時代や文化とリンクしたお酒に関する旬の情報サイト
酒文化研究所ホームページ
会社概要酒文化の会メールマガジンContact UsTOP
イベント情報酒と文化コラム酒文研おすすめのお店酒文化論稿集酒飲みのミカタ特ダネ
海外の酒めぐり日本各地の酒文化見学できる工場・ミュージアム酒のデータボックスアジア酒街道を行くリンク集

日本と海外の酒めぐり
黄河下流域の酒を訪ねて
伝統と変革のリアル・エール  
チャンピオン・ビールとこれからのトレンド
 さて、冒頭に紹介したGBBF初日に、2005年のチャンピオン・ビールが発表された。これは醸造家やビール・ジャーナリストらの専門家を中心としたパネラーにより吟味されたものである。
 金賞に輝いたのはCrouch Vale Brewers Gold、銀賞はGrainstore Rutland Panther、そして銅賞はWoodfordes Wherry。
 トップのBrewers Goldは、エセックス州のCrouch Valeによるものゴールデン・エールだ。イギリスの著名ビール・ジャーナリストのロジャー・プロッツ氏の言葉をかりれば、このエールは「グレープフルーツの香りとともに、全体的に柑橘系の個性があり」「オレンジ・ワインの後味がある」とのこと。
 ゴールデン・エールは、イギリスでも比較的新しいスタイルのエールである。そしてチャンピオンに輝いたCrouch Vale Brewer Gold がゴールデン・エールであることは、ブリティッシュ・ビール市場の近況を如実に現している。
 CAMRAの最新リサーチによると、48%の回答者が、ダーク・ビールよりもゴールデン・ビールのほうが好ましいと答え、ダーク・ビールのほうが好ましいとした回答者は37%にとどまった。色が濃いダーク・ビール、つまりビターやストロング、マイルド、スタウトそしてポーターといった伝統的エールがやや劣勢の結果である。
 さらに、女性の54%がゴールデン・エール、28%がダーク(ブラウン)を、25〜34歳の年代層の58%がゴールデンを、一方、45〜54歳の年代層の46%がダーク、35%がゴールデンを好んだ。
 18〜24歳の若者層は、ゴールデンはよりいっそう「リフレッシュする」(42%)と考え、「より味わいがある」と回答したのは24%。25〜34歳の年代層はゴールデンを好む理由に「味わいがある、おいしい」(53%)を挙げた。女性の12%が、ゴールデンはダークより「軽い」(12%)、「強くない」(15%)と考えていることもわかった。
 こうした流れは、かつてブリテン島の人々が、よりさわやかな飲み口を求めて、グルートからホップが使い始め、黒ビールからペール・エールへとトレンドが流れていったことを思い起こさせる。

ゴールデン・エールはピルスナー・ラガーの対抗馬
 リアル・エール関係者にとって、将来の市場の鍵を握る若者のリアル・エール離れは深刻な問題である。
 実は近年、イギリスのリアル・エール市場は、ピルスナー・ラガーの市場拡大によって苦戦を強いられている。イギリスのビール産業の権威ブリティッシュ・ビール・アンド・パブ・アソシエイション(以下BBPA)によると、92年から2002年の10年間に、ビターとスタウト、マイルドの売上のシェアが減少し、ピルスナー・ラガーが増加した。
 また、ピルスナー・ラガー愛好の歴史が長いスコットランドを除き、イギリスにおける人気ビールは60年代まで圧倒的にエールとスタウトで、ラガーは市場の1%を占めるにすぎなかった。しかし70年代からラガーの人気が出始め、現在では市場の半分がラガーで占められるまでになった。
 今日、若者や女性にとって、リアル・エールは重く、アルコール度数が強く、どちらかというと古典的というイメージがあり、対するラガーは飲みあたりも味も軽く飲みやすく、さらにファッショナブルな印象があるようだ。ベルギーのステラ・アルトワをはじめ、アメリカのバドワイザーやメキシコのコロナといったインターナショナル・ラガー・ブランドのほうが若者層の心を捉えているのである。
 そこで、リアル・エールの醸造メーカーは、世界的なラガー・ブランドの対抗馬として、伝統的エールよりも色が薄く、飲みあたりの軽いゴールデン・エールを打ち出し、若い年代層に本物のリアル・エールの魅力をアピールすることで巻き返しを図り始めた。ゴールデンにチャンピオンの座がもたらされたのも、こうした努力が実を結んだからともいえそうだ。
 CAMRAのマイク・べナー チーフ・エグゼクティブは次のように語る。
「新潮流のゴールデン・エールに向けてトレンドが向かっていくのは、リアル・エール市場にとっていいニュース。多くの人々、特に若者や女性は、重すぎ、苦すぎ、といって伝統的なリアル・エールは選ばない傾向にあります。こうしたなかでのゴールデン・エールの猛進は、これまでのリアル・エールそのもののあり方をかえてきており、今日のリアル・エール市場も注目すべき段階を迎えていると思います。消費者は、軽くてリフレッシュできるリアル・ゴールデン・エールを気に入りはじめ、世界的な大量生産されるラガーを、いまいちど締め出し始めつつあります」
 さらにこう続ける。
「ビター、スタウト、それにマイルドといったより伝統的なスタイルは、依然多くのビール・ファンから根強く愛され続けています。しかしながらラガーを選びがちな若者をリアル・エールにひきつけるのは、これからの市場にとって大変重要なことです」

<<前頁へ      次頁へ>>