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特約店制度のほころびと繕い
 流通網の変化を図表3のように整理しました。特約店制度という枠組みのなかで、メンバーや経路が複雑化したため、随時、制度が 修整されてきたことでしょう。ここでは価格制度に焦点をあてつつ、どのような修整が求められたかを考えてみます。
 昭和三〇年代までは、特約店制度はシンプルな三段階の流通が主流で、価格・物流・決済なども特約店制度の基本的な取り決めでス ムーズに動いていたと考えられます。
 昭和四〇年代から平成二年頃までは、取引の合理化を推進する意味合いと特約卸店の利益を確保する意味合いの、補完的な価格制度 が創設されたと考えられます。一九七一年(昭和四六年)にキリンビールが物流合理化リベートを創設していますが、メーカーと特 約卸店の間で情報システムの連結する際にも、同様のものが設けられたことでしょう。特約店の利益を調整するための制度とは、有力な 二次卸店にほとんど生産者価格で売り渡すようなケースが発生した場合に、その利益補填をするような制度を指しています。このへん の事情を公表している酒類メーカーはほとんどありませんが、先行して取引制度を変更した加工食品業界や日用雑貨業界では、この時 期、こうした動きが顕著です(根本重之『新取引制度の構築』白桃書房刊)。
 そして一九九〇年(平成二年)以降の変化です。小売段階での価格競争が一般化し、小売段階に大規模化するものや組織小売業化す るものが登場し、上位集中が進行したことでいくつもの齟齬が生じてきました。
 たとえばたくさん販売するほど割引が大きくなる応量リベートは、小売りや卸売りの段階で上位集中が進めば、メーカーや卸店の収 益をどんどん圧迫していきます。最高ランクの謝礼金をもらっている小売店や卸店が、小規模のところを吸収すれば、そこも最高ラン クの謝礼金の対象になってしまうなど、いたずらに支出増を招いてしまいます。あるいは、卸売価格を商品の小売店軒先渡し価格として いることが、組織小売業が物流センターフィーに根拠を与えています。
 さらに、齟齬を繕うために補完的な価格制度がつくられていくにつれ、メーカーや特約卸店の管理業務が膨れ上がっていきます。お 金を支払う側も受け取る側も、伝票上の売買差益では利益が管理できず、最後に〆てみなければいくら儲かったかわからないという不 具合が生じています。
 また、三段階価格制に対する「個々に異なる取引コストをどのように考えるのか」という問いは、関係者の哲学までが問われてきま す。三段階価格制は各段階の価格差を一定マージンとして、個々に取引コストが異なることを無視してきました。配送時間が一〇分で トラック満載分の商品を一度に仕入れる店と、配送に一時間かかる小口仕入れの店では、物流費だけとってもまったくコストが違います。 三段階価格制は取引コストのばらつきを全体としてならすことで、商品を全国の隅々まで同じ価格で届けてきました。これに対して大 規模化した流通業者は、合理化により引き下げた取引コストを売価に反映させることを求めます。しかし、これを推し進めると辺鄙な 地域では、たいへん高価になってしまう可能性があります。郵政事業の民営化や高速道路建設の議論に通じる、採算をどの範囲で考え るか(全体最適と部分最適のバランス)というテーマがここに横たわっています。

急増したメーカーの販売費
 特約店制度がこのように揺らいでくると、市場リーダーとしてメーカーは制度そのものを見直さざるを得なくなります。販売費や広 告宣伝費が利益を圧迫し始め、しかも現在の枠組みでは改善する見通しが持てないのですから、実は待ったなしの状況です。
 アサヒビールとキリンビールの販売奨励金と広告宣伝費の推移を見てみました(図表4)。アサヒビールでは、一九九二年(平成四年) に二〇〇億円弱であった販売奨励金が年々増加し、二〇〇三年(平成一五年)には七八〇億円と四倍に増えています。売上高に占める 割合は二・五%から七・〇%に大幅に増えました。キリンビールは二〇〇一年(平成一三年)に七六五億円(売上高比七・四%)に達 し、広告宣伝費と合わせると売上高の一一・二%を占めるに至ります。その後、削減に取り組み二〇〇三年(平成一五年)には販売奨 励金が五三〇億円弱、広告宣伝費も三〇〇億円となっています。そして、二〇〇五年からのオープン価格制と特約卸店へのリベート体 系変更の発表となりました。
 ここで、オープン価格とリベートについて本稿で使う意味を統一しておきます。オープン価格は、卸売価格や小売価格など再販売価 格に生産者が言及しないものとします。リベートは、生産者が卸・小売り・料飲店の再販売に関連して支払うお金全般を指すことにし ます。
 根本重之氏(拓殖大学教授)は、一般にメーカーはリベートを支払う財布を三つ持っていると言います。第一は約束した販売数量の 達成謝礼など制度化されたお金の財布。第二は特売協力金など担当者の裁量で支払われる販促金の財布。第三は決算協力金など理不尽 な要請に対する財布です(前掲書)。
 第三の財布はフェアな競争を阻害するものですから、本来、用意されるべきではない財布です。表には出ませんが、メーカーの毅然 とした態度が期待されるところです。
 残る二つの財布からの支出方法をどのようにコントロールしていくのか、取引制度の改変では、ここが大きなポイントになります。

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