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環境整備からおこなう遠大な取り組み
 具体的には、一九八四年に、地元の田圃に蛍を復活させようと会社で蛍の保護活動を始め、越路町ホタルの会を設立したところから動きが始まる。この会が母体となり、自然保護の会を結成し、さらに発展して、社員・役員からの資金供出なども受けて二〇〇一年には、自然保護のための財団法人「こしじ水と緑の会」が設立された。このことは農業生産法人設立と一見無関係なようだが、水面下では密接につながっていると考えられる。
 このような事業を進められた背景には、純米吟醸などの付加価値商品の多い久保田の成功が影響していることは間違いない。多くの酒造メーカーが生産量を減らしていった九〇年代にブランド力を強め、毎年増石していけたという社内事情。酒質をさらに高めていくためには、高品質な酒造好適米を豊富に安定して確保する必要がある。そのための資金面でも、他のメーカーに比べれば増収を続けている同社は余裕があった。
 稲作への関与も始まっていく。一九九〇年に、杜氏たちによる五百万石の減肥料による試験栽培を開始、年末に農業生産法人「あさひ農研」を設立した。現在ここでおこなわれているのは、主にアイガモ農法による五百万石を中心とする栽培試験、研究である。米を作っている人々の多くは、冬期になると朝日酒造の蔵人となるので、見方を変えれば杜氏と蔵が年間雇用で結ばれたと考えることもできる。ここで実証されたことが契約栽培先の農家への技術指導、生産計画作りへとフィードバックされていくのである。九四年にJAこしじに所属する五地区の生産法人とたかね錦の契約栽培が締結されたのを皮切りに、年々契約先は増えていった。栽培品種も五百万石からたかね錦へと広がり、九七年からは一般粳米である千秋楽にまで広がっている。
 現在では、契約栽培、及びそれに準じるJAこしじ中央支店からの買い入れ米で蔵で使う米の三割をまかなっている(残りは県連もしくは全農からの買い入れで、主に掛米用)。
 朝日酒造のもうひとつの特徴は、契約農家が地元にあることだ。戦前からおこなわれている実質的な契約栽培の先駆けである灘と丹波の山田錦は、たまたま同一県内ではあるが地理的にはかなり離れている。多くの場合は、蔵元が酒造好適米生産地へ出向き契約するというのが主流である。これは米の生産適地と酒蔵の立地適地に相関関係が薄いからであるが、そんななかで地元米にこだわる姿勢を見せたのは特筆される。近年でこそ、地元米使用は兵庫県特A地区などと並んで、地酒のプレステージを上げる要素として働くようになったが、まだあくまでイメージの域であって実際にはなかなか難しい問題を抱えている。まして新潟の場合は、より高価なコシヒカリの産地である。したがってコシヒカリの生産に適さない(酒米には適している)棚田や中山間地保全というテーマも不可欠となってくる。

契約栽培で品質向上を狙う
 さて、もうひとつ取り組みを広げていくためには品質の問題を無視することはできない。生産農家自身に何らかのメリットがなければ酒米作り、契約栽培は広がらないからだ。
 同社の場合、五百万石は県酒造組合を通しての購入となるが、たかね錦、千秋楽の買い入れ先はJAこしじ中央支店であり、いわゆる契約栽培米もJAこしじ中央支店からの直接購入となる。この場合には農協の上部団体のマージンをカットできるので、単位JAにとっての売上金額は飯米と比較検討しうる範囲になってくるようだ。酒用の契約栽培の場合は、心白のたんぱく質の含有率など細かな品質指定がおこなわれるので、一般的に反あたりの収量は少なくなる。耕作農家には、高品質な米を作れば飯米に比べ反あたりの売上増のメリットがあるように補填がおこなわれている。
 朝日酒造がおこなってきた地元での契約栽培の取り組み、農業生産法人あさひ農研設立を、そのまま他社、他地域に適用するのはかなり難しいかもしれない。特に自社で酒米の栽培に関する研究までおこなうことは、それなりの規模と利益があって初めてできることである。通常の蔵では、狭い範囲で蔵元が個人で所有するなどの水田を耕すという事例がほとんどである。しかし、上質な酒造好適米を大量に扱うメーカーにとっては十分に検討すべき取り組みであろう。


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