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合成酒の歴史
課税数量の推移
 図表4に昭和一五年(一九四〇)から平成一二年(二〇〇〇)までの清酒と合成清酒の課税数量の推移を示す(4)。合成清酒は太平 洋戦争終結直後から急速に増加し、昭和二九年(一九五四)には一四〇千キロリットルを記録した。このころは海外か らの引揚者も多く、いわゆる食糧暗黒時代の中、コメは国民の主食として貴重品であった。以後七年間ほどは高位で 推移したが、昭和三七年(一九六二)ごろからは、わが国の高度経済成長に反比例して急速に衰退して行った。そし て昭和四八年(一九七三)から平成三年(一九九一)までの二〇年間近くもの間二〇千キロリットルすれすれの数量 をかこってきた。しかし、平成四年(一九九二)からは一転してかなりのスピードで回復基調に入り、途中で中だる みの時期はあったものの現在も増加傾向にあり、平成一二年(二〇〇〇)には六一千キロリットルにまで回復した。 回復の要因としては、コメ不足によるものではなく、いわゆる「バブル」崩壊による厳しい世相を反映したことと価格 の割に良品質が評価されたことが考えられる。しかし、回復したといっても過去の最盛期と比較すると未だ半分にも及ばない状況である。
 清酒と合成清酒を合した清酒系に占める合成清酒の割合は昭和二六年(一九五一)には三六・二%であったものが、衰退期には一・ 二%となり、回復した平成一二年(二〇〇〇)でも五・八%にしか過ぎず、まだまだ努力の余地があるといえよう。
 合成清酒はその誕生の経緯とその品質とから清酒とともに伸長する性格を有しており、合成清酒のためにも清酒の復活を強く念願す るものである。

合成清酒の今日的意義
 合成清酒は「コメは食いたし、清酒は飲みたし」との国民的願望に応えるべく往時の化学者をはじめとして多くの先輩達が作り上げ たわが国独特の貴重な産物で、時代的必然性があったことではあるが、このような発想の酒類は世界でも希有なことである。
 「飽食の日本」の現在でも合成清酒は徐々に伸長しているので、その存在価値は依然として認められているのであろう。「飽食」と はいっても、食糧の異常に高い海外依存によって支えられているコメの相対的比重低下であって、海外事情のバランスが崩れればたち まち飽食などとはいっておられない時代が来ないものでもない。若い人には信じてもらえないかもしれないが、筆者の時代尺度からい えばついこの間までわが国でも飢餓・食糧難に悩まされていたのである。
 世界人口に目を転じれば、一九九九年に六〇億人を突破しており、国連人口推計によれば二〇五〇年には九〇億人になると予測され ているそうである(6)。まさに人口爆発というべきで、今後五〇年間で三〇億人すなわち五〇%増が予測されている。果たしてこれだ けの人々を養う余力がこの地球に残されているのであろうか? 悲観論、楽観論こもごもにある中で、生活レベルにもよることながら 限界に近づいていることだけは確かなようである。もちろん食糧供給能力以上に人口は増えないことはわが国の江戸時代を通じて人口 がほとんど増加していない、というよりも「新生児間引き」や「姥捨て」などの悲しい事例が示すとおり増やせられなかった歴史か らも明らかである。
 世界人口の将来を考えるとき、合成清酒誕生の時代背景が地球規模で起こらないとは断言できないであろう。すなわち、主たる農作 物は食糧に回し、嗜好飲料はその他の原料から作らざるを得ない時代も覚悟しておかなければならないかもしれない。そのような時代 を望んでいるわけではないが、そのときわが国の合成清酒の発想が貴重な先行事例を提供することになるであろうと考えている。

【参考文献】
(1) 全国合成清酒酒造組合編「合成清酒四十余年の歩み」(昭和41年2月25日、全国合成清酒酒造組合発行)… 全般的に引用
(2) 島野隆夫著「商品生産輸出入物量累年統計表――1871年(明治4)〜1960年(昭和35)――」((株)有恒 書院、昭和55年1月12日発行)
(3) (財)矢野恒太郎記念会編「日本国勢図会2001/2002年版」(平成13年6月1日、(株)国勢社発行)
(4) 国税庁課税部酒税課編「酒のしおり」(各年度版)
(5) 米食と日本人の栄養(1)米食の基礎知識」(1971年12月1日、(財)全国米穀配給協会発行)
(6) 国際食料需給と食料安全保障」第3章(平成13年3月30日、(財)農林統計協会発行)

【プロフィール】
大森大陸(おおもり・たいりく)
日仏工業技術会常任理事。1938年生まれ、京都大学農学部農芸化学科卒業後、1962年、協和醗酵工業(株)入社。東京研究所研究員を皮切りに、本社酒類商品開発センター、酒類市場開発部等で酒類市場調査と新製品企画開発を担当。1998年、南九州コカ・コーラボトリング(株)顧問を経て2001年より現在に至る。

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