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第1回 ハッピーを大きくしたプレミアムビール
狩野卓也


第2回 変わりゆく饗宴外交
西川恵


第3回 かかりつけの名医のみつけ方
松井宏夫


第4回 日本の赤ワインの礎「マスカット・ベーリーA」
坂田 敏


第5回 週末はいつもアウトドア
廣川健太郎


第6回 不可能の壁を超える実践優位のマーケティング
石井淳蔵


第7回 ブレンダーという仕事
輿水精一


第8回 過去の体験が濾過されて曲になる
村井秀清


第9回 グラスはつくり手と飲み手をつなぐ
庄司大輔

第10回 落語を世界へ 英語で伝える日本の話芸
立川志の春


第11回 和食は「ご飯がたべたい」料理の文化
阿古真理


第12回 若者のための酒場歩きガイド
橋本健二


第13回 画像で気持ちが伝わる ネット口コミが市場を動かす
徳力基彦


第14回 創業60周年 復活した十三トリスバー
江川栄治


第15回 カクテルバーのコミュニティ
豊川紗佳


第16回 次に目指すは日本のバー文化の底上げ
坪倉健児


第17回 カクテルアワード受賞経験を倉敷で活かす
松下知寛

第18回 地域でつくるオペラアカデミー「農楽塾」
中嶋彰子

第19回 「消費されるワインの最高峰」を目指して
椎名敬

第20回 ウイスキーと映画そしてケルト文化
武部好伸

第21回 日本の夜の公共圏スナックの将来
谷口功一

第22回 日本ワインをさらに輝かせるために
遠藤利三郎

酒論稿集
酒器論稿

ウイスキーと映画そしてケルト文化
武部さんがバーボンならここを訪ねるというバーが「呂仁タバーン」(大阪府守口市)■映画で人生の師「黒澤明」と出会う
−− 映画との出会いは学生時代ですか?
武部 高校生のころから見るようになって、ちょうど大阪万博の頃です。1970年代、大学生の時は年間550本も見ていました。

−− 当時、映画は劇場で見るしかなかったですよね。毎日1〜2本見ている。
武部 そう。オールナイトで4〜5本まとめてみたり、情報誌で探してあっちでジョン・フォード作品の上映会があると聞けば駆けつけたりという感じでした。映画ばかり見ていて学校に行く暇がない。でも、劇場で見たことはいい経験だったと思います。能動的に見るでしょう。ビデオを借りてきて家で寝そべってみるのとは違う。途中で宅配便が荷物を届けに来たりしません(笑)。

−− どんな作品がお好きなのですか?
武部 洋画も邦画も、何でも見ましたが、大学2年の時に『生きる』を見てからは黒澤明監督の作品に惹かれました。毎日、映画ばかり見ていて、この映画で「生きているようで死んでいる」と問われ、自分は何のために生きているのかと考えさせられました。そして映画は人にこんなにも強い影響を与えるのだと思い、黒澤監督が私にとって人生の師になりました。

−− 『生きる』は私も同じような気持ちで見ました。主役の志村喬さんがブランコに乗っているところや、最後にまた役所が案件をたらい回しにするシーンを覚えています。
武部 就職して新聞記者になると映画を見る時間はまったくなくなってしまい、京都で事件記者として駆け回っていましたが、毎年、黒澤監督に年賀状を出しインタビューさせて欲しいと書き添えました。もちろんまったく相手にされません。何年か後に科学部に移り、その後文化部に配属になって映画も担当するようになります。そうしたらインタビューを受けてもいいという返事がもらえたんです。

−− それはすごい。
武部 1994年12月のことで亡くなる3年前です。世田谷のご自宅を訪ね、2階の応接間で待っていると監督がやってきて、「悪いが風邪をひいてしまって熱がある。インタビューは15分くらいしか受けられない」とおっしゃいました。その時に私は自分が監督の大ファンで、『生きる』に感銘を受けて変わったという話をしました。監督は嬉しそうに聞いてくれ、サングラスを外し、「2時間あげる」と言って身を乗り出して話し始めた。当時、黒澤監督は、完璧主義でコストが掛かり過ぎるなどの理由から、日本では映画を撮らせてもらえない状態、溜まっていたものを吐き出すかのように、日本映画の問題点やご自身の考えを延々と話し続けたのです。出し続けたハガキ、自分が出したエネルギーが20年たって帰ってくる、そんな経験でもありました。

−− 新聞にはとても全部は書ききれませんね。
武部 ほんの1ページです。掲載できなかったものも含めてこのインタビューは、ずいぶん後になって、講談社が黒澤監督の生誕100年を機に、2000年から出した『大系 黒澤明』第3巻(2010年)に収録されています。

2018年2月17日(土)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー。観た後に寄るバーを決めてから行くべし。詳細はhttp://www.synca.jp/whisky/ (C)WhiskyGaloreMovieLimited2016■最初の一歩はカジュアルなバーへ
−− 最後に武部さんが一番お好きなウイスキーとおすすめの映画を聞かせてください。
武部 やはり『グレンフィディック』です。ウイスキー好きになったきっかけの一本ですから。映画はたくさんありますけれど、2月に公開される『ウイスキーと2人の花嫁』はいい作品です。第二次世界大戦中にウイスキーを積んだ貨物船が座礁して、島民がウイスキーを運び出した実話が元になっています。その事故があったエリスケイ島に行ったこともあります。あと不良少年がブレンダーとして更生する姿を描いた『天使の分け前』もよかったなあ。バルブレアとか実際の蒸溜所が出てきます。

−− もうひとつ、ハイボールでウイスキーを飲み始めた若い方を、ウイスキーに飲みにつれていくならどんなお店にしますか?
武部 大阪、京都、東京にある「サンボア」あたりでしょう。銀座や新地のオーセンティックなバーは敷居が高すぎます。気軽に入れてきちんと飲めるお店がいい。そうだ、「サンボア」は今年100周年です。行くべき店ですね。

−− 同感です。本日はありがとうございました。
(聞き手 酒文化研究所・山田聡昭/於 ヒルトンプラザ梅田 1月6日)

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