時代や文化とリンクしたお酒に関する旬の情報サイト
酒文化研究所ホームページ
会社概要酒文化の会メールマガジンContact UsTOP
イベント情報酒と文化コラム酒文研おすすめのお店酒文化論稿集酒飲みのミカタ特ダネ
海外の酒めぐり日本各地の酒文化見学できる工場・ミュージアム酒のデータボックスアジア酒街道を行くリンク集

 
<論稿集トップへ

食と酒におけるイタリーメイドの世界戦略

女性は酒をどう選ぶ

「とりあえずビール」衰退の背景

一〇年後の酒市場 何が増えて何が減る

オープン価格化で
  あなたの仕事はどう変わる?


デフレ時代の
  ハイクラス活性化戦略


本格焼酎の産地呼称
  を考える


機能分化する酒類販売

広告規制と酒類
  マーケティングの将来


酒造メーカーと農業
 の新たな提携条件


灘五郷の伝統と革新
酒論稿集
酒と健康
食と酒におけるイタリーメイドの世界戦略
世界初の伝統食品の生産者国際会議
 そして、フード・コミュニティをテーマに掲げた今回のサローネ・デル・グーストで、特筆すべきプログラムは「テッラ・マードレ」でしょう。これは世界中の伝統食材の生産者や流通業者が1堂に会し、個々に抱える問題や創意工夫などの情報を交換することを狙いとした国際会議です。10月20日〜23日までの4日間、130カ国から、1200以上の食コミュニティの代表者たち約5000人がトリノ市に集りました。途上国からの参加者の交通費は主催者側が負担しています。その他の参加者も現地での滞在費は無料です。日本からも、各地の伝統的食材の生産農家や、その流通や普及活動に係わる方々が大勢参加していました。
 この大規模な会議を主催したのは、スローフード協会とピエモンテ州にとどまらず、イタリア農政省、2006年に冬季オリンピックを開催するトリノ市(イタリアで3番目の大都市)です。国や地方が積極的に伝統的な食材を育成し、持続可能な環境をつくることに取り組んでいることがうかがわれます。
 日本から会議に参加したある生産者は、「世界中から食品の生産者がこれだけの数集まったことに価値があると思います。欧米や日本などの先進国の農業が抱える課題と、食料の増産が必須課題となっている途上地域では、論点も意見も対応もまったく異なり、議論が噛み合わないことはしばしばでした。けれども、参加してよかったと思います。さまざまな考え方や仕組みがあることを知っただけでなく、イタリアが自国産の農産物を国際商品にするために、明確な長期的戦略のもとで活動を展開していることを痛感したからです」と言います。
 たしかに、スローフード協会という民間団体の活動を、自治体や国が支援する体制は日本では考えられません。そして、大量生産されない上質な食品を大切にしようと訴えるスローフード運動を、パスタやコーヒーなどの大規模な加工食品メーカーがスポンサードしています。こうした展開からは、イタリアブランドの食品が高品質であるという国際的評価を確立しようという、したたかな戦略が浮かび上がります。


イタリア食材のよさを教え込む
写真13、14、15 イタリアが自国の食文化を輸出しようという動きは、食材でのブランドづくりにとどまりません。外国人にイタリア料理を教えることを目的とした学校が設けられており、大勢の料理人がそこから巣立って世界中で活躍しています。この学校はイチフ(ICIF)と呼ばれ、EU、ピエモンテ州、ロンバルジア州のほか、大手食品メーカーや調理機器メーカーがバックアップしています。
 生徒は言語圏ごとにまとめられ、半年間のコースを受講します。カリキュラムは、調理技術はもちろんですが、食材やイタリアワインの実務知識、食文化やワイン文化の歴史、文学、イタリア語など多岐にわたり、現地のレストランで数カ月の実習を体験するという本格的なものです。講師は、一流の方ばかりで、ワイン担当のレルカーラさんは1989年のイタリア最優秀ソムリエです。
 イチフは言います。「私たちは学生達に最高の食材を触らせます。オイルはエクストラ・バージンオイルだけしか使いませんし、ワインは講習で最高のイタリアワインを50種類以上テイスティングします。イタリア料理は基本的に郷土料理であり、シンプルな料理です。よい素材を知り、その上手な使い方の習得が欠かせません。
 日本からの学生が驚くのは野菜の味の濃さです。ほとんど露地ものです。ハウスものの多い日本の野菜とは違います。イタリアの農産物はワインも含めて厳しいルールのもとで生産されています。その厳しさは世界1でしょう。そして、イタリアの野菜、肉、穀物の素晴らしさを体験すれば、生徒達は帰国したあともイタリアの優れた食材をどんどん使おうとするはずです。それはイタリアの産業振興にもなるというわけです」
 受講生は以前は北米からが多かったのですが、近年は日本や韓国などアジア地域から留学する人が急増しています。
 イタリアの自国の食文化を国際商品に仕立てる活動のなかで、スローフード運動やイチフが果たす役割はけっして小さくありません。一方、日本は行政にこうした支援は期待できません。今のところ、食や酒の関係者が独自に開拓していくしかないのです。そこで日本の酒類企業がどんな戦略を採用するのか、この大きなテーマを今後の課題として確認し、報告を終わります。

月刊酒文化 2005年1月

<<前頁へ      次頁へ>>