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酒米生産の現状と課題
3 掛米(酒造適性米)と生産調整
(1)減少する掛米
 日本酒の原料の大部分を占める掛米の生産量の減少が近年著しい。94年以降、毎年、減少しつつある(図表8)。作付面積、出回り数量ともに2000年には94年のほぼ半分にまで落ちこんでいる。今後ともこの傾向は続くと予想され、もし安定的に確保するのであれば何らかの対策を講じる必要がある。
 減少の要因の一つに生産調整との関連があげられる。生産調整面積は大凶作となった93年以降緩和されていたが、96年の新生産調整推進対策から再び強化され、最近は100万haに迫る勢いである。掛米作付面積と生産調整面積との関係を見れば少なからずとも生産調整との関連が明らかになる(図表10)。94年に前年の大凶作の影響で生産調整面積が緩和された時には、若干ながら掛米の作付面積も増加し、生産調整面積が再び増加した97年には掛米作付面積の減少の幅が大きくなっている。
(2)増加するコシヒカリ
 では国産米の主要銘柄であるコシヒカリでも、生産調整面積との連動が見られるのであろうか。基本的に生産調整面積の増減と水稲うるち米作付面積の増減は連動しているのだが、コシヒカリの作付面積は減少するどころか増加している(図表11)。減反が強化され作付面積が削減されているなかで、コシヒカリの作付け面積は増加しているのである。この矛盾を解く鍵は米の価格にある。
 ご承知のようにコシヒカリは飯米として品質面で非常に優れており、大きな需要がある。そのため常に他の品種よりも高値で取引され、栽培適性のある田ではコシヒカリを栽培することで栽培農家の収入は確実に増加する。図表12は新潟コシヒカリと岩手トヨニシキの価格の推移である。全体的に価格が下降しているのだが、新潟コシヒカリは常に2〜3割高い価格で取引されていることがわかる。岩手トヨニシキは代表的な掛米品種で、同じように位置づけられる滋賀日本晴、兵庫金南風、広島中手新千本、福岡ニシホマレ、福岡レイホウとほぼ同水準の価格である。
 これらの事実からコシヒカリが生産調整の強化に反して増加する理由がわかる。農家は生産調整面積が増加すると確実に価格の安い米の生産を止め、栽培が可能であればコシヒカリなどの高価格になる品種に乗り換えようとする。
(3)栽培農家の採算レベル
 さらに栽培農家の生産費から採算性にまで踏み込んでみよう。図表13は全国の農家規模別60s当たり全算入生産費(総コスト)を示している。まず全農家の平均値で全算入生産費は1万7898円。先の岩手トヨニシキの価格は16000円を下回っているから、このような掛米を生産したとなると大赤字となる。ちなみにコシヒカリであれば全算入生産費をカバーし採算ベースにのる。次に栽培面積の規模別で見てみると、3.0ha以上で1万3605円となりようやく元が取れるという状況にある。
 さらに細かく見てみる。図表14は米価の水準ごとに全算入生産費で採算がとれる米穀生産者の割合を示したものである。仮に掛米の価格が1万5000円だとすると、米穀生産者のわずか2.7%しか採算ベースに乗せられない。今後、米の輸入拡大などの影響により、価格がさらに下がればこの割合はいっそう低下することは確実である。
 このように検討してくると、現状のままでは掛米の生産はさらに減少すると思われ、現在使用している品種に関しても将来的には、確保が極めて困難になると言わざるを得ない。今後は掛米生産において階層分化が進むであろう。高品質または地域オリジナルの品種に関しては、酒造好適米と同様に契約栽培などによりプレミアムがつくようになる。同時に団地化などコスト低減の取り組みがなされよう。中レベルの品質のものでは一部、すでにそうなりつつあるが、余剰分の食用米主力品種の転用化が進む。それ以下のものは今後輸入米に代替されていくであろう。当然、こうした掛米を用いた醸造技術の革新も要請される。今後も確保したい掛米品種に関しては、一部の地域で行われているように具体的な対策を講じる必要がある。酒造米は飯米と切り離されたものとして、新たな生産システムの確立を問われていると言っても過言ではないであろう。

月刊酒文化 2003年3月

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