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アメリカの日本食ブームとサケ

グローバル化時代の清酒原料調達システム

戦前期朝鮮半島における邦人酒造業の地域的展開と特質

メード・イン・ジャパンの酒の魅力づくり

台湾で広がる吟醸酒

日本酒の国際化

国際化時代の日本酒
酒論稿集
日本の酒の国際化
メード・イン・ジャパンの酒の魅力づくり
第二部 北米と台湾の清酒消費の現場
 ここからは清酒を例に、メード・イン・ジャパンの酒の展開を検討していきます。まずは、その台湾での現場に詳しい宇佐美喜昭氏 (財団法人交流協会 経済部主任)と、アメリカ人の日本酒サポーターで、輸出業務のコーディネーターもしているジャーナリストの ジョン・ゴントナー氏(SAKE WORLD, Inc代表取締役)のお話をご紹介します。

キューティハニーの飲酒シーンに注目
 台湾は日本が植民地化していたため清酒消費の下地があり、一九九一年に清酒の輸入が緩和されると日本からの輸入が急増しました。 その後、台湾公売局が国産清酒の育成をバックアップしたこともあって近年は輸入量は減少。それが、台湾のWTO加盟にともない二 〇〇二年に酒類輸入・卸売りが自由化され、清酒の中小メーカーによる上級クラス商品がさかんに輸入されるようになりました。
 宇佐美氏には台湾での清酒の市場開拓について、制度面での障害、文化面での障害、商慣行上の障害、ジャパニーズ・クールという ムーブメントとの関係という四つの観点から質問しました。その回答は以下の通りです。「販売規制や商慣習の面ではそれほど大きな 障害はありません。しかし、関税面では清酒・焼酎・泡盛は四〇%と高い税率が適用されています。台湾のWTOの加盟時に欧米諸 国が交渉のテーブルに載せた、ビールの五%、ワインの一〇%、ウイスキーやウォッカの免税に比べて不利な状況にあります。
 清酒は、大手メーカーの一般的な商品が、スーパーやコンビニエンスストアに並ぶほど広がっています。飲み方は「熱燗が一般的」。 そういった市場で、高級酒の市場をつくることがいまの課題だと考えていますが、必ずしもうまくいっているわけではありません。
 一番のネックは価格です。ある程度のボリュームが見込める手頃な高級酒という価格で出していくには、関税と酒税で割高になった 清酒に日本とおなじように流通マージンを一定の掛け率で乗せるやり方では難しいでしょう。関税の引き下げを働きかけることはもち ろんですが、当面は仕入れ値に一定の手数料を乗せるやり方にするなど、価格を抑える取り組みが必要だと思います。
 また、品質管理に冷蔵庫が必要な高級酒の扱いを料飲店が嫌います。最近は日本人の駐在員が焼酎を好むため、料飲店もハンドリン グが容易な焼酎をおきたがります。
 文化的には台湾には晩酌のように『ひとりで酒を飲む』習慣はありませんが、自宅に友人を招いてのパーティ需要は大きなものがあ ります。外食でも宴会の飲酒は派手で、ワインやウイスキーなど海外の酒も受け入れていますから、清酒にもチャンスは十分にある。
 ジャパニーズ・クールのムーブメントを追い風にできるかという点では、未成年が関心をもつようなサブカルチャーで日本酒を売る のは適切ではありません。成人が前提なのですから、映画やテレビドラマのなかでの飲酒シーンがポイントなのではないでしょうか。 今度公開されるキューティハニーの実写版のなかでどんな飲酒シーンが出てくるのかには、おおいに注目しています」(参考:宇佐美喜 昭「地酒市場の可能性と課題」)

日本酒へのアクセスルートの整備
 アメリカへの清酒輸出は、日系移民の需要を満たすために早くからおこなわれました。経済成長と日米交流の活発化とともに在米日 本人が増え、一九八〇年代に日本食ブームがおきると現地での製造も本格的にスタートしました。飲み方は「ホット・サケ」といわれ るように超熱燗。日本料理店などで飲まれることがほとんどで、一般家庭で飲まれるほどには浸透していません。
 ゴントナー氏には、清酒の輸出で制度面で障害となっていること、販売業者との契約面での障害、現地の人々への伝達のポイントをお聞きしました。 「制度面ではほかの酒よりも清酒が不利になる規制はないと思います。アメリカは日本よりも文化的に酒にナーバスなことや、連邦と 州のそれぞれの取り決めがあるなど、日本と違ったところがありますが、それは文化や国が違えばどこにでもある程度のものです。
 商習慣の違いでは、流通のマージン率がアメリカのほうが高いことに違和感を感じるメーカーが多いようです。アメリカでは輸入元、 卸、小売り(または飲食店)の各段階で三〇%のマージンを要求します。ですから末端価格は日本を出る時の二倍前後になる。
 日本酒は素材としてとても大きな可能性を秘めていると思います。味わい、飲み方、商品のバックにあるストーリーなど、ハード的 にもソフト的にも、アメリカでも十分に受け入れられるだけの魅力があります。穀物から果実のような香りがどうして生まれるのか、 ひとつひとつ違う微妙な辛酸甘味のバランス、料理との相性の広さ、製法のバラエティの豊かさ、酒蔵がもっている歴史、田圃や酒蔵の 景色、職人の技と近代的な技術の融合など、魅力をいくつもあげることができます。

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