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グローバル化時代の清酒原料調達システム

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台湾で広がる吟醸酒

日本酒の国際化

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日本の酒の国際化
台湾で広がる吟醸酒
ディストリビューターの開発
 一〇社の蔵元が台湾に足を運んだのは、ホテルで開催される日本酒フェアだけのためではありません。台湾で日本酒の上級クラスの 販売に意欲を見せる問屋との新しい取引がスタートしたのです。フォルモサ・リージェントホテルへの商品供給をどのようなルートで おこなうかを詰めるなかで、ホテルとワインで取引のあった卸をパートナーとすることが決まったのです。開元食品というその卸は台 湾全域に物流網をもち、社員数は七〇〇人にのぼります。コーヒー豆の輸入商社として成長し、ワインやチーズなどの輸入食品に品揃 えを拡大し、業績を伸ばしてきました。これからの日本酒上級品の成長を見込んで、パートナーを探していたところにこの話が舞い込 んだようです。
 開元食品では日本から蔵元が大勢やってくるこの機会に、従業員の研修会の開催をもちかけてきました。蔵元たちは大歓迎です。台 湾各地の営業所から約五〇名の営業担当者が本社に集合し、二日間にわたって商品知識、取り扱い上の注意、販売先と方法など徹底的 な議論がなされました。
 初日、日本酒の基礎知識の授業では、日本酒コンサルタントの松崎晴雄氏が、日本酒のタイプを解説しました。分類軸は原料と製法 の二軸で、「純米酒とアルコールを添加したもの」「精米歩合の高いものと低いもの」に分けます。そのうえで各タイプの典型的な香 味の特徴を述べ、料理との相性に進んでいきます。シンプルな話は、初めて日本酒に触れる人ということを強く意識したからでしょう。 日本酒には例外が多いのですが、そこにはあえて触れません。こうしたコミュニケーションのとり方は、初心者に対して重要で、日本 酒の解説を頼まれる立場の方は全員が身につけるべきです。
 ひととおりの説明と試飲を終えた質疑応答では、多くの質問が飛び交いました。初心者の質問は、ストレートに本質を突いてきます。 この日は、「日本酒の味の違いは米や水などの原料によるものなのか、それとも地域性に よるものなのか」「産地による味の違いがあるのか」「原料の米はどんな種類のものなの か」「等級(格付け)はあるのか。あるとしたらその保証体制はどうなっているのか」「熟成は酒にどんな影響を与えるのか」「料理 に酒が合うとはどういうことか」など、大きな質問が相次ぎました。当然、松崎氏や蔵元はこれらの質問に、丁寧に答えていきます。 テーマによっては最初のシンプルな説明と微妙な食い違いも出てきますが、相手の質問を受けてのことですから、少し難しくなっても 正確に答えるのは正解でしょう。
 一方、蔵元たちの開元食品に寄せる期待は大きいものがあります。同社はコーヒーやワインの輸入商社であることから、台湾全土の 有力なホテルやレストランとパイプがあります。これをフルに活用できれば日本酒上級品の裾野は確実に広がります。さらに、チーズ などの乳製品を扱う同社は低温度帯での物流が可能なのです。課題の流通段階の品質管理面も既存の設備でかなりの解決が図れます。 期待が膨らまないはずがありません。

乾杯の壁
 日本酒の上級品市場が台湾で生まれつつあるのは確かなようです。けれども、このことは文化的にどのように位置づけられるのでし ょうか。そのために台湾の飲酒スタイルがどのようなものなのかを確認します。
 今回同行した蔵元たちは、台湾の飲酒を二つの切り口で捉えています。
 ひとつは、台湾は乾杯の国であるというものです。食事のなかでゆっくり酒を飲む習慣や、一人で酒を飲むという習慣、自宅で晩酌 をするスタイルは、台湾ではほとんど見られません。酒を飲むのはもっぱらパーティで、飲み方は「乾杯」です。一人で酒を飲むのは 下品とされ、酒を飲みたければ周りを見て乾杯の相手を探し、目を合わせたら一気にグラスを空けるのです。このスタイルはビールや 紹興酒だけでなく、日本酒でも、シャンパンでも、ウイスキーやブランデーでも変わりません。当然、一回のパーティで相当な量の酒 が消費されます。たくさん飲んでくれることは、売る側にとってはうれしいことですが、一方で、「あんな飲み方をされたのでは、酒 の味はわからない、結局どんな酒でもいいのか」との不安が付きまといます。
 この意味では、台湾で日本酒の上級品を売るということは、酒を味わって飲むという飲酒文化を持ち込むことと言うことができそう です。この課題は、台湾にワインを広げようとしているフランスにとっても言えることで、両者の啓蒙活動がどのように市場を作ってく のか非常に興味深いところです。

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