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"今"の「チューハイ」の広がり
 関東圏のように「チュウハイ」の基層文化のうえの「チューハイ」と、八〇年代のチューハイブーム以降の「チューハイ」とは明らかにその意味するところが異なっている。前者は酒場(プロ)の領域のものであり、後者は一般の飲み手(アマチュア)のものになる。そして、全国の飲み手にとっての「チューハイ」は明らかに後者である。「気軽」「飲みやすい」「選べる楽しさ」は「チューハイ」の領域を拡大するものであるが、そこには文化に根ざすという土着性や独自性は薄れている。たとえば西日本におけるチューハイは、チューハイブーム以降の缶入り「チューハイ」で初めて知った飲み手も多く、日常の飲酒における甲類焼酎への親しみも薄いこの地域においては、チューハイが新しいカテゴリーとしてとらえられていた。
 さらに近年では焼酎ベースでなく、ウォトカや果実酒をベースにした低アルコールの飲料までもが、「チューハイ」とされていることに対し、違和感を覚える人はあまり多くない。今やチューハイの領域は拡大しつつあり、「低アルコール度数のMIXED DRINK」という拡散された、あいまいな定義しかされないようである。
 ここで、現代のチューハイの領域を明らかにするためにチューハイの類型図を示してみる(図)。この図表ではベースとなる酒に関して取り上げずに、商品としてのチューハイを取り上げている。縦軸にミックスする素材を、横軸に炭酸の有無をとってみた場合、「チュウハイ」の時代の炭酸を加えずにフルーツ系素材を使うことから、炭酸を加えフルーツ系素材を使うこと、そして炭酸の有無にかかわらずその他の素材を用いることへとその領域が拡大していることが明らかである。しかも無秩序に法則性なく拡大している印象が強い。これはチューハイのスプロール化の進行というべきものであろう。

チューハイのスプロール化
 炭酸割り自体が前述の通り、ウイスキー・ハイボール由来と考えれば、炭酸割りが西洋スタイル、炭酸なしが日本スタイルとでも大分類できるかもしれない。現在でもチューハイの主な領域は、西洋スタイルの炭酸あり・フルーツ系素材である。フルーツ素材の多様化とさらなる細分化で、この領域はその間口を拡大し、多くの飲み手を獲得している。現在では葡萄、レモン、オレンジなどにおいてはその品種にまで細分化されている。これは、食のグローバル化、情報化を背景とした、ジュースの多様化、細分化と軌を同じくしていると言えるだろう。ワイン用葡萄品種のシャルドネを用いたチューハイが市場で受容されたのがその好例である。
 一方で炭酸を加えずにその他の素材を用いた日本スタイルの領域、特にお茶割りが拡大を続けている。健康をキーワードにした製品開発あるいは、「食事に合う」というコンセプトで、このカテゴリーのチューハイは続々登場しており、一定の評価を得ている。これも、お茶飲料の多様化とそれに伴う市場の拡大と軌を同じくしている。
 このようなチューハイの領域の無秩序な拡大=スプロール化は、今後もその勢いをとどめることはないだろう。なぜならば、拡大のエネルギーが「混ぜもの」であることそれ自体に内在しているからだ。
 前述のように「ミックスすること」は、アマチュアでもアクセス可能なカジュアルな技術(技術というよりはアクションに近い)であり、日本中のあらゆる飲み手や酒場がチャレンジできるものだ。そこには多様な組み合わせの可能性があり、そのなかで飲みやすく「味わい」がよいものやコンセプトが明快なものがメニュー化され、商品化される。まさに無限の組み合わせから、ベターな組み合わせを見つけ出す作業の連続ともいえる活動がチューハイの領域では展開されている。
 そして、その活動は「チューハイ」のみならず他のカテゴリーにも組み合わせの可能性があることを否定するものではない。日本酒を中心とした伝統的な酒文化が、ある意味での「混ぜもの」を拒否して、本格や本物を追求したこととは対照的である。日本酒は、洗練化の道すじを純米酒に求め、原料の米を磨くことに先鋭化していき、より純粋なものに志向することとなっていった。

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