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トリプス協定の背景
 WTOが世界的に原産地呼称についてのルールを決定したTRIPS(トリプス)協定の発効は一九九七年とそう古いことではない。 それ以前まではどうなっていたかを確認してみよう。酒類に限ってみても、日本国内で生産されたスパークリングワインにはシャンパ ンと表示されていた。戦前からの赤玉ポートワインという商品もあった。しかもこれは日本に限った問題ではない。カリフォルニアで も八〇年代中頃までは赤ワインにバーガンディ(これはブルゴーニュの英語読みである)と表示したり、白ワインにシャブリと書かれ ていた例は枚挙にいとまがない。これらの名称はいずれも原産地名というよりもカテゴリー名として認知されてきたと言ってよいのだ ろう。しかし使う側ではそう理解しても、原産地(原産国)としては黙視できない。一部は訴訟問題にもなり、このような表示は姿を 消していった。
 国内の似たような事例では、清酒の「灘の生一本」というものがあった。こちらもかつては灘酒の高級なイメージとして使われてい たが、生一本の定義は曖昧であった。現在では、生一本の定義が「単一の製造場で造られた純米酒」にのみ使用できるという定義が定 められて今日では濫用されなくなった。
 このような時代背景の中で産まれたのがWTOのトリプス協定に基づく原産地呼称の保護制度である。つまりあくまで「特定の地域 で作られた品質に特徴のある(評価の高い)産地の名称は、他地区で同じようなものが仮に作れても使ってはいけない」というもので ある。実際にはどのようなものが認定されているのかというと、酒類では、ウイスキーのスコッチ、バーボン、ブランデーのコニャッ ク、アルマニャック、ワインのシェリー、シャンパーニュ、ボルドーなどである。日本でこれらと同様に産地呼称が認められるように なったのが、長崎県壱岐島の壱岐焼酎(麦)、熊本県人吉地区の球磨焼酎(米)、そして沖縄県の琉球泡盛(米)の三種類である。この 認証を得るには製法や原料、伝統などで他地域と際だった違いがないと難しい。

定着しない産地呼称制度
 日本酒では、SOCが中心となって原産地呼称制度を設けている。こちらは発足して日も浅く必ずしも業界内外に認知されたとは言 えない。SOC(原産地呼称日本酒)を名乗るお酒は、申請した蔵が国内産の米を使って造った純米酒で、仕込み水も申請した地元の 水を使うものと規定できる(もちろんこれは基本条件で地域毎により細かい条件を付加している事例は多い)。主眼は、将来外国から 輸入されてくるであろう清酒や、海外から原料米の輸入が進んだ時に向けての規定とも言えよう(図表3)。
 しかしいくら産地指定をしても日本酒の場合は、原料である米の生産地が必ずしも醸造地と同じ地域ではない。米を作るのに適した 気候や土壌と、酒づくりに必要な水質や気候条件とが異なるからだ。それに穀類である米は運送することが簡単である。このあたりが 細かい産地規定を設けにくくさせる要因なのであろう。そしてこの規定がいまひとつ広がりに欠けるのは、その規定を守ることが酒質 の上昇にストレートに結びつかないということにもある。そもそも清酒にはそのような条件以上に、製造過程での人間の知恵や努力の ほうが他の酒類に比して非常に高いウエイトを占めているからだ。
 それに比べると、昭和五八年(一九八三年)に制定された勝沼原産地認証ワインの場合は、消費者にもわかりやすい単純明快なものだ。 山梨県勝沼町内で採れた甲州種のぶどうだけを使って造ったワインという規定だからだ。しかし、こちらの産地認定制度も順調に進ん でいるとは言い難い。本年は甲州種のぶどうが大幅に余っていると報道されている。原因は、その表示をした酒が、認証のない酒より も優れていて人気があるという条件になっていないからだ。もともと人気のあった松阪牛・魚沼産コシヒカリ等を、明確に差別化し ブランド化するために名称制度を整備した農産品とは条件が大きく異なる。
 そしてもうひとつの要因は、この規定が全体の中のごく一部の商品だけを対象にしたものであり、多くの人が毎日飲むような、消費 者が情報をたくさん持っているお酒が規定の中からスッポリと抜け落ちていることだ。この点は、ワインや清酒以上にグレードの幅が 小さい本格焼酎の呼称制度を考える場合にはいちばん留意すべきことであろう。

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