時代や文化とリンクしたお酒に関する旬の情報サイト
酒文化研究所ホームページ
会社概要酒文化の会メールマガジンContact UsTOP
イベント情報酒と文化コラム酒文研おすすめのお店酒文化論稿集酒飲みのミカタ特ダネ
海外の酒めぐり日本各地の酒文化見学できる工場・ミュージアム酒のデータボックスアジア酒街道を行くリンク集

 
<論稿集トップへ

食と酒におけるイタリーメイドの世界戦略

女性は酒をどう選ぶ

「とりあえずビール」衰退の背景

一〇年後の酒市場 何が増えて何が減る

オープン価格化で
  あなたの仕事はどう変わる?


デフレ時代の
  ハイクラス活性化戦略


本格焼酎の産地呼称
  を考える


機能分化する酒類販売

広告規制と酒類
  マーケティングの将来


酒造メーカーと農業
 の新たな提携条件


灘五郷の伝統と革新
酒論稿集
酒と健康
デフレ時代のハイクラス活性化戦略
支柱となる言葉
 中上級商品が見せびらかしやジャスト・マイスタイルという納得を誘うためには、言葉が必要である。ふつうの人がその言葉を発す ることで、いかにも酒をわかっていると思える言葉である。たとえば「はっきりした輪郭」「上品な渋さ」「長く続くやさしい余韻」「ぱ っと広がる透明感」「とにかくゴージャス」「ふくよかな口当たり」「ひとことでは言えない複雑な味わい」などだ。官能評価の特徴的 な部分を取り出したうえで、形容詞で曖昧さを残すところがポイントだ。言葉のあとに「……がいい(好き)」と続けられ、自分がそ の酒のどこを評価して選んでいるのかを納得したうえ、他者に伝えられるからだ。中上級の商品は、必要があって買うものではないか ら、自分の選択を正当化する言葉が特に重要なのである。現在の中上級商品の多くは、こうした言葉をもっていない。
 言葉は飲み手に酒を捕まえる手がかりを与える。他者が言葉を添えた時に初めて、ふつうの飲み手は味の一端を捕まえることができ、 他との違いを発見する。それをスタートに経験を積むことで全体を理解していく。ひとつの言葉が次の発見の土台になるのだ。
 また、酒類の中上級市場は、たくさんの商品のなかから選択するという購買スタイルになる。この市場ではマスブランドが消費者を リードするとは想定しにくい。しかし、商品群としてアピールするだけで定着させるには長い時間を要し、受容する飲み手も簡単には 増えない。手がかりになるシンボルブランドが要る。シングルモルトウイスキーで言えば、これに該当するのはアイラ島のボウモア、ス ペイサイドのザ・マッカラン、キャンベルタウンのスプリングバンクであろう。この三つ は好事家のオークションで必ずヴィンテージものが出品され高値で取引されるという。こうした情報はシングルモルトの初心者が、た くさんのなかから商品を選ぶ手がかりになる。そのほか初めてシングルモルトを商品化したのがグレンフィディックであるとか、最初に 公認された蒸溜所がグレンリベットであるなどの情報も手がかりになる。
 バラエティに富む中上級商品群のなかで、初心者が安心して試せる支柱の商品が立ち、脇を固める商品群がうまく噛み合った時にそ のカテゴリーは裾野を飛躍的に広げることができる。どのメーカーも自社の商品を選択の支柱にしたいと思うだろう。しかし、これを 決めるのは流通と飲み手である。言葉と商品の整合性がどれだけとれているかが、流通の勧めやすさと飲み手のコミュニケーション量 を決める。そしてコミュニケーション量が支柱をつくりだす。

新人類とその親が引き金を引く
次に中上級商品を受容するのはどんな層か、つまり初期のターゲットをどこに設定するかを検討する。図表1は一九九一年・一九九六 年・二〇〇一年での酒類別の単価を示したものだ。世代ごとにトレースするために二〇〇一年時点の年齢を表側にとった。網をかけた セルは全体の平均値を上回る値のものだ。
 一見して六〇代と三〇代のセルに多く網がかかっていることがわかる。清酒は二〇〇一年は顕著な差は見られないが、一九九一年と 一九九六年では三〇代と六〇代が明らかに他の世代よりも高い商品を消費していることがわかる。焼酎・ウイスキーも同じ傾向である。
 六〇代は一九三一年?一九四〇年生まれで、昭和ヒトケタ世代を中心とする。高度経済成長の真っ只中で壮年期をすごし、停年前にバ ブルが弾けたものの現在よりも恵まれた状況で退職できた。金利の高い時代に貯蓄することができ、年金制度の破綻の心配もないため 老後の生活不安も少ない。三種の神器、3Cなどを買い揃えた経験をもち、基本的に生活の上昇志向が強い。
三〇代は六〇代の子供たちで、新人類とよばれた世代を中心とする。飲酒年齢に達した頃はチューハイブームであったが、ウイスキ ーがまだ元気でサントリーが文系就職希望先のトップになった。直後にバーボンとドライビールのブームを、二〇代後半に吟醸酒ブー ム、三〇代半ばにワインブームを経験した。社会人になってすぐにバブル景気を迎え、派手な独身時代を経験したこともあって「ワン ランク上」が好き。また、オタク文化もこの世代に属する。
 こうした世代の履歴をたどると、昭和ヒトケタ世代と新人類世代が中上級市場の引き金を引く可能性はかなり高いと言えよう。
 ただし、ワインは少し様子が違う。五〇代の団塊世代と二〇代の団塊ジュニア世代が高額商品を飲んでいる。団塊世代は前の世代に 強く反発すると言われるが、前世代が好む清酒に反発してのワインなのであろうか。今後、続々とリタイアし時間とカネに余裕のあるボ リュームゾーンを形成する。彼らがワインの中上級市場を牽引すれば、何度目かのワインの大ブームになる可能性があろう。

<<前頁へ      次頁へ>>