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古き一升びんをたずねて
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変わる食卓・消えた晩酌
失われた家庭の伝承力
−食など生活の基本的な躾は家庭で教えるものと考えられてきましたから、それが揺らいでいることを無視して学校教育が家庭科を軽視した結果というふうにも見えますね。
岩村 「学校教育が」というよりは、社会や経済の要請のほうが強かったのではないしょうか。
 当時の家庭、親だって変化していたのです。1960年以降、家庭にはいままでなかったような加工調味料がたくさん入ってきて、家庭の食卓を変えてきました。だから彼女たちの母親世代も、いままで作ったこともないようなメニューを作り始めたわけです。それらをどんどん取り入れることが「豊かな食卓」だと皆が思った時代ではないでしょうか。麻婆豆腐やクリームシチューの素、サラダドレッシングやスパゲティソースなんかも、それ以前にはほとんど使われていなかったものです。お母さんたちだって、おばあちゃんから習っていたものではありません。加工品、加工調味料を「買う」ことで、新しい家庭メニューを取り込んでいったわけです。
 そのせいだけでもありませんが、この母親世代は、娘たちへ自分の味や家庭料理を伝承することに積極的ではないんです。「私のやり方なんか覚えるより、きちんとしたところで習ってきなさい」と言う母親が多い。あるいは「結婚したらどうせやらなければならないんだからいまはしなくていい」「手伝いより勉強していなさい」と言って教えてもらえなかったケースも珍しくありません。
 結婚して子供連れで実家に帰っても、お客さんになって「手伝いません」という主婦がたくさん調査には出てきます。だから、伝承といっても、一緒に台所にたって習おうとする姿が見られない。「せっかく来たんだから、お母さんのあれ、作って」という関係ですね。

アルコール飲料で流し込む
−調査にはお酒の出てくる食卓もあると思いますが、どんな飲み方をしていますか?
岩村 夫よりも主婦のほうがよく飲んでいるかもしれませんよ。出てくるのは発泡酒やチューハイなどで缶入りが多いですね。ワインはごくたまに、日本酒はめったに出ませんね。昔ながらの酒の肴でご主人が先に晩酌しているという風景はまず見られません。
 グラタンやカレー、サラダやラーメンなんかと一緒に「食べながら」飲んでるんです。「味噌汁がなかったので夫にはビールを出した」と言う主婦もありました。極端に言うとお茶でも味噌汁でも、そして酒でもいい。食事中飲むものがほしい、それがたまたま「酒」だったっていう感覚も見られる。それでは、お酒を味わうというものではないですよね。
−お酒も並ぶ食卓ではどんな会話がでていますか?
岩村 会話内容までは調査していないからわかりませんが、いわゆる「酌み交わす」お酒の飲み方ではなくなっているのは確かです。一緒に飲んでいても、個々ばらばらのお酒を飲んでいる。ボトルが真ん中にあるというシーンが見えないんです。
 家庭においても、お酒は非常にパーソナルなものになってきていると言えるでしょう。
−では、夫婦で酒を注ぎあうシーンなんてありませんか?
岩村 調査ではまだ出ていない光景ですね。外食で居酒屋に行った時やクリスマスなどのイベント食の時の乾杯くらいでしょうか。食事にしろお酒にしろ、同じものをみんなでいただくより、それぞれの好みを尊重することを大事にするのがいまの家族の特徴ですから。「同じ釜の飯を食う」とか「同じ酒を酌み交わす」ということ自体衰退し、「死語」になりつつあるかもしれません。
 「大皿盛りの料理」なども、実は誰がどれをどのくらい食べようといいのよ、という「個の尊重」スタイルであって「みんなで同じもの」という趣旨ではないんです。
 居酒屋ではお馴染みの「とりあえずビール」も減っているようですね。銘々が好きな酒を注文して乾杯。それは家庭でも同じです。
 主婦が昼間、友達と誰かの家に集まる「ママ友ランチ」でもお酒を飲むことがあるんです。出てくるのは缶の発泡酒やビール、チューハイなどです。料理なんかも、若い主婦たちは、それぞれ自分と子供の分のコンビニ弁当や惣菜を買って持ち寄って食べるんです。みんなで同じものを分け合うのではなく、まるで大学の部室ランチやOLの会議室ランチみたいです。
−それでもご馳走の時にはワインや上等のお酒が出てきませんか。
岩村 う〜ん。ご馳走の捉え方自体が違ってきているんですよね。私たち年配の世代はいつもより高価で上等なもの、手のかかったものがご馳走なのですが、彼らにとってのご馳走は「自分の好きなものが好きなように食べられること」なのです。たとえばいくら高価なものでもお仕着せで食べたくもないものがたくさん並ぶ旅館の夕食みたいなものは、必ずしも喜ばれなくなってきているんです。「好きな物」だけのほうがいい。だから、お好み焼きだけの夕食のほうが「ご馳走」だったりするんです。
 よくワインが見られるのはクリスマスの夕食ですね。クリスマスにワインやシャンパンというのは、チキンやケーキ、ツリーと同じように必須アイテムのひとつと考えられているからだと思います。そういう「お約束」になってることや、みんながやってる「ソーシャルスタンダード」となっていることには敏感です。
 日本酒の場合は、厳しいかもしれません。お正月のお屠蘇ですら廃れてきています。いまの人は「飲みながら食べる」ですから、グラタンやサラダ、カレーなどよく出てくる料理に日本酒が合うでしょうか。それから、「注ぎ合う」イメージは食のパーソナル化にマイナスに働いているんです。また御燗をつけるような主婦の手間をかけない飲み方も勧めてほしいですね。ばらばらな酒を楽しめるような「パーソナル飲料化」することは、もはや欠かせないと思います。

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