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消費を左右する他人の視線
 いま、日本の消費は、カネがあっても「使わない」「使えない」「使うものがない」という状況に陥っている。処方箋として、政策面 では不安を取りのぞくためのセーフティネットの拡充が、マーケティング面ではカネを使いたくなるような魅力的な商品(ライフスタ イル)の開発があげられている。セーフティネットは雇用のバックアップや教育の充実、ワークシェアリングの模索など広範にわたる さまざまな議論があるが、ここでは深入りしない。商品の開発については、項をあらためて考えていこう。
 次に消費不況下で生じている二極化現象について代表的な理解を整理しておこう。これは欧米の高級ブランドなどが活況を呈する一 方で、激安な衣料品・外食などが人気であるような現象をさす。消費全体が低迷するなかで両極端な消費に向かい、中間が停滞してい るという理解だ。冒頭の根本氏の見解は、二極化のなかで上位市場の活性化が中位にも波及しより大きな市場として浮上しつつあると いう先行指標を指摘したともとれる。
 二極化する理由には次のような説がある。

(1)社会が階層化し消費者が分化している
(2)同一の消費者が節約と贅沢を使い分け、節約した分を贅沢に回している
(3)消費者が経験も知識も豊富で、コストパフォーマンスの高い商品を選択している
(4)流通とメーカーが薄利多売の競争戦略を採用したことで低価格商品が売れ、一方で高級 品メーカーは流通に踏み込み商品単価アップを図った
(5)他者の視線を意識した消費が顕著になった
(消費の外部性が高まった)

 第五項については、前述の鈴木氏の言う「消費の心理」とも関係する。消費は必要性や価格の妥当性から決断される合理的なもの ばかりではない。人に見せびらかしたいとか、あこがれの地位や職業の気分を味わいたいとか、周りがそうだから私もこれでいいやとか いう、他者の視線を意識した不合理な消費も多い。基本的な衣食住が満たされた豊かな社会では、こうした消費のウエイトが高まる。 なお、ここまでの消費不況と消費の二極化に関する記述は、JMR生活総合研究所『リスクと外部性の経済とマーケティング』をベー スとしている。興味のある方は参照されたい。

減少が目立つ中上級市場
 では、酒類の中上級市場がなぜ活性化していないのかを検討してみよう。アプローチの仕方はふたつ。ひとつは一般に消費が二極化していると言われながら、酒類ではなぜ中上 級市場が不活性なのか。ひとつは中上級商品を買う気にさせる売場や売り方はどのようなものなのかである。
 まず、酒類の中上級市場の実態とその変遷を確認しておこう。以前、二〇〇一年時点で酒類市場に中上級商品が占める割合は金額ベ ースで約一割と推計した(本誌二〇〇二年三月号)。中上級商品は、清酒:特定名称酒、ワイン:フルボトル八〇〇円超のもの、焼酎 甲類:宝焼酎「純」などのニュータイプ品、焼酎乙類:甕仕込み焼酎や熟成タイプなどの特殊品、ウイスキー類:七〇〇p一五〇〇円 超のもの。ビール・発泡酒・低アルコール飲料など他の酒類はすべて低位層(レギュラークラス)とした推計値である。
 こうした市場はかつてどの程度の規模だったのであろうか。清酒とウイスキーは級別制度によって格付けがされていたこと、またワ インはフルボトル一〇〇〇円がスタンダードな商品となっていたこと、ビールにグレードはなく、焼酎は税制面で優遇され安価な酒類 に位置づけられていたことなどから、当時の中上級商品は清酒の特・一級、ウイスキー類の特級とワインであったと見ることができよ う。そこで、ウイスキーの級別が廃止される前年にあたる一九八八年のこれらの消費量を見ると合計で約八六万sあり、酒類の総消費 量の一〇%に相当する。金額にすれば間違いなくこれ以上を占め、現在の中上級市場よりも構成比は高かったことになる。中上級商品 のバラエティが乏しかった当時、級別という制度上のグレード軸をたよりに、中上級商品がいまよりもたくさんの割合で選択されてい たのである。
 中上級市場の構成比が小さくなった理由はふたつあげられる。ひとつはその多くを占めていた清酒とウイスキー類の消費減の影響。 ワインは当時に比べると消費量は三倍弱に増え、低価格ワインが裾野を広げるかたちではあったものの中上級市場もそこそこに育って いる。ふたつはビール・発泡酒と低アルコール飲料の増加により、相対的に中上級商品の構成比が小さくなったことだ。そしてこの分 野で低価格化が著しく進んだ。

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