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日本と海外の酒めぐり
ビールのルーツを訪ねて
ビールのルーツを訪ねて  
ビールのルーツを 求めてエジプトへ
 私は大体「ヴァンダービルト竹寿司」にあるオフィスに常駐していて、「ベルギー竹寿司」には年に二、三回定期的に通うようにしていました。そしてそのたびに、ヨーロッパ諸国、中近東、アフリカへ足を伸ばしました。
 これらの国々に日本やニューヨークから直接出掛けるのは大変ですが、ベルギーを足場にするといとも簡単ですから。「ベルギー竹寿司」はビジネス上からも、私の個人的事情からも実に貴重な存在となりました。
 エジプトに行ったのは1993年のことです。「古代エジプトの食文化」を調べようと思ったのですが、その中に「古代ビールの造り方をこの目で見てみたい」という目的がありました以前ある本で「現代のエジプトには、4000年前と同じやり方で造られたビールがある」というのを読んだのです。
 ところでちょうどこの頃は「イスラム原理主義」の過激派によるテロの嵐が吹き荒れていました。彼らは政府転覆を目的として国家財政の一大収入源である観光を標的に定めたため観光客が襲われたニュースが連日新聞紙上をにぎわせていましたカイロ市内には至る所にカービン銃を持った武装警官の姿が目につきます。ところが思いもかけぬ所でこの過激派の恩恵を受けてしまいました。ホテル代は半額に割引となり、タクシーも値切り放題なのです。観光客が激減してしまったので空室や空
車でいるよりも少しでも収入があった方がいいというわけです。

ビールは液体のパン
 さて肝心のビールですが、ビールは約6000年前、メソポタミアで発祥したと言われています。それがエジプトに伝わりました。また古代エジプト人は近隣の国からは「パン喰い人 び と と仇名をつけられた位にパンが好きで、古代エジプトには少なくても11種類のパンがあったと言われています。
  そしてこのパンからビールが造られたのです。これはカイロ博物館に展示されている模型でよくわかります。王の墓に副葬品として埋葬されていたものですが、粉を挽く人、こねる人パンを焼く人、ビールを壷に移す人などの小さな人形が、隣合ったパン工場とビール工場に配置されています。まず麦芽を粉にひいてこね、小さく丸めて焼きビールブレッドを作りますこれを砕いて水と一緒に壷に入れておくと空中の酵母が入ってきて発酵を始め、やがてビールができるわけです。時にはナツメヤシや蜂蜜等を加えることもありましたが、これは酵母の働きを促すためでしょう。
 アッシリアの軍隊では、このビールブレッドが携行食に使われたそうです。野営地に着くと水を加えてビールを造りましたすぐに発酵するように乾燥した酵母も一緒に持ち歩いたようです。食料にもなるし、水の悪いメソポタミアで中毒を起こさずに水分を補給できる便利なものでした。

密造される 古代のビール
 パンから造られるこの古代ビールはブーザとよばれていますで、着いて早速ホテルのフロントでブーザを飲める所を尋ねたところ、そんな所は知らないと言われてしまいました。本に書いてある位だから、エジプトに行けばすぐにわかるだろうと簡単に考えていたのですが、どうやらあてがはずれたようです。それでも奥のオフィスに聞きに行ってくれて、オールド・カイロのイスラム地区にそのような所があるのを聞いたことがある、という人を見つけてくれましたが、はっきりとした場所がわかりません。その辺りは夜はちょっと恐いのですが、昼間なら大丈夫だろうということで、恐る恐る行ってみました。「ブーザ、ブーザ」と言いながら何人にも聞いてみますが、どうも要領を得ません。中にはニヤッと笑う人もいます。
 どうやら知っていながら教えたくない素振りなのです。ここでまたハタと気がつきました。「ブーザというのは日本でいうとドブロクで、いわば密造酒なのだ。ましてここはイスラム国だからアルコールは御法度ではないか!」
 そこで方針を変えました。まず親切そうなオヤジのいる小さなレストランを探して食事をしました。チップを余分に置いてからおもむろにブーザのことを切り出すと、「何でブーザをそんなに知りたがるんだ」と言うので、「何千年前と同じ方法で造ったビールがあるなんて素晴らしいじゃないか。一度飲んでみたいんだよ」と答えますと、ただの観光客で、別に密造酒を摘発するような意図は無いと思ったのか、「ここで聞いたなんて絶対に言うなよ」と、ついにその場所を知ることが出来ました。何とすぐに近くにあったのです。

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