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第1回 ハッピーを大きくしたプレミアムビール
狩野卓也


第2回 変わりゆく饗宴外交
西川恵


第3回 かかりつけの名医のみつけ方
松井宏夫


第4回 日本の赤ワインの礎「マスカット・ベーリーA」
坂田 敏


第5回 週末はいつもアウトドア
廣川健太郎


第6回 不可能の壁を超える実践優位のマーケティング
石井淳蔵


第7回 ブレンダーという仕事
輿水精一


第8回 過去の体験が濾過されて曲になる
村井秀清


第9回 グラスはつくり手と飲み手をつなぐ
庄司大輔

第10回 落語を世界へ 英語で伝える日本の話芸
立川志の春


第11回 和食は「ご飯がたべたい」料理の文化
阿古真理


第12回 若者のための酒場歩きガイド
橋本健二


第13回 画像で気持ちが伝わる ネット口コミが市場を動かす
徳力基彦


第14回 創業60周年 復活した十三トリスバー
江川栄治


第15回 カクテルバーのコミュニティ
豊川紗佳


第16回 次に目指すは日本のバー文化の底上げ
坪倉健児


第17回 カクテルアワード受賞経験を倉敷で活かす
松下知寛

第18回 地域でつくるオペラアカデミー「農楽塾」
中嶋彰子

第19回 「消費されるワインの最高峰」を目指して
椎名敬

酒論稿集
酒器論稿
過去の体験が濾過されて曲になる
レコーディング中の風景、 ■バブル崩壊が音楽家への道をアシスト
―― バークリー音楽院を卒業して帰国されときはもうプロの音楽家になろうと 決めていたのですか?
村井 そのときもまだそこまでの覚悟はありませんでした。ただ、バブル崩壊で 就業環境は全く違う国ともいえるくらい悪くなっていて、もうまともな就職なんて望めません。そこで、アメリカで学んだ音楽をベースにして、生計を立てようと思い、まずはジャズのミュージシャンとなりライブやストリートで演奏することからはじめました。ライブでの演奏はお客様の反応がダイレクトに伝わるしとても楽しいのですが、それだけでは生活していくのがやっとです。そのときに今所属しているアーティスト・マネージメント・オフィスとご縁ができて、演奏だけでなく少しずつ作曲の仕事をはじめるようになりました。
 作曲の仕事というのは、最初にはじめたのはテレビやラジオの放送の中で使う天気予報の音楽や短いCMの音楽の仕事からでした。たとえば、3秒目に番組のタイトルが流れ、8秒目にベルが鳴り、12秒目で最高に盛り上がり13秒目で余韻を残して終了。こんなコンテのような注文をいただき、それに沿ってパートごとの楽譜をつくっていくわけです。現在までに数百曲はつくったと思います。

―― なるほど、私たちは知らないうちに村井さんの曲をたくさん聴いているのかもしれませんね。ところで作曲するときというのはピアノの傍らで弾きながら五線紙に書きとめていくという感じなのですか?

村井 作曲の仕事をはじめた最初の数年間はそういうやりかたでしたが、途中か らコンピューターを使うように変わりました。現在はキーボードと鍵盤のついたパソコンの前に座り、鍵盤を叩き記録していくという形式でパートごとに曲を書いていきます。そんな中で実績と信用を積み重ねていくことで、だんだん大きな仕事、テレビ番組のテーマ曲や挿入曲をまとめて発注を受けるようになったのです。番組の曲を引き受けるときは、最近でいうと『テラフォーマーズ』では火星で巨大なゴキブリが人間と戦うイメージとか、『銀の匙』では農業高校での明るい学生生活を描くハートフルストーリーみたいなイメージをいただき、それを膨らませて作曲に取り掛かります。

