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酒論稿集
酒器論稿
ハッピーを大きくしたプレミアムビール
■ポイントは「香りの高さ」
ビール プレミアムビール市場を開拓したプレミアムモルツの、知覚品質上の一番の成功のポイントは「高い香り」にあると考えています。香りはビールを口にする時にまっさきに感じ、苦さやキレよりも強い印象を与えるからです。プレミアムモルツは缶の蓋を開けたとたんに香り、グラスに注ぐとさらに香りが立ちます。初めて飲んだ時には、これほど香りの立つビールを消費者は受け容れるのだろうかと思いましたが、消費者はあっさりと受け入れました。
 ほかの酒を見渡してみても香りが好みを左右し、グレードの高さを感じさせる役割を持っていることがわかります。日本酒のプレミアムクラスを代表するのは大吟醸酒というタイプですが、華やかな香りが特徴です。ワインもブドウや発酵由来の香りの豊かさや質を極めて重視します。ウイスキーもそうです。

■複数の樽生ビールがある風景が目前
 切り口を変えてビールの多様化という視点で飲酒トレンドを見てみましょう。「とりあえずビール」が全盛だった時代には、最初の乾杯は「おつかれさん」という意味で、ONからOFFに切り替える儀式でした。だから「少しでも早くみんな一緒に」となったのです。
 これが飲食店でのビールが瓶からジョッキ主体になって、ビールが嫌なら他のものを頼めるように環境が変わりました。チューハイやカクテルで酒デビューした世代が社会人になり、有無も言わさずにビールに決めてしまう剛腕上司も少なくなって、気がつくと「とりあえずビール」はずいぶん影が薄くなっています。カシスオレンジ、梅酒ソーダ、角ハイボールなど、スタートから酒はバラバラ、家族で飲むような私的な場面でなくとも自由に選ぶことが許されるようになってきています。
 こうした変化はビールのなかでもあって、プレミアムモルツを選ぶ人がいれば、ベルギービールにする人もいる、大ジョッキもグラスビールもあって、日本の酒場もロンドンのビアパブのように、何本もタップ(注ぎ口)が立ち、複数の生ビールが選べるようになるのが目前と思えます。

■ノンアルが広げるビールシーン
 おそらくノンアルコールビールもビールの選択肢のひとつです。今のノンアルコールビールはとてもよくできていて、酒飲みにとっておいしい飲み物に仕上がっています。夕食後も仕事をしなければならなかったり、体調をコントロールしたりする時にピッタリです。まだ、大人の味の清涼飲料として飲んでいる人は稀ですが、アルコールのないビールとしてビールの飲用シーンを着々と広げています。
 最初にチューハイブームの後のビール再成長のストーリーが「すっきり飲みやすく」化だったと言いましたが、そうすることで本当はビールでなくてもよかったシーンをビールがカバーして伸びたのです。いまプレミアムビールやノンアルコールビールが出てきて、「すっきり飲みやすく」ビールで代替されていたシーンが、より心地よいビールに置き換えられてきているのではないでしょうか。

■どんなビールを注ぎ合うか
 最後に個々に好きな酒を飲むようになってきたという変化が、どこまで進むのかということを考えて終わります。「とりあえずビール」が廃れてきているのは確かですが、これまで酒席の暗黙ルールであった「注ぎ合い」は根強く、性別年齢によらず少なくない支持があります。「まあまあ一杯」「すみませんなぁ」というやり取りは、相手に関心を持っていることを示す態度で、コミュニケーションの手段です。強制的な注ぎ合いは論外ですが、打ち解けるきっかけづくりにちょうどいいわけです。注ぎ合いはもともと日本酒でやっていたのですけれど、アルコール度数が15%もありますからつい飲み過ぎて悪酔いしてしまいます。でもアルコールが5%前後のビールでならひどいことにはなりません。ビールは注ぎ合いに向いている酒です。
狩野さんビール飲む 個人が好みの酒を選ぶ飲み方が広がっても、人と人をつなぐコミュニケーションとしての飲酒の本質は揺らぐことはありません。ただ、何を注ぎ合うかは変わっていくでしょう。プレミアムビールを選ぶ人、新ジャンルでいい場面、ノンアルコールビールという相手もあるわけです。TPOに合わせてふさわしいビールを選び分けるのは、これからのスマートな注ぎ合いだと考えます。


2012年4月 於ウイスキーヴォイス:東京都港区お台場


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