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大人の文化と酒の飲み方

ワンカップはどう生まれ、どこへ行くのか?

「酒を混ぜる文化」考

諏訪杜氏の特質と「出稼ぎ」労働力輩出の背景

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「乾杯」越境した酒作法
酒論稿集
酒の文化論
ワンカップはどう生まれ、どこへ行くのか?
「口漏れ」との闘い
−昭和三九年に発売してから一直線に上り調子という感じで伸びていったのですか。
長部 いえいえ、まず発売してからいろいろ伸び悩んで、商品がきちんとできたのが昭和四五年。第一に問題になったのは、口漏れすることです。横にすると滲んでくるんです。
 酒というのはね、水と違いましてアルコールで、いわゆるエキス分と酸が高い。少し旨みがあるのね。そうすると、蓋からじわーっと滲んでくるのです。で、カビが生えてしまう。啓蟄の日というのがありますよね。
谷本 ええ。
長部 あれを過ぎると気温も上がり、それで口にカビがサーっと生えてきましてね。
 いまの蓋はアメリカン・フランジといって、これができてよくなりました。これだともう漏れない。内側に合成ゴムのようなパッキンがあり、これがふつうのゴムじゃだめなんです。ゴム臭がつきます。
谷本 なるほど。
長部 やっぱり、軟らかくて、無味無臭でないと。このいまの蓋ができあがったのがだいたい昭和四五年ぐらい。それまでは、出しても返品、出しても返品。四一年に酒類業界では初めて、ビールより早く自動販売機をつくったのですが、あれは、酒が中で横になっているのです。だから、滲んでまたカビが生えるのです。それがなくなりました。
−宣伝がはじまったのは、昭和四四〜五年ぐらいからでしょうか。
長部 そんなもんですね。それから四七、八年ころまではもう爆発的です。前年比一六〇%とか一七〇%とか、品切れ、品切れでそれはもうすごかったですわ。同時に、自販機でも売れ出したしね。
−昭和五〇年ぐらいで清酒自体はピークになって、微減傾向に転じていきましたが。
長部 それでもワンカップは伸びました。
−ワンカップがピークを迎えたのは、いつごろになるんですか。
長部 昭和五七、八年かな。最高で年間一二万石(一億二〇〇〇万本)を超えましたね。最初のコマーシャル・タレントは、田宮二郎さんでした。彼がちょうど映画界から干されていたときで、電通さんが「大関さん、助けてやってくれませんか」というので、よっしゃ、いうてね。本来よりかなり安い契約料でした。
 それから、コマーシャルソングもつくりましてね。「♪酒は大関、心意気」ていうの。小林亜星先生に頼んで作詞作曲してもらい、それで、加藤登紀子さんに頼んで歌ってもらい、これも大当たりでした。

一合=一八〇ミリの小宇宙
−いまは、発売当初とリップの形が違いますね。
長部 ええ。いまはちょっと凹んでいますが、後から変えたんです。
谷本 割れるからですか。
長部 そうそう。コンベアの上でぶつかって、かけらが中に入ることがあるのです。最初のころはコンベアのスピードが非常にゆっくりでしたから大丈夫だったのですが、たくさん売れ出して、スピードアップして、機械を全自動化してダーッとやったものですから。カチャカチャ当たるのです(笑)。それでこれはいかんと言って変えたんです。
−「ワンカップ大関」は当初、どんな市場から売れだしたのですか。

長部 やっぱり、ポケットに入れられる。どこでも持って行ける。花見に行ける。まず、一番最初「ええなあ」と言ってくれたのは当時の国鉄弘済会でした。そのころは「三デシ瓶」と言って、三〇〇ミリリットルの小瓶にキャップみたいな盃がついているものが駅で売られていました。
谷本 ああ、覚えています。
長部 ただ、あれは電車内では安定しないのです。それに瓶と盃を置かないかんし。「ワンカップ」なら瓶だけぽんと置いたらいい。これはもう、国鉄が最高に喜びました。それから喜んだのは、魚釣りの人です。
谷本 私も釣りをしますからわかりますけど、確かにね。
長部 なかには、年寄り向きとかいう人もおりますけど、今でも若者向きですよ。まず、飲んだ量がわかるやないですか。
−一目瞭然ですね。一本飲んだら一合ですから。
長部 それと、これで飲んでいると注ぎ合いもしなくていい。
谷本 そうですね。
長部 それともうひとつこの「ワンカップ」がいいのは、中身が見えることです。これ、缶やったらつまらんのですよ。
 これ(小さなカップ)はゴルフ場用につくりました。
谷本 一〇〇ミリですか。
長部 一八〇ミリだとちょっと多いんですわ。これだったら、ラウンド中にくーっといけます。ゴルフ場だと、これが一番よく売れている。
谷本 ぼくも女性の方から聞いてるのは、やっぱり一〇〇ミリなんですよ。ポイントが一〇〇になっている。昨日も地下鉄で女の人としゃべっていて、一〇〇ミリのカップ酒をちょっと出したんです。そうしたら、やっぱりシーンに合うんですね。
長部 二〇〇ミリはちょっと多いんです。
谷本 二〇〇カップの動きは、中小メーカーでもないことはない。特に石川、富山は二〇〇カップが多いのですが、手に持ったときちょっと空きますよね、その空きがぼくはあんまり好きじゃないんです。それから、「一合」という伝統的な単位も大切にしたい。
長部 うちの、週刊誌の宣伝で「一合一会」というのをやりました。あれは名文句だったですね。
谷本 バリエーションとして一・五とかいろいろあるのは、それはそれでいい。ですが一八〇、一合というものが、やっぱり基本なんじゃないかなと。それと、ぼくが考えているのは、カップ酒は一合で完結するという意味で「デジタル」であるということです。
−一個飲めば一合。
谷本 そうそう。もう一個飲めば二合ですよね。一〇個で一升。そういう意味で一合完結のデジタル。これも画期的ですよね。

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