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本格焼酎の産地呼称を考える
泡盛・壱岐・球磨の状況
 さて、トリプス協定によってコニャックやシェリーと並んで地理的保護を受けている三地域の酒の規定はどのようなものであろうか。 琉球泡盛は、黒麹と米(インディカ米)を原料に全麹仕込みをおこない沖縄県内で単式蒸留で造られる酒と定義されている。地元消費 率の高さに加えて近年は首都圏や関西圏への移出も年々増加している。この要因は酒の味覚上の特性もあるだろうが、いちばん大きな 理由は、泡盛という名称にあるのではないかと考える。泡盛と呼んだ瞬間から米で造る他地区の乙類焼酎とは決定的に異なるお酒が想 像される。泡盛の場合は認定される前から条件が整備されていたといってよい。さらに泡盛伝統の古酒の存在も、グレード感を高め人 気を呼ぶことに一役買っているのだろう。戦争で失われた多種多様な黒麹菌を、坂口謹一郎博士が戦前に採取していた標本をもとに復 活させて酒づくりがおこなわれるなど、話題にも事欠かない。
 それでは球磨焼酎と壱岐焼酎はどうであろうか。前者は熊本県南東部の盆地一帯で日本の米焼酎発祥の地と言われる地域。後者は米 麹と麦を使った麦焼酎づくりの発祥の地と言われている。しかし、どちらも歴史的な評価はされていても、他地区産の焼酎を圧倒する 高い人気を得ているというわけではない。中小メーカーが多く、むしろこれから広い市場を開拓して声価を高めていこうというところ である。したがって、現状ではまだこの産地名を使うことでアドバンテージがあるという状況にはなっていない。
 もうひとつ課題をあげるとすると、味覚面でも地域の統一感が失われているということがある。現在は両地区ともに数量的には伝統 的な常圧蒸留から減圧蒸留に中心が変わりつつある。しかしこのふたつの製法の違いは、できあがる焼酎の味をまったく別のタイプに してしまう。双方が同じ産地名焼酎のもとで混在していると、味覚の幅が広くバラエティに富むという利点もあるが、この味が球磨焼 酎、このタイプが壱岐焼酎ということもほとんど言えなくなる。必然的に他の産地の米焼酎や麦焼酎と比較をしてこの地域の特徴とい うものを打ち出すことがやりにくくなるので、消費者へのメッセージが弱くなる。

最大産地鹿児島がまとまらない理由
 一方で、多くの人が本格焼酎の本場というと最初に思い浮かべるのは、鹿児島県である。しかし鹿児島はこの原産地名称保護の規定に 登録されていない。というよりも最終的に自ら申請をしなかったという。原因は大きくふたつあると言われている。
 ひとつは、さつま芋焼酎の産地は、鹿児島と宮崎南部の二県にまたがっているので県名では名乗りにくいということ(どちらも旧薩 摩藩の支配領域ということでは共通している)。そしてもうひとつは、鹿児島でも実はさつま芋焼酎の他に麦焼酎も相当量造られて いるので、鹿児島焼酎=さつま芋焼酎とは言えないという意見である。では原材料名も付ければよいではないかという意見に対しても、 鹿児島では、さつま芋のことを唐芋と呼んでいるので、どういう名前をつけるのがよいか意見が分かれたらしい。
 どちらにしても、穀類ではなくてさつま芋を使う焼酎づくりの技術のオリジナリティと完成度の高さは確かなものである。世界的に も珍しいものだ。小異を捨ててさつま芋焼酎で産地呼称を申請してはどうだろうか。

原料の産地と原産地呼称の関係
 海外で原産地呼称が認定されている他の酒類の場合に、多くは原料の産地もその周辺である場合が多い。同じ蒸留酒のスコッチやバ ーボンのみが例外的に原材料(大麦)の産地についての規定がない。これは、「蒸留酒であるので、原材料の特性が最終製品にそれほ ど大きな影響を与えない」「麦=穀類の特性から、運搬が容易でもともと工場の所在地と原料の産地にさほど近接性が必要ではなかっ た」からであろう。
 しかし、その一方で、スコッチはイギリスを代表する輸出産品になったため、熟成年数や蒸留場所など早くから規定されてきた。グ レーンウイスキーを使ったブレンデッドウイスキーを、スコッチウイスキーと呼べるかについての議論も訴訟に持ち込まれ決着がつい ているくらいである。こうして早くからスコッチと呼べる酒についての条件が整備されてきたので、日本でどんなにスコッチに似たウ イスキーが造られようともウイスキーとは呼べてもスコッチと呼んだ例はない。この点は同じ蒸留酒である焼酎の定義を考える時にも 学ぶべき点がある。商品としては、ブレンデッドが主体であるがモルトウイスキー自体は産地(ハイランド、ローランド、スペイサイ ド、アイレイ等)によって味覚の特性が大きく異なるという特徴を見せている。

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