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カシャーサ・ひすとりい
カシャーサ・ひすとりい  
税収増狙いで進められる酒造の近代化
 MG州にはブラジル国中いたるところにあるこの小規模蒸溜所が集中しており、それだけに製法規定についてもいろいろうるさく、「アランビケ・カシャーサ」という呼称も2006年にMG州の公的機関が決めた。注意しなければならないのは、この呼称が長年にわたり営々と小規模蒸溜所でつくられてきたカシャーサを指すものでないことだ。定められた規格に合致するものだけがアランビケ・カシャーサを呼称する。
 ひところ、五年前には私もそう紹介したが、小規模蒸溜所の酒は、「アーティザン・カシャーサ」と呼ばれていた。大概は家族経営の蒸溜所でつくられ、それがために少量生産である。だれが命名したのか知る由もないが、商品価値を、味の良さ、個性あるアロマや造りの丁寧さにおき、単価はどんどん上がっていった。しかしこれらの蒸溜所の酒が人体にとって安全な飲料であるかどうかