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おいしいカクテルをお出しするために-<strong>岸</strong> 久(スタア・バー店主)
液体の怖さとシビアさ
― こう言ってはなんですが、カクテルは素人でもらしいものはできますね。脱サラしてバーを始めて、レシピを見ながらカクテルをつくるお店もあります。
 そういう世界もありますね。鮨でも回転寿司もあれば名店もあるのと同じ。
 カクテルは鮨と違って液体ですから、混ぜれば一応できちゃうのが怖いところです。鮨は素人がやれば、ネタとシャリのバランスがよくなかったり、山葵を忘れていればすぐにわかる。けれどもカクテルは、見た目ではわかりません。飲んでちょっと変だなと思っても、よく知らないと「こんなものか」で通ってしまう。だから、カクテルはほんとうに注意が必要なんです。
― 先ほど、つくる人によってカクテルは味が変わるとおっしゃっていましたが、それなりにトレーニングを積んだバーテンダーがやって、見た目は同じようなものができて、それでも味が違うのを感じるようになるというのは、飲む側にも相当な修練が要りそうに思いますが……。
 素直に味わえばいいんです。
 以前、バーテンダーの技能競技大会で審査員をやったことがありました。四〇名ほどの選手が五人分のマティーニをつくって、審査員が動作や手際を見て、味を評価しました。なかにカクテルをつくる動きは素晴らしくて、一〇〇点をつけてしまうくらいの方がいた。できた酒を順に味見していくと、その方のマティーニがおかしい。味がとげとげしくて、飲めたものではない。審査員がみな同じように感じて、視線を合わせて「なんでだろう」って無言で話してる。
― 何が悪かったのですか?
 おそらく五人分つくると酒の量が多くなりますから、ステア(バースプーンで酒をかき回す)するときに微妙に上下の動きを入れて混ぜるのですが、それがなかったのではないかと思います。つくったカクテルを試飲して、丁寧に覚えていけばわかるところなのですが、そういう感覚を持ち合わせないのはバーテンダーとして致命的です。  話を戻しますと、自分の味覚に素直になって、違和感があるものにバツをつけていけばいい。シンプルに感じればいい。

コンクールはモーターショー
― 最後に、新作カクテルがほとんど普及しないことについて、考えをお聞かせください。
 基本的に今あるものを、オリジナリティをもってどれだけ完成度を高められるかを追求すべきだと考えています。サイドカーでもダイキリでも、シンプルでおいしい基本形ができています。それが人によって味が変わる、オリジナリティを出せる余地が十分にある。
 私は新作カクテルのコンクールで何度も優勝させていただきましたが、新作を創作するときに、普及性はまったく考えませんでした。普及を念頭においたらまずデコレーションはできません。酒の種類も多く使えません。
 カクテルコンクールはモーターショーのように位置づけるべきだと思います。最先端の技術を磨いたり、実験的な技術にチャレンジしたりする。そうして磨いた技術を、普段お店で出すカクテルをおいしくするために活用していく。
 洋酒は立体感のある味わいが特徴です。カクテルも、もっと立体感を出す技術が、まだまだあると思います。
― 洋酒は立体感! なるほどそうですね。これからもおいしいカクテルづくりを期待しております。本日は、どうもありがとうございました。

(七月九日:スタア・バー 聞き手/山田聡昭)

【プロフィール】  久(きしひさし) 一九六五年東京都生まれ。一九九六年に「IBA・世界カクテルコンクール」ロングドリンク部門で日本人初のチャンピオンとなる。二〇〇〇年、銀座に「スタア・バー」を開店。(社)日本バーテンダー協会関東地区本部技術研究部部長。

月刊酒文化 2005年10月

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