時代や文化とリンクしたお酒に関する旬の情報サイト
酒文化研究所ホームページ
会社概要酒文化の会メールマガジンContact UsTOP
イベント情報酒と文化コラム酒文研おすすめのお店酒文化論稿集酒飲みのミカタ特ダネ
海外の酒めぐり日本各地の酒文化見学できる工場・ミュージアム酒のデータボックスアジア酒街道を行くリンク集

 
<論稿集トップへ

「天の美禄」を止めますか?

大人の文化と酒の飲み方

ワンカップはどう生まれ、どこへ行くのか?

「酒を混ぜる文化」考

諏訪杜氏の特質と「出稼ぎ」労働力輩出の背景

日本の蒸留酒の未来(上)

日本の蒸留酒の未来(下)

酒を交ぜる 酒を寝かす

大地の精霊とワイン

文明化の一極として
  ある文化の酒


「乾杯」越境した酒作法
酒論稿集
酒の文化論
大人の文化と酒の飲み方
美味しさを知るところから
 フランスや日本などの国や民族を超えて、良い酒(アルコール)の飲み方を身に着けるためには、美味しい酒(シャンパンでもワインでもウイスキーでも日本酒でも)を飲んで、「美味しいこと」を覚えることから始めるのが最善のやり方だと思う。つまり、飲むのではなくて、「味を味わう」という知的な好奇心を発達させることが肝要なのだと思う。フランス語には、グテ(gouter、味わう、愛でる)とかサヴレ(savourer、賞味する、ゆっくり味わう)という言葉がある。日本にも「酒を嗜む」という言葉がある。
 「こんな美味しいものが世の中にあったのか」という喜び。その出会いの素晴らしさから出発して、「もっと美味しいものはないか」、「どうしたらもっと美味しく味わえるのか」等の好奇心が沸いて、更なる探求が始まる。
 飲み続けるたびに小さな発見がある。段々、アルコールの味自体でなくて、醸造過程がどうなのか、生産地はどこか、生産者はどんな人か、一緒に食べる食べ物はどれが一番合うか、どんな器を使えば一番美しいかなど、酒に関連する物事に関心が大きく広がる。
 何よりも、こんなに美味しいものを生産した人に対する尊敬の念を持つことが出来れば、泥酔をすることはなくなる。というのも、美味しい酒を無駄にすることは、生産者に対して礼を失することになるからである。
 フランスでは、子供が10歳くらいになると、ワインを水で薄めたものを子供に勧める家庭が多い。子供の中にもアルコールが嫌いな子供と好きな子供がいて、嫌いな子供には無理強いはしないが、とにかくワインがどういうものであるかを徐々に実地教育していく。
 特に、ワインは食べ物と組み合わせることが多いので、ワインと一緒に肉やチーズなどを食べて、その組み合わせの妙を体得していく。もちろん、人間の味覚は年を取るとともに変化していくので、ゆっくり教えていく。
 女の子は、シャンパンの味を好む。味が美味しいのか、小さく細かい泡が美しいのが好きなのか、そのロマンティックな雰囲気を気に入るのである。
 このようにして、家庭でお酒の味わい方を徐々に学習して、「大人」になっていく。フランスでは、「大人になる」ことは、子供や若者にとって憧れであり目標なのである。

【プロフィール】
坪井善明(つぼい・よしはる)
早稲田大学政治経済学術院教授、1948年生まれ。東京大学卒業。パリ大学社会科学高等研究院博士号取得(社会学博士)。ヴェトナム政治史専攻。パリ政治学院学術特派員。著書は『近代ヴェトナム政治社会史』、『ヴェトナム「豊かさ」の夜明け』など多数。滞仏歴は8年以上。04年4月から05年4月までパリ政治学院で在外研究に従事。

月刊酒文化 2005年7月

<<前頁へ      次頁へ>>