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写真8、9 エコ・ガストロノミー(環境に配慮する美食学)をもっとも実感したのはスローツアーと称された、日帰りバスツアーです。バローロやバルバレスコなどイタリア屈指の高級ワイン産地めぐりや、ゴルゴンゾーラチーズやチョコレート菓子の生産者の訪問、新設された「美食の科学の専門大学」の見学など、14ものコースが設定され、サローネ・デル・グーストの期間中、毎日催されています。
 バローロ村を訪問するツアーに参加してみました。参加費はどのツアーも昼食代を含んで15000円ほどです。日本国内の日帰りバスツアーに比べると、やや割高な印象です。にもかかわらず、8割のコースは1カ月以上前に満席という活況です。
 バローロ・ツアーの参加者は30人ほどでした。夫婦や友人と参加している方が多く、7割〜8割は60代以上。イタリア語と英語のガイドがつき、そこについて歩く人数から6割がイタリア語圏からの参加とわかります。英語ガイドについた方は地理的に近いドイツからがもっとも多く半分くらい、残りはアメリカやカナダなど北米からの参加者でした。日本人は私だけです。
 バローロ村では古城とそこに併設された村営のエノテカ(ワインショップ)に立ち寄った後、ワイナリーを訪ね醸造工程や貯酒庫を見学します。最後にゲストハウスで、醸造年度の異なる同タイプワインを試飲しました。この時、試飲の感想をメモする方が数名いらっしゃいました。写真12の男性はドイツから友人のご夫妻と1緒にご夫婦で参加しており、このあとキナートというデザートワインを試飲し、さらにグラッパを試していました。
 ゆっくり見学した後は、近くのシェラスコという古い街のレストランで遅い昼食です。ピエモンテ州の食材を使ったイタリア料理で、メニューには郷土料理も組み込まれています。酒はスパークリングワインから始まって、白ワイン2種類、赤ワイン3種類、キナートワイン1種類と、ランチでもしっかり飲みます。
写真10、11、12 たまたまメキシコから3人で参加していた、初老の女性たちと隣り合わせました。彼女たちはスペイン語しか話せず、イタリア語はおろか英語もほとんどわかりません。それでも堂々と個人旅行でイタリアを歩き、日本人では持て余してしまう量の食事を平然と平らげていきます。そして、彼女たちは立ち寄る先々で、必ずお土産を買うのでした。この日、1人はワイン2本、チョコレート2箱、グラッパ1本をすでに抱えていました。
 アメリカから1人で参加していたテッドさんは、すでに仕事をリタイヤし、旅先でおいしいものを食べるのが楽しみと言います。彼は「ここ(ピエモンテ州)は食材がいいんだ。イタリアの食事はうまい」と繰り返し、英語を理解する参加者はみな「うんうん、その通り」と頷きます。料理にも「この白トリュフの香りは上品だ。今、旬だからね」などとコメントします。
 バローロ・ツアーに参加する前々日に、パリで今もっとも注目されているという、2つ星レストランで食事をする機会がありました。豪華な内装と絶妙のサービスのなかで楽しむフランス料理は、それはすばらしいもの。完成度の高さが、素人にも伝わってきます。さすが、世界中のトップをお客とするレストランです。ちなみにお値段はワイン代込みで1人4万5000円でした。
 直感でしかありませんが、このパリのレストランの常連客は、テッドさんのようにスローツアーに参加し田舎町のレストランで、「ピエモンテの食材は最高だ」とは言わないように思います。ツアーに参加し、素材のよさを誉め、ワインのメモをとる方は、時間に余裕のある富裕層という印象が強く、リタイヤした方が中心です。
 一方、パリの高級レストランの常連客は、より高所得の現役ビジネスマンや上流階級の方でしょう。どちらもガストロノミー(美食)ですが、好みや関心のありかが異なっているように感じます。

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