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七月一六日、東京のホテルオークラで『[酒と水の話]?Mother Water?』(酒文化研究所発行/紀伊國屋書店発売)の発行を記念し、酒文化フォーラム「酒と水のおいしい関係」を開催した。
ここでは、酒づくりの基本でありながら、これまであまり語られてこなかった「水」を、さまざまな切り口で俎上に載せたこのフォーラムの概要を報告する
梅雨の晴れ間で蒸し暑かったこの日、会場のホテルオークラ・平安の間には、二〇歳代から四〇歳代の女性を中心に、報道陣も含めおよそ二〇〇名が集まった。
一般参加者は、新聞や雑誌などでの告知を見て応募し、約一〇倍の参加希望者のなかから抽選された人びとである。
昼過ぎから参加者が集まりはじめ、午後一時の受付開始前には、受付カウンターに二〇人ほどの行列ができていたほどで、このことからも「酒と水」というテーマに対する関心の高さがうかがわれる。
そして午後一時三〇分、主催者を代表して弊社代表取締役狩野卓也の挨拶から、フォーラムはスタートした。
狩野は、酒文化研究所の概要を述べたあと、フォーラムのきっかけとなった『酒と水の話』発刊の経緯に話を進める。
「この本ができたのも、私どもがいろんなところを訪問しながら、日本全国には、おいしいお酒だけではなく、おいしい水もあるということに少しずつ気がついてきたからです」
そして、酒づくりのもとになる水を、外国では「MotherWater(マザーウォーター)」と呼ぶことを紹介し、 「今日この催しが、みなさんにとって人生のマザー・ウォーターになれば」と、その挨拶 をしめくくった。
第一部 名水と銘酒の旅トーク
第一部では「名水と銘酒の旅トーク」と題し、『酒と水の話』で紹介した「名水百選」
の地七カ所と、その地で造られている銘酒をテーマに、石川次郎さんと弊社の山田聡昭のトークがおこなわれた。
石川さんは、『ブルータス』『ターザン』などの創刊編集長を務めた名編集者であり、深夜番組「トゥナイト2」の司会者を務めていたことでも知られ、『酒と水の話』の執筆者にも名を連ねている。
「旅」は霊峰月山から始まった
「名水と銘酒の旅」のスタートは、山形県の〈月山山麓湧水群〉である。
山田は、月山の水を「山やま際ぎわの水」だという。
「スポンジに水をたっぷり含ませて、机の上にポンと置くと、じわじわっと水が流れてきます。山に積もった雪が、ブナの林にたくわえられて、山際から、山の出汁がいっぱい詰まったものがじわーっと出してくる。この水ですね」
この水を使った銘酒が、「地ビール月山」である。
石川さんは、一時のブームが去り、良質なものが選別されつつある日本の地ビールと、それに先駆けて一九八〇年代にはじまったアメリカの地ビール(クラフト[手作り]ビール)を比べ、次のように語る。
「サンフランシスコなんて町は、けっこう大きな町で、古くなったエリアがあるんですよ。
そういうところのダウンタウン再開発と連動して、古いビルを使って、地ビール、マイクロ・ブルワリーの会社がたくさん出てきたんですよね。
だからアメリカは、『地ビール=地方』という感じじゃなくて、大都会、街のまん中の
産業というイメージがかなりある」 つづいては、海岸沿いの扇状地にある富山県の〈黒部川扇状地湧水群〉と清酒「幻の瀧」、清酒「月桂冠」をはじめとする「伏見の女酒」を生み出した〈伏見の御香水〉を紹介する。
山田は「どちらも地下水の上に地面が浮いているようなところです」と続ける。
「灘の男酒」を生んだ宮水
つぎは、有名な〈灘の宮水〉である。山田によれば、〈宮水〉は軟水が多い日本には珍しい硬水で、「菊正宗」などの「灘の男酒」といわれるしっかりした味わいは、この水が生んだものだという。
石川さんは、阪神・淡路大震災の際、灘の酒蔵が果たした役割について、次のように述べた。
「そのとき新聞で読んだことを思い出すんですけど、自らも被災された酒蔵が震災直後の被災者の方に、自社の井戸水を提供したっていう話を聞いて、僕ちょっと感動しましたけどね」
その話を受けて、山田がつけ加える。
「酒蔵は水道水以外に地下水というライフラインを持っているんです。震災の時にはお風呂を沸かして銭湯代わりに使ってもらったという蔵もありました」
四つ目に紹介されたのが、サントリーピュアモルトウイスキー「山崎一二年」のマザ
ー・ウォーターである〈離宮の水〉だ。
ここでは、石川さんと山田に「山崎一二年」の水割りがふるまわれた。
「水割りというのは、ウイスキーの味の広がりをすごく感じられる飲み方ですね。ブレンダーの方がたが、味を見極めていく時に、だいたいウイスキーの原酒を倍くらいに薄めて飲む。それが、ウイスキーの味と香りがいちばんわかるんだと言うんですね」(山田)
「僕もそれ、スコットランドで習いましたよ。
氷を入れないで、ウイスキーにそれと同量の水を入れる。それを『トゥワィス・アップ』と言うんだそうです」(石川さん)
阿蘇の水源を守る 「天然水の森」
そして〈霧島山麓丸池湧水〉と芋焼酎「なかむら」につづき、最後に紹介されたのが、 〈熊本・阿蘇〉である。
この熊本は、昭和六〇年に旧環境庁が選定した「名水百選」に、富山県と並んで全国最多の四カ所もの水源地が選ばれている。しかも、五〇万人以上の人口を抱える熊本市は、全部地下水で水道をまかなっている。
壇上のモニターには、『酒と水の話』にも文と写真を寄せている写真家の白川湧さんが撮影した美しい阿蘇の風景が映し出され、その写真をバックに話が進められた。
石川さんは、熊本と聞いてまず思い出すのは、自由律の俳人種田山頭火だという。山頭火は山口県に生まれ、家業の蔵元破産の後、熊本に逃れた。
「彼はたいへんな酒飲みだったんですけれども、こんなことを言ってるんですね。『酒の味はよろしいけれども、水の味はさらに言い難いものがある』と。
飲みたい水が音を立てていたという句もあるんですよ、山頭火には」
さて、水のいい熊本県には、その水を求めてたくさんの企業が集まっているという。七月にビール工場をオープンしたサントリーもそのひとつだ。だが、多くの企業が集まれば、さすがに豊富な水も、いずれは不足するのではないかと不安になる。
「いい水を使い尽くしたら酒のメーカーは自に張りを出すためには、水分をちゃんと補分の首を絞めることになります。サントリーさんが林野庁の『法人の森林(もり)』制度に採用されて、阿蘇に『天然水の森』を作ると聞いていますが、そのへんを考えてのことだと思います」(山田)

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