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第1回 ハッピーを大きくしたプレミアムビール
狩野卓也


第2回 変わりゆく饗宴外交
西川恵


第3回 かかりつけの名医のみつけ方
松井宏夫


第4回 日本の赤ワインの礎「マスカット・ベーリーA」
坂田 敏


第5回 週末はいつもアウトドア
廣川健太郎


第6回 不可能の壁を超える実践優位のマーケティング
石井淳蔵


第7回 ブレンダーという仕事
輿水精一


第8回 過去の体験が濾過されて曲になる
村井秀清


第9回 グラスはつくり手と飲み手をつなぐ
庄司大輔

第10回 落語を世界へ 英語で伝える日本の話芸
立川志の春


第11回 和食は「ご飯がたべたい」料理の文化
阿古真理


第12回 若者のための酒場歩きガイド
橋本健二


第13回 画像で気持ちが伝わる ネット口コミが市場を動かす
徳力基彦


第14回 創業60周年 復活した十三トリスバー
江川栄治


第15回 カクテルバーのコミュニティ
豊川紗佳


第16回 次に目指すは日本のバー文化の底上げ
坪倉健児


第17回 カクテルアワード受賞経験を倉敷で活かす
松下知寛

第18回 地域でつくるオペラアカデミー「農楽塾」
中嶋彰子

第19回 「消費されるワインの最高峰」を目指して
椎名敬

酒論稿集
酒器論稿
落語を世界へ 英語で伝える日本の話芸
■英語も日本語のリズムで、ご隠居さんのイメージが浮かぶように
―― 英語の噺はいくつお持ちですか?
志の春15くらいあります。

―― 前座時代、最初にやったのが「転失気」だそうですが、日本語で自分でものにできたと思った噺を英語にしている感じですか?
志の春 いえ、日本語での実績とはあまり関係ないですね。日本語で受けるのと、英語になって受けるのは違いますね。たとえば「転失気」は日本語ではあまり受けたことがないのですが、英語にするとすごく受けます。

―― 「転失気」は笑いの元がオナラですね。オナラの隠語の転失気を、偉い和尚が「転失気=酒」と嘘を教えられて、「お好きだとお聞きしたので、とっておきの転失気を用意しました。ご一緒にいかがですか」とすすめる。すすめられた方は「とっておきのオナラを一緒にって、おいおい」とたじろぐ噺です。
 以前、志村けんさんが、お笑いはオナラだとおっしゃっていたのを聞いたことがあります。「神妙な顔をした集まりで、誰かがプーとオナラをすると、クスクスと笑いがこぼれて坐が和む、あれがお笑いですよ」というような話でしたが、志の春さんの「転失気」を聞いた時に、これを思い出しました。


志の春 ほう、私はそこまで深く考えていませんでしたけれど、わかりますね。シンガポールで日本語を勉強している学生に好きな日本のテレビ番組を聞いたら、一番は「バカ殿」でした。あの笑いは通じるのかもしれません。

―― 落語を英訳する時は、噺をそのまま訳して笑えるようになるものですか?
志の春 いいえ、英語で落ちるようにどこかしらアレンジします。そのままで行きたいのですけれど、どうしてもニュアンスが伝わらない部分があるので。
 私の英語らくごは日本人に聞きやすいと思います。落語はリズムがとても大切で、日本語でやる時も気を使います。英語で演じても日本語のリズムで、ご隠居さんのイメージが浮かぶように話すことを心がけています。

―― 英語で演じにくいキャラクターがありますか?
志の春足りないけれど愛嬌のある「与太郎」?

―― 足りないけれど愛嬌のある「与太郎」?
志の春ええ。英語にするとただの無能な人になってしまうのです。愛すべきというニュアンスがなかなか出ません。

■大衆芸能として、行けるところまで行ってみたい
―― インターナショナルスクールの子供たちは、いい聴衆だとおっしゃっていましたね。
志の春 反応が素直なのです。自分がおもしろいと思ったところで笑ってくれます。これが大学生くらいになると周りを気にして、ここで笑ったらバカにされるんじゃないのかみたいなのが出てきます。
 また、日本人だと子供は落語なんて年寄りのものと思っているので、学校で落語会をやると最初から寝るつもりで来る子がいる。それを笑わせて寝かさないようにするのが勝負です。大人はといえば公演の後の質疑応答で、周りを意識して「家元亡き後、立川流は今後どうなるのですか?」なんてマニアックな質問を聞いてきます(笑)。私の場合はキャリアについての質問も多いです。アメリカの大学を出て商社に入ったのになぜ辞めたのか。しかもよりによって落語家に・・・・・・という。

―― 外国の方はどんな質問をします?
志の春 そうですねえ「修業時代に叩かれたことはありますか?」というのがありました。質問したのは中国の方で、芸事は棒で叩かれながら覚える習わしで、日本の落語はどうなのだろうと思ったのだそうです。「叩かれたことはありませんが、言葉では……」て返しました。(笑)
 韓国の方からは「落語は政府が保護しているのか、補助金はあるのか?」という質問がありました。シンガポールではコスト意識が明確なお国柄を反映して「落語は演者は一人だけ、舞台はシンプルで、コストがかかっていないのだから今日の木戸銭は少し高いのではないか?」と。フランスの方から「落語にタブーはあるのか?」というのもありました。宗教も死も下ネタも採りあげますし、落語はタブーはありませんが、いかにもフランスらしいなあと思います。

―― 文化庁などが能楽など伝統芸能の海外での文化交流を進めていますが、落語もその中に入っているのですか?
志の春 入っていると思いますが私の活動は大衆芸能、エンターテイメントとして補助金なしでどこまで行けるかという取り組みです。シンガポールで興業している会社と一緒に、来春は香港でやります。台湾、マレーシア、ハワイあたりでもやりたいですね。

―― ところで海外で始めて何年目ですか?
志の春 4年目になります。文化交流事業ではあちこち行きますからネタは2つもあれば大丈夫でしょうけれど、毎回、同じところに行ってやるので、新しいネタをつくり続けないといけません。そこががきついところなのですけれど、行けるところまで行ってみたいと思っています。蕎麦や酒など落語に登場するものが海外でも広まってきていて、落語を演じやすくなってきているのも追い風ですし。

―― ええ、日本酒だけでなく日本のウイスキー、ビール、居酒屋などのグローバルな展開が進んでいます。ぜひ、日本の酒文化と一緒に落語を世界へ広めてください。ところで志の春さんは普段お酒は?
志の春あまり強くないのですけれど、夕食の時にはたいていいただきます。前座は酒・タバコは禁止なので、8年間飲みませんでした。打ち上げの席で師匠から「飲んでいい」と言われても、これは罠だ、いいと言われて飲むかどうか俺をためしてる、なんて勘ぐってしまい飲めない。今も師匠の前では何度か勧められるまでは飲みませんし、飲んでも酔えません。

―― では、酒をゆっくり楽しく飲めるのは、ご自身の会の打ち上げや、プライベートでくつろげるときですね。酒で上手に気分転換していただいて、内外で益々ご活躍されますよう期待しています。本日はどうもありがとうございました。
英語らくごwithクールバーボン
観客と一緒に乾杯

2015年9月2日 聞き手:酒文化研究所 山田聡昭


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