛口という横軸があって縦にフレッシュと熟成があって、これで三つマトリックスが埋まったんです。
あと残っているのが、辛口で熟成タイプ。これは私が1990年に工場長の時に取り組んでやったんですけれど、甲州を樽発酵させて造ったのが「甲州小樽仕込み」というものです。これで熟成型の辛口ができまして、四つのマトリックスが埋まったわけです。「甲州小樽仕込み」は今年のスロベニアのリュブリアーナの国際コンクールで金賞をもらって、ボルドーの国際コンクールでも銀賞をもらいました。
すでに日本にある品種からまずスタートしようということで、そういうものを造った。それと並行してヨーロッパでいいワインができているブドウ品種を日本に持ってきて、それで造ろうということになりました。

いいワインを造る三つの条件
小阪田  いちばん最初に取り組んだのは昭和50年(1975年)。塩尻に桔梗ヶ原というところがありまして、ここで農家と契約をしてメルローを植えて、そのメルローは1985年産が第一号品です。それがリュブリアーナの国際コンクールで大金賞をもらい、それから連続してもらってる。
私はいいワインの条件は三つあると思っています。第一番目はブドウ品種です。第二番目はテロワールといって、土地と気候、人のかかわり方、第三番目に醸造技術と熟成技術。それが絡まっていいワインができてきます。
いちばん大事なのはブドウ品種。日本でも世界的にいいワインができているボルドー、あるいはブルゴーニュの品種をやってみようということで、それで導入したのがメルローですね。次にいいワインを造るためのテロワールとしては、それをどう栽培するかということがあります。われわれの経験とかあるいは海外からの情報ですと、ブドウをいかに密植するか。ブドウ自身にどんどんストレスを与えたほうがブドウの実にいろんな成分が濃縮されるということがあったので、とにかく密植にしよう。つまり、垣根栽培するということです。
それをいきなり農家の人にやって欲しいと思っても、まだほんとうにいいものができるのかはっきりした自信がありませんから、そのためにまず自園を作った。それが城の平の自園です。そこで造ったのが「城の平カベルネ・ソーヴィニヨン」。その次は白ということで、シャルドネを長野県で栽培しました。この「北信シャルドネ」は、昨年のジャパン・インターナショナル・ワインチャレンジというワインコンクールで、ベストシャルドネ賞をもらうまでになりました。
ここまで製品ができるようになったわけですが、桔梗ヶ原のメルローは今は棚栽培ですが、そういう体験ができましたので、今度はこれを垣根栽培に変えていこうと考えています。

世界的に見直される伝統ブドウ品種
−ワインが農業にとても近いものであるというのが大前提としてあります。しかしシャルドネ、メルロー、カベルネをさまざまな土地で作るというのは土壌改良も含めていろんな手を加えているわけで、じゃあどこで造っても似たようなものができるという話になりかねないなと思うんですが。
小阪田  それはそうではなくて、たとえばフランスの産地の中を見ても、ブルゴーニュという広い産地のものと、たとえばシャンベルタンという狭い産地のものは同じ品種であっても違ってくる。これはテロワールが違うから。だから、フランスと日本は気候風土が違いますから、ワインの味が違ってくるのはまたワインのおもしろさ。
もうひとつ、今、世界の産地でもう一回見直しが始まってるのが、その国の伝統品種を大切にしようじゃないかということ。われわれは、いちばん最初は甲州しかなかったから甲州でやったんですが、この日本独特の甲州でのワイン造りが次のステップにつながっている気がします。
−土着のもともとあったブドウ品種の個性と、ワインとしてのエレガントさ、グレードの高さは両立させられるものなのですか?先入観としては、「やっぱりカベルネだ」みたいなのがあるんですが。
小阪田  おそらく、世界的にも白はシャルドネ、赤でボディの強いのだったらカベルネ、メルロー、エレガントさだったらピノ・ノワールというのが一般的だと思います。ただ、そういう方向とは違って、伝統ブドウでシャルドネと同じ品質を目指すのではなく、それに近いところまでいけば世界に充分通用していく。
−評価の軸はひとつではないと。
小阪田  そうです。しかし単なる自己満足で終わってはならないと思います。だから、わが社としては、今年初めて甲州の辛口が賞をもらって国際ワインコンクールで認められたというのは、それなりの品質のものができるという客観的証拠でもある。

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