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「とりあえずビール」衰退の背景
ポスト「とりあえずビール」の三つのカギ
 これまでに見てきたように「とりあえずビール」の揺らぎは、チューハイに代表される低アルコール飲料の供給という製造サイドからの変化、飲酒が個人化しタテの関係が飲酒に及ぼす影響力が希薄になっているという社会的な変化、その結果としてわかりにくい味わいが敬遠される傾向が強まっているという嗜好面での変化(多分に社会的な要素を含んでいるが)によって読み解くことができる。いずれも構造的な変化であり、「とりあえずビール」バナレが一時的なものとは考えにくい。
 酒の世界を豊かにしようと考えるものは、これらの変化をすべて受け容れるところから行動を始めるべきである。変化に反発するような行動、たとえば自身の正当性を訴えるために低アルコール飲料を否定するような態度は、飲み手に懐の浅さを感じさせるだけで、人々の共感を集めることはできないだろう。
 課題は三つである。第一は低アルコール飲料の分野をより豊かにする努力を惜しまないことだ。現在の柑橘系のフレーバーや、甘い果実系のフレーバーにとどまらず、さまざまな商品の開発を進める。ビター系、ハーブ系などとともに、清酒やウイスキーなどの味や香りの系譜をひく新市場の開拓にエネルギーを注ぐ。カクテルにショートとロングがあり、フルーツだけでなく複雑な味わいのリキュールやベルモットが使われ定着していることを想起したい。低アルコール飲料の分野だけで、あらゆる酒の広がりが垣間見えるほどのバラエティを用意できよう。また、制度的な問題から進んだ発泡酒の技術開発が、この変化を促す可能性も小さくはなく、日本的なカクテル文化はこうした取り組みから生まれるのかもしれない。
 第二は各酒類が自身にピッタリの飲用シーンの開発に本気で取り組むことである。「こんな時ならビールだ」と誰もが思うようなイメージづくりである。清酒・焼酎・ワイン・ウイスキーなどが、それぞれにそうしたシーンを持ち、確実にトライアルがおこる構造づくりに力を注ぐ。酒が安価で安定的に入手できるようになったいま、飲み手の指名で選ばれる酒にはこうした構造が不可欠になる。
 また、これは酒類の消費量が一〇年以内に確実に減少傾向に転じるなかで、酒類どうしの棲み分けを志向することでもあり、飲み手に豊富な選択肢を提供し酒文化を豊かにすることを意味する。これまで多くの企業はシェアをパイの奪い合いと捉えて行動してきた。けれどもシェアには分かち合うという意味もある。マイナス成長下でパイのひとり占めを目指す行動を、人々はこれまでのようには受容しないであろう。シェアを奪い合いではなく分かち合いと捉え直すことが必要になる。近年のビールメーカーの総合酒類化は、まず社内競合からこうしたフレーム転換の理解を進め、分かち合いへの変化を促すであろう。
 第三は酒の味覚への教育装置の確保である。酒造工場のゲストハウス・販売店・料飲店など、飲み手との接点で馴染みにくい酒に触れさせ、その酒特有の味や香りを体験させて、前記のような、飲まず嫌い的な側面を払拭させていくことも重要になってくる。
 ポスト「とりあえずビール」の需要開発は、この三方向に集約されていくと考える。


月刊酒文化 2003年 5月

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