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県をあげての酒造好適米の開発
 次に山形県を例にして、県をあげて取り組んだ新しい酒米開発と市場導入について考えてみる。
 各県毎にオリジナルの酒造好適米を開発して酒づくりをおこなう例は多い。山形県は、純米酒や吟醸酒への取り組みも早くからおこなわれていて、県外への清酒の「輸出」に対する意欲は高い。最近では、北陸と並んで吟醸酒や純米酒の比率の高い県であるが、県外での存在感がいまひとつ大きくない。灘・伏見、そして新潟・秋田など、日本酒産地としての評価やイメージの高い地域に比べると、その点は弱さにつながる。そこで「山形という産地を強く訴えられるオリジナリティを確立させていきたい」という蔵元側のニーズにも応えたのが、DEWA33プロジェクトである。
 山形県農業試験場が、一九八五年に美山錦と華吹雪を交配させてから一一年の歳月をかけて、県産のオリジナル酒造好適米「出羽燦々(さんさん)」を開発した。
 これが県の奨励品種の酒造好適米に指定されたのが一九九五年のことだ。そして商品化されたのは翌一九九六年である。米の名前を前面に出した統一銘柄を打ち出し、県内の蔵元がこぞって製品化して、県の酒造組合をあげてこの商品をバックアップしていった。毎年、地元と東京でイベントを実施して少しずつ名称を浸透させていく。この継続的に取り組む姿勢は素晴らしいものであった。さらに昨年度からは、県知事の音頭取りで、その最高峰の酒を認定する審査委員会を設けた。審査に合格したものだけが「山形讃歌」という名称をつけて販売することができるという独自の制度である。
 山形県でおこなわれている「出羽燦々」プロジェクトは、言い換えれば官民あげた山形産品の消費拡大運動ととることができる。清酒づくりのいちばん基本となる原材料である米と酵母(山形酵母)と麹(オリーゼ山形)は、それぞれ県内オリジナルのものを官(県)が開発して、その実用化を蔵元が推進する。蔵元から見れば基礎研究を県がおこなってくれたことになるし、県から見れば、県内稲作農家の振興策と捉えることもできる。補助金づけ一辺倒が通常の農政と比較すると、付加価値を生み出すことや消費量拡大の可能性があるなど、はるかに生産的な施策であろう。

作付けしやすい酒造好適米
 この農業振興という観点では、生産農家から次のような意見も出ている。
「出羽燦々は、県農業試験場が開発しただけあり作りやすい品種である。それ以前に作付けしていた美山錦と比較して、倒伏しにくく、心白発現が平均的におこなわれて、個体差、年格差が出にくいので、品質的にも揃ったものができるのがよい」(金山町農協)
 出羽燦々は、当然ながら全量が契約栽培でおこなわれているが、他の酒造好適米に比べると、栽培地域をさほど選ばない。県内では平地から低山間地まで育成が可能で、背丈が山田錦や美山錦ほど高くならず、一般の飯米用と変わらない。これで栽培農家の募集のハードルは低くなる。このプロジェクトを組合で進めている和田多聞氏(和田酒造社長)の言葉を借りれば「酒の販売量さえ増やしていければ、出羽燦々の作付け面積の拡大はいくらでも可能」ということらしい。
 では、このような酒米が開発された背景を少し考えてみよう。

飯米との競合を超えて
 一般的には稲作農家にとっては、反あたりの売上を最大にできるのは、コシヒカリを植えることである。しかし、この米の育成適性に合わない場所もあるのだ。山形県は、その例に当てはまる。したがって、自主流通米を作付けしても産地間競争のなかで強さを発揮することができない。そのため、契約栽培で安定した価格での買い入れが保証されるならば、そちらの作付けを拡大したいという気運が起こりやすい。
 また同時に、出羽燦々を生産する農家への普及指導も、県と酒造組合でおこなっている。蔵元とすれば他県産清酒との差別化には格好の材料なのだ。最高級品の山形讃歌という制度まで準備して、フランスのAOCワインのようなヒエラルキーもできている。後は、いかにこのスペックの酒で最高のものを造り、さらにその認知度や好感度を上げていくかである。そのためには、販売政策・チャネル政策を統合して効果的に展開していくことが求められていくのではないか。


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