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「酒を混ぜる文化」考

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酒の文化論
「酒を混ぜる文化」考
「混ぜる」アメリカで生まれた背景
 「混ぜる」の代表的な事例はカクテルであろう。カクテルはアメリカでおおいに発展した。植民地時代のアメリカでは、醸造酒が本国からの長い航海では腐敗しやすいということから、長期保存が可能な蒸留酒(特にウイスキー、ジン、アクアヴィット)を本国から主に輸入していた。それゆえアメリカの国民的な酒の歴史は、ラム、ウイスキー、ジン、ウォトカの順に蒸留酒が大量に消費された歴史といっても過言ではない。
 そして彼らには、酒について二律背反の価値観があった。ひとつはピューリタンの思想からきた「理性を失うもの」という価値観であり、もう一方はパイオニア精神から生まれた「男らしさの象徴」という価値観であった。蒸留酒をたくさん飲めるのは「男らしい」のであり、酒場でカウボーイがキュとバーボンを呷る世界がかっこいいのである。一方で泥酔し理性を失うのはピューリタンにはあり得ないという意識も強かった。
 このような思想的な背景も影響したのであろう、また毎日蒸留酒を飲み続けることは体に負担をかけることでもあり、「水割り」ウイスキーが食前、食中、食後に大量に消費されていた。当時のアメリカの水が上質であったことも一つの要因であった。
 同様にカクテルもまた、蒸留酒をストレートで飲んでいては酔いやすいので、SOMETHINGを、混ぜて(MIXして)蒸留酒を飲むという過程から生まれた。一九世紀後半以降にパスツールの低温殺菌法が確立されてから、さまざまなジュースが商品化されたこと、製氷機の発達で氷が簡単に入手できたことなどにより、カクテルの可能性は広がり、カクテルの日常化、多様化がいっきに進んだ。今ではアメリカの各地域に地酒のようなカクテルが存在するまでに定着している。

「混ぜる」異種混合のアマチュアの妙技
 カクテルが蒸留酒を飲みすぎて泥酔しないために誕生したとはいえ、ここで重要なことは、SOMETHINGが、ベースとなる酒とは異なる種類の飲み物(酒も含む)であることである。カクテルは、一般的にはベースになる酒にジュースあるいはリキュールなどを加えて、材料の酒とは別の新しい飲み物としてつくられるものである。また、カクテルは素材があれば誰でも(アマチュアでも)つくることができるという意味で、カジュアルな飲み物である。組み合わせの楽しみが飲む楽しみへと広がる、創造的な酒といってもよい。
 つまりカクテルは、ベースになる酒が持つ「らしさ」、すなわち文化性や土着性を飛び越えて、新たな酒として存在するのだ。「ギムレット」はジンベースの酒という意味ではイギリスルーツの酒かもしれないが、今では国際化して、どこがルーツかということはすっかり意識されないでいる。今はそのカクテルがどのように生まれたか、あるいは誰に愛されたか(フィリップ=マーロウに愛された)というようなことがそのカクテルの物語となって、多くの飲み手を惹きつけている。
 このように、酒+SOMETHINGという観点で酒と何かを組み合わせることをとらえた場合、大きく分けると、専門家が行う「同種混合」と、飲み手(アマチュア)が行うもしくは飲む場所(バーなどのプロの世界)で行われる「異種混合」のふたつの方向が考えられる。そして本稿では、「異種混合」である「混ぜる」という文化についてさらに考察を続けていきたい。

「混ぜた酒」チューハイの魅力
 日本における、カクテルと同様の「混ぜた酒」といえば、チューハイであろう。
 ここに酒文化研究所がインターネットで調査した「チューハイ」のデータ(N=九一九)がある。そのデータをもとにして『月刊酒文化五月号』では、チューハイが「イケている」と評価した人が全体の七八%を占め、通説どおり女性が八四%、二〇代が八三%と非常に高いと分析している。また男女差が顕著なのは五〇代で、男性が六九%、女性が九七%と、五〇代男性の評価が最も低いようであり、また酒の流通業者の視点では酒専門店が五七%と低い評価をしたと記している。
 評価の高い飲み手の理由は、「飲みやすい」「安い」「手軽」「選べて楽しい」というものが多数を占めている。一方で評価の低い人たちの大きな理由は、「混ぜ物をするのは邪道」「食事に合わない」「あれはジュースで酒ではない」というのがあげられた。
 この調査結果からもチューハイが市民権を得ているのは明快であるが、その一方で「低アルコールのジュースのような甘ったるい酒は邪道である」「チューハイは酒ではない」というマイナスの評価も厳然と存在しているのがわかる。「焼酎なら焼酎らしく、焼酎の味わいを楽しむことが大切なのだ」と彼らは言っているのであろうか。

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