■さまざまな体験が濾過・昇華されて曲になる
―― あらかじめイメージがある作曲の手法はなんとなくわかりました。一方で、村井さんはオリジナルのアルバム曲も書かれるわけですが、そういうときも何か手掛かりやイメージを先に決めて作曲されるのですか
村井 これは、実のところどういうタイミングでイメージが曲にできるかが自分 でもわかりません。よくどういうときに曲のイメージがわきますかと聞かれますけど、それがわかっていれば作曲家はみんな苦労しません。もちろん突然曲のイメージが閃くこともあります。『世界ふれあい街歩き』をテレビで見ていたときにブルージュ(ベルギーの運河沿いにある有名な古い街)の街並みが映ったときのことです。見た瞬間に叔父が20年前にプレゼントしてくれた風景画はブルージュだと直感して、家に飾ってある絵の裏をはじめて見たらそこに“ブルージュにて”と書いてありました。毎日ただ見ていた絵がブルージュの町だと直感的にわかった瞬間の興奮が、スーっと曲になりました。
こういう例外もありますが、多くの場合には、ある程度追い詰められて開き直った気分のときに曲のイメージがわきだします。野球で言えば満塁になったときにピッチャーがよい意味で開きなおってバッターを打ち取るような感じで曲が出てきます。

大勢の演奏家を前にレコーディングを進める■蒸溜所のイメージから生まれたamber romance
―― 曲作りではその閃きが出るまでが大変なのですね。
村井 作曲って五感全部使って感じたさまざまなことが自分の中で濾過されて あるときフラッシュバックとなって曲のタネになるように思います。深夜の孤独な作業中にお酒を飲みたくなったときに、ウイスキーの蒸溜所を見学したときに見聞きした熟成の話が思い出されて、ウイスキーが時間をかけて熟成しているイメージでamber romanceという曲になったこともあります。でもそういう体験も曲になるまでにはずいぶんと時間がかかっているのです。でもここを突破すると、後のアレンジは最終的な曲全体をイメージしながら必要な要素である各パートを組み込んでいく設計図を描くような仕事なので順調に進みます。
そして各ミュージシャンに依頼してスタジオでレコーディングしますが、準備がよければほぼ想定通りのレベルのものがつくれます。これがライブの演奏になるとお客様と対峙してそのときどきのイメージが付加されて作り上げることになるのでどうしても出来不出来というものがあります。ライブはいうなればバーテンダーさんがお客の表情を見ながらカクテルを作るみたいなイメージですね。

―― なるほど、だんだん曲作りからお酒の話になってきましたが、村井さんはどんなお酒がお好きですか。
村井 ワインやウイスキーも好きですね。ウイスキーでは、最近流行のシェリー カスクフィニッシュのモルトなんか大好きです。昨年『プロフェッショナル仕事の流儀』の中でサントリーの輿水チーフレンダーが訪れた銀座のバー「絵里香」もテレビでみたあと早速飲みに行ってみました。オーナーの中村健二さんに奨めてもらったウイスキーは最高でした。

―― 本日はどうもありがどうございました。
2014年12月4日  聞き手狩野卓也)
プロフィール
村井秀清(むらいしゅうせい)作曲家・ピアニスト
1965年生。3歳よりピアノを習い、早大在学中にバンド活動を開始、卒業後バーク リー音楽院に留学。93年帰国後、キーボード奏者・作曲家として活躍。ソロ・アルバムは『In the air, In the water』(2010)、『Home』(2011)、『Step Forward』 (2013)に続き、『Impressions』(2015)を発表。作曲家としては、ドキュメンタ リーからアニメまで多彩な作品で活躍中。主な作品は、NHK「世界ふれあい街歩き」 (2005年〜現在)、NHK「プロフェッショナル〜仕事の流儀」 挿入曲 (2006〜2010)、劇場用アニメーション映画「マイマイ新子と千年の魔法」音楽(2009)、TVアニメ「銀の匙 Silver Spoon」音楽(2013)、TVアニメ「テラフォーマーズ」音楽(2014)、東海テレビ「神宮希林」(2014劇場公開)等。

★村井清秀さんの最新情報★
最新アルバム「Impressions」は6月15日に発売されます。それに合わせて、CD発売記念ツアーが7月2日名古屋から全国で行われます。詳しいことは下記をご覧ください。http://crescente.co.jp/murai/

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