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おいしいカクテルをお出しするために-<strong>岸</strong> 久(スタア・バー店主)
違和感を察知する勘
― 酒の味覚を磨くのに、いちばんいいお酒はなんでしょうか?
 カクテルだと思います。カクテルはジュースを使います。これは子供の頃からの味覚でおいしさがわかる。そこに酒が入りますから、ウォッカのようにプレーンな味のものでも、ジュースと比べることで酒の味を意識できます。
― 岸さんが「酒の味」をおいしいと思った最初のお酒は何でしたか?
 サイドカーですね。ブランデーをベースにキュラソー(オレンジの果皮の香味を生かしたリキュール。コアントローやグランマルニエなど)とレモンジュースを加えてつくるカクテルです。ブランデーはしっかりした味わいがありますから、その風味を殺さずに他の酒をミックスしておいしく仕上げるのは、簡単ではありません。私はサイドカーで酒のおいしさを知りました。ブランデーという酒をおいしいと思いました。
― カクテルは、おいしいものができても、構成要素がたいへん多いので、どこをどう変えたからこうなったのかを決めるのが難しいように思います。再現性を確保しようとするときに、どこから固定していくのですか?
 よかった理由を常に考えるようにしています。同じ酒をメスシリンダーできちんと測りとって、二人がカクテルをつくると、同じものはできません。シェーカーの大きさや振り方などいろいろなところで違ってきます。厳密に言えば、同じ人がつくっても同じものはできません。素材を固めて、つくり方を工夫して、また素材に戻ってと、試行錯誤を繰り返して、自分なりの味を追求していきます。
 実際にお店でカクテルをお出しするときは、最高のものができるかどうかの前に、お出しできないようなものをつくってしまったときに、それを察知して未然に防がなければなりません。そこでは見たときの勘ですね。カクテルをグラスに注いでお出しするときに「んっ」と感じることがあります。いつもどおりなのに、酒の透明感や粘度が微妙に違う。なんとなく違和感がある。こんなときは、「すみません。作り直しますので、もう一回やらせてください」と申し上げます。そういうカクテルを捨てずに残しておいて、後で味を見てみるとやはりおかしい。
― そういう場合、どこに原因があることが多いんですか? 酒が劣化していたり、グラスの洗浄が不十分だったり、いろいろ考えられますが。
 うちの場合は酒の劣化やグラスなどの洗浄の問題はまずありません。いちばん多いのは果物です。時期によって糖度や酸度が変わるので、それがわからなくて普段と同じようにつくってしまったために、いつもの味が出ない。
― なるほど、農産物のバラツキは仕方がない。それをつくるときに調整する。
 後は単純な間違いです。何種類も酒を混ぜるカクテルをつくっている最中に、お客様から声をかけられたりすると、「あれっ、この酒入れたっけな、入れたと思うんだけど、う〜ん」なんて。
― 岸さんでもそんなことがあるのですか。
 あります。あります。

要所を押さえる 全体が見える
― カクテルをつくるのに細心の注意をはらいつつ、大勢のお客様に気を配る。すごい集中力が要りそうですね。
 バーテンダーの集中力というのは、大きな集中と小さな集中を、要所要所で使い分けて、分散させつつ集中するというものです。たとえばボトルを移動させる場合、ボトルを確実にしっかり掴める位置に手をもっていくところまでは大きな集中が要りますが、そこまで手を持っていってしまったら、あとは目を離してもまず間違いは起きません。そうやって、次々に起きる集中しなければいけないところに注意を持っていきます。このへんは若い人になかなかできないところです。
― 岸さんは、それを修行された「絵里香」で身につけた。
 はい。あっちでこういう動き、こっちではあんな話が飛び交うなかで、必要なときにパッと必要な動きをする。サッカーの試合などでも、みんなが激しく動いているなかで、いいパスをさっと出したり、入ってきたボールに素早く反応してゴールを決めたりしますね。あんな感じ。
― そんなところで仕事をするのは、シビアですけれども気持ちもいいものでしょうね。何も言わず、指示もしないのに全体がシステマチックに動いていく。
 ええ。独立して、自分で店をやってみて、その凄さを実感しました。前の店ではチーフバーテンダーでしたので、周りが上げてくれたパスを確実にゴールする立場でした。それが、独立してみるとパスを上げる人から育てていかないと、前のようにはゴールを決められない。おいしいカクテルをお出しするために必要な、違う種類の大きな仕事がありました。
 個々が自由に動いていながら、全体が統率されて動くようでないと、お客様のおもてなしもできません。おもてなしは余裕ですからね。全体がしっかり動いていくようになっていないと、まず、いいサービスはできません。

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