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規制が乙類焼酎にもたらしたもの
稲富 いまは焼酎には、蒸留度数の制限があるんですよね。
鮫島 はい、乙類で四五度までです。
稲富 それとか色の制限とか技術的な制限は、ないほうがいいのでしょうね。
鮫島 新しい可能性を疎外することは、止めたほうがいい。ただしある程度の枠は、必ずしもないほうがいいわけではないと思っています。たとえば、いま焼酎の貯蔵物には色の規制がありますけど、それを撤廃すればどうなるか。焼酎をずっと寝かせれば、ウイスキーと見間違えるようなものが簡単にできてきます。そうするとウイスキーとはなんぞや、焼酎とはなんぞやということになる。
 だから「らしさ」という世界があって、そのなかで存立基盤みたいなものが出てくる。それを失ってしまえば、もう力関係で蒸留酒の一本化というのにつながっていきかねません。税率がほとんどいっしょになって、甲乙がまったくいっしょになって、蒸留酒は一本でいいじゃないかという話になりかねない。逆に、酒税法の制約のお蔭で、樽の貯蔵香をあまり出せない。それが結果的に焼酎らしさを失わないことにつながっていく。あるいは焼酎の持っている、食の世界にすっと入れる特性を生み出せた。そういうメリットが出てくる。そこのところを、どう考えるかというのがあるのですよね。
−規制と自由の関係は諸刃の剣ですものね。
稲富 もうひとつ、焼酎との蒸留の違いを見ていますと、ウイスキーは蒸留器に必ず銅を使っているでしょう。あれは銅と反応を起こさせている。だから蒸留というのが単なる分離精製、濃縮だけでなくて、そこに反応器としての役割がものすごくある。近年のことですが、それをみごとに解明した人がいましてね。蔵ごとのモルトウイスキーの品質の違いは、かつては水だとか、気象条件とかいろいろ言われていましたが、非常に大きな影響を及ぼしているのは蒸留器だったんですよ。しかも形とか。要は銅がどれだけ反応に関与したかが品質を大きく左右していました。いまのところ、焼酎ではそういうことはあまりやられていないですよね。
鮫島 銅を一部使うということはできます。ただ焼酎は、銅イオンが入ってくるのを非常に嫌います。焼酎の旨み成分と凝集して、澱が出てきます。
−そこがウイスキーとの大きな違いのひとつですね、同じ蒸留酒といっても
鮫島 すぐ飲むためには、そういう旨味成分が入ってないといけないし、銅や鉄が入っていると、それを核にして凝集してくる。長期にやっていると樽のなかで澱ができる。だから、鹿児島などでは、もともとは錫でやることが多かったです。
稲富 それから焼酎は、貯蔵による付加価値ということはあまり重視されていないようですが。貯蔵によって従来にないものができるのだったらおもしろいと思うのですが、ぱっと聞いた時に、度数の四五度は貯蔵には低いかなと思いました。
鮫島 それはあります。ですがそれ以上の度数でも、蒸留は可能なんです。最終的には割れば焼酎になりますから。
?製品化の段階での度数調整ですね。いま、本格焼酎は蒸留の回数は別に、税法上は定義はないのですか。
鮫島 はい。ただ、実質は一回が多いですね。繰り返すことによって淡麗化していくということと、焼酎の場合蒸留時間が非常に短い。三時間とかせいぜい四時間で一回の蒸留で出してしまうというやり方です。

水割りウイスキーという発明
−話は変わりますが、明治時代にウイスキーが入ってきた時、なぜ焼酎と同じ蒸留酒なのに焼酎のような飲み方に変わっていかなかったのでしょうか。同じ蒸留酒だということで、WTOでは焼酎がウイスキーの競合だと見られて圧力がかかってきましたが、現実的には焼酎とウイスキーの競合はそれほど大きくはなかったと私は認識しています。ウイスキーが日本で、あくまで食中酒としてのウェイトが小さいままできたのはどういうことでしょう。
稲富 ここ最近十数年の話とそれ以前の話はちょっと違うと思ったんですが、かつて二級ウイスキーという膨大な市場がありました。二級、一級、特級の価格がそれほど高くないものは、飲み方としては圧倒的に水割りだったんです。ですから、飲む時の度数も七、八度。しかも日本人のウイスキー飲み方は、ウイスキーだけを飲んでるというのはあまりなくて、ほとんどが食べながら飲んでるんですよ。
 非常に本格的なシングルモルトとか、熟成年数が長いブレンデッドとか、ほとんど食べ物なしに、水割りでなくロックやストレートでちびちびやっている、というのは比較的近年の現象じゃないかと思いますね。ですから私は、長い間、ほとんど同じ市場でオーバーラップしていたところが大きいと思っているんですけれどね。
−少し前の時代ですね。
稲富 いまでも家庭市場やごく一部ですが、ウイスキーが売られている居酒屋さんみたいなところでは、ほとんどが水割りですよね。
−飲み方としてはたしかに水割りですね。
稲富 なにか食べながらというのと切り離せない。欧米の人はあまり食べないですから、蒸留酒というのはそんなに薄くして飲むのはおかしいのではないか、とかいったんでしょうけれど。最近スコッチウイスキーの人がセミナーに来たりしても、そういうのは民族の特性なので「こう飲むべきだ」という話はないとわかってきていますね。

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