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第1回 ハッピーを大きくしたプレミアムビール
狩野卓也


第2回 変わりゆく饗宴外交
西川恵


第3回 かかりつけの名医のみつけ方
松井宏夫


第4回 日本の赤ワインの礎「マスカット・ベーリーA」
坂田 敏


第5回 週末はいつもアウトドア
廣川健太郎


第6回 不可能の壁を超える実践優位のマーケティング
石井淳蔵


第7回 ブレンダーという仕事
輿水精一


第8回 過去の体験が濾過されて曲になる
村井秀清


第9回 グラスはつくり手と飲み手をつなぐ
庄司大輔

第10回 落語を世界へ 英語で伝える日本の話芸
立川志の春


第11回 和食は「ご飯がたべたい」料理の文化
阿古真理


第12回 若者のための酒場歩きガイド
橋本健二


第13回 画像で気持ちが伝わる ネット口コミが市場を動かす
徳力基彦


第14回 創業60周年 復活した十三トリスバー
江川栄治


第15回 カクテルバーのコミュニティ
豊川紗佳


第16回 次に目指すは日本のバー文化の底上げ
坪倉健児


第17回 カクテルアワード受賞経験を倉敷で活かす
松下知寛

第18回 地域でつくるオペラアカデミー「農楽塾」
中嶋彰子

第19回 「消費されるワインの最高峰」を目指して
椎名敬

酒論稿集
酒器論稿
変わりゆく饗宴外交
■饗宴外交マインドに溢れた小渕恵三氏
西川 日本の歴代の首相ではこうしたマインドが溢れていたのは小渕恵三首相です。彼の気配りはすごかった。毎回、饗宴の招待者リストに目を通し、「この人はどういう人だ」と確認して、メニュー内容、席次、余興をすべて自分でチェックしていました。1998年にクリントン大統領を迎えた時には、1泊2日の非公式訪問でしたが迎賓館で晩餐会を開くことを決め、晩餐会場に蝦夷松の盆栽を飾って鑑賞させます。北方四島の国後島を原産とする樹齢250年の蝦夷松の盆栽を見せ、北方領土返還に対するアメリカの理解と支援を引き出す狙いです。
 沖縄サミットの時には沖縄にふさわしい饗宴を実現するためチームを作ります。料理、飲み物からテーブル・セッティング、照明、給仕する人の衣装まで、それぞれの分野の第一人者が集まり、すばらしいものに練りあげていきます。小渕首相は晩餐会の料理をジャーナリストにも出すように指示していました。もちろんそこからの波及効果を狙ってのことです。残念なことに準備が本格化した4月に急逝され、森喜朗氏が引き継いで、「ジャーナリストに出す必要はない」となって実現しませんでしたが、小渕首相の沖縄サミットの晩餐会を見てみたかったです。

■テーブルに乗り始めた各国のワイン
―― どのメニューも興味深いものですが、この20年間の饗宴を俯瞰した時に、このへんが変わったとお感じになるのはどんなところでしょうか。

西川 いちばんは出されるワインが多種多様になったということです。20年前はフランスワインを出していれば間違いないというところがありましたが、今は新大陸や南アフリカのワイン、東南アジアでもワインをつくっている国は13ヶ国もあり、ミャンマーでもタイの資本が入ってつくり始めていますし、もちろん日本のワインもあります。東南アジアのワインはまだレベルがどうかという話はありますけれど、それによって選択肢が増えたのは確かです。これによって相手の国のワインでもてなすというやり方もできるようになりました。
 ちょっと話はずれますが、これはアジアが平和な時代に入ったということでもあります。ワイン産業は農業と装置産業が合体したもので、ブドウを植えたら翌年できるというわけにはいきません。収益を生むまでに一定の期間が必要ですから、平和でなければ誰も投資しようという気にならないわけです。そういう意味でもアジアは平和な時代に入ったと言えます。また、アジアのワインマーケットは、中産階級の新しいライフスタイルを示す飲み物として出発しており、もともとワインが労働者の飲み物だったヨーロッパでとは意味が違います。さらにそれを引っ張っているのは女性です。ワインがアジアで花開いているのは中産階級の台頭や女性の社会進出と連動していて、これから益々増えるという見通しで投資されているということです。
 さまざまな国がワインをつくりはじめたことは、別の見方をすると自国産のワインでもてなすという動きが出てきているということでもあります。中国は一時期フランスワインを出すことでステイタスを示すところがありましたが、現在は自国産のワインを出し、スタイルを変えてきました。日本もその過渡期にあります。宮中はいまもフランスワインを使っていますが、近年、『民主党ワイン産業振興議員連盟』が外務省や官邸に、日本産ワインを使うように要望しています。

―― 日本ワインは年々クオリティがあがっていますからね。総量が少ないので目にする機会がまだ多いとは言えませんが、質は世界のトップに近づいています。

西川 そうですね。今、日本の在外公館で天皇誕生日(12月23日)に開催されるナショナルデーのレセプションパーティーでは、日本ワインを出す在外公館が増えています。

―― 在外公館でのそのパーティーでは、日本酒も使うようにという指示が昨年末に外務省からでたという新聞報道がありました。

西川 それは前からでています。乾杯は日本酒でやろうと外務省は言い続けています。

―― そうだったのですか。

西川 そういうことに関心がある大使は積極的で、日本酒の啓蒙パーティーを催したりしますね。そこは大使が関心を持つかどうかに関係します。
 大使は日本酒と日本ワインを勉強してから赴任したらいいと思います。自国の酒の基本的な特徴くらいはわかっていて、サービスしながら「この酒はこういうタイプですよ」と説明できたほうがいいですから。昨年帰任したフランスのフォール大使ご夫妻は、日本はフランスワインに詳しい人が多いと聞いて、パリで夫婦でワインスクールに通って基本的なところを勉強してから赴任したとおっしゃっていました。


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