時代や文化とリンクしたお酒に関する旬の情報サイト
酒文化研究所ホームページ
会社概要酒文化の会メールマガジンContact UsTOP
イベント情報酒と文化コラム酒文研おすすめのお店酒文化論稿集酒飲みのミカタ特ダネ
海外の酒めぐり日本各地の酒文化見学できる工場・ミュージアム酒のデータボックスアジア酒街道を行くリンク集

 
<論稿集トップへ

「天の美禄」を止めますか?

大人の文化と酒の飲み方

ワンカップはどう生まれ、どこへ行くのか?

「酒を混ぜる文化」考

諏訪杜氏の特質と「出稼ぎ」労働力輩出の背景

日本の蒸留酒の未来(上)

日本の蒸留酒の未来(下)

酒を交ぜる 酒を寝かす

大地の精霊とワイン

文明化の一極として
  ある文化の酒


「乾杯」越境した酒作法
酒論稿集
酒の文化論
日本の蒸留酒の未来(上)
アメリカでは麦焼酎もウイスキー?
稲富 消費者のイメージにしても、貯蔵されたものがウイスキーであるというのが非常に強いわけですね。だからたとえば、貯蔵したモルトウイスキーにグレーンスピリッツをブレンドしたものは、日本やアメリカの酒税法ではウイスキーとして認められているのですが、ヨーロッパではそれをウイスキーとは言わない。そうすると、スコッチはウイスキーの定義がおかしいと言ってくるわけです。
鮫島 ウイスキーにそんな話があるのですか。
稲富 相当昔からやっていますけれどね。でも、アメリカもすぐ「そうですね」とはいかないでしょうし。
鮫島 WTOの論理からすると逆じゃないですか。それだったらヨーロッパも認めればいいということになりかねない。国内の利益を守るために、規制を作って他を疎外するのが関税障壁ですから、規制のゆるい側に文句を言っても、たぶん力は弱いですよ。
−ドイツのビールと同じですね。ドイツのビールも、前は純粋令で、麦芽、酵母、ホップ、水以外の原料を使ったものはビールと認めないという方針でずっときましたが、結局EUに負けて他の原料を認めましたものね。どっちかというと、考え方としてはそのほうが法律上は通りそうな気がします。
 ところで先ほどの、ウイスキーを造るには天然の酵素を使えばよいという話ですが、実際に麦芽以外の酵素を使った商品を造っているメーカーがあるのですか。
稲富 ヨーロッパではないと思います。彼らは、まさか麹なんてものがどうなのかとは考えたこともないでしょう(笑)。カナダでは、グレーンウイスキーは麦芽を使わず、微生物の酵素で造っているメーカーがあります。
−ただそうすると、麦焼酎を三年寝かせて向こうへ持っていったら、ウイスキーだと言い張れるわけですか。
稲富 定義上はね。でも、どちらも酒税が違うわけじゃありませんから、わざわざウイスキーというより、日本の伝統的なスピリッツですと言ったほうがずっといいでしょう。
鮫島 でも、イギリスという国は酒税が高いですよね。醸造酒も蒸留酒も、あそこは特別高い。国民に酒を飲むなといわんばかりの国ですよ(笑)。
稲富 それでもあれだけ飲んでるいんですから、下げたらもうすごいですよ。
−タイのメコンウイスキー、ああいうのを日本に持ってきた時にあれをウイスキーと言われた瞬間に、なにかどうしようもない、まがい物だろうとみんな思いますよね。あれをタイの伝統的なスピリッツだと言われれば、素直に受け取る。その違いですね。
稲富 ベースは糖蜜のスピリッツですから、いってみればラムですよね。ラムに麹で糖化した米のスピリッツをブレンドしています。あとはいろんなものが入っている(笑)。

甲乙混和はフレーバリングか
−甲乙混和については、基本的には非常に難しい問題だと思います。これは、考え方としてはウイスキーがモルトからブレンドに変わって増えたのと同じようなものだと考えていいのでしょうか。乙類焼酎より甲類焼酎のほうが、生産コストはたぶん低いでしょうから、より焼酎の裾野を広げるという意味では、甲乙混和というのは、このままでいくとものすごく増えていくのではないかと想像しているのですが。
鮫島 ひとつは、日本は特にそうですけども、表示の問題をちゃんとやるべきだと思います。乙類の場合は、原材料などをすべて厳格に表示している。甲類焼酎にはなんの表示の義務もないわけです。都合のよい時だけ、表示するというのでは困る(笑)。消費者にちゃんと説明できないといけません。
 甲類焼酎というのは、昔は芋の切干から取ったアルコールを使っていた。ではあれは芋焼酎かというと、そういうわけにいかないでしょう。やはりアルコールであるとか醸造アルコール、あるいは甲類焼酎であるとか、原料特性が出ない以上はそういう表示をするべきです。乙類を混ぜるのであれば、乙類の基準に基づいて原料の多い順に書いていくという、ちゃんとした表示がされて、そしてかつ甲乙混和であるというようことを明確にすればいい。そうすれば、あとは選択するのは消費者だと思う。いま酒税法で認められているわけですから、なくすわけにいかないでしょうけれど、最低限誤解のないように表示すべきだと思います。
−甲乙混和の焼酎とはなんなのかと考えていくと、アメリカと似たようなことが日本でも起きているという考え方もできるかなと思っています。
 アメリカでは昔バーボンがすごく飲まれていて、その後、いわゆるホワイトレボリューションで最初ウオッカが伸びて、ジンも増えましたけれど、いまはラムに変わってきた。
 日本でも、ある意味同じようなことが起きて、ウイスキーが昭和六〇年くらいまでものすごい勢いで増え、その後そこに日本版のホワイトレボリューションが起きて甲類焼酎が伸びました。いまは量的には甲類も乙類も増えてはいますが、勢いは甲より乙のほうがあるという感じがします。それは、アメリカでのウオッカからラムに、いわゆる完全なるミックスベースから、ひとつの個性を持った味を楽しんでいくというお酒に変わっていったのと似たような部分がきっとあるのだと思うんです。
 いま甲乙混和焼酎を造っているのは甲類のメーカーですから、甲類だけでカバーできないニーズをすくいあげるには、甲乙混和もやっておこうかという考えではないかと思うのですが、いかがですか。

稲富 私の観察では、甲乙混和の乙は甲類焼酎のフレーバリングに使われている。ベースはあくまでも甲類ですが、甲だけでは物足らないから乙類を混ぜる。
 カナディアンウイスキーは、ほとんどがグレーンウイスキーです。それに配合されるライウイスキーというのは、スコッチや日本のウイスキーのブレンデッドのモルトに比べるととても比率が低い。それを彼らはフレーバリングと呼んでいる。フレーバリングウイスキーとベースウイスキーと。考え方としては、甲乙混和というのはそういう感じではないかという感じがしています。
 スコッチや日本のブレンデッドはもう少し意味合いが違いまして、グレーンといろいろなモルト、しかもそれぞれに個性的なモルトを混ぜ合わせることで、個々の原酒にはない特質を持った製品を作っているわけです。もっとクリエイティブなのです。モルトに比べて軽くて飲みやすいという特徴はありますけれど、いろんな香味の原酒が配合されていますから、香りや味の特性はもとの個々のシングルモルトよりはるかに複雑ですよ。フレーバーが非常に重層的といいますか。そこでスコッチタイプのブレンドという話と甲乙混和の話は、意図もブレンデッドの結果も相当違うと思っています。
鮫島 違うと思いますね。

<<前頁へ      次頁へ>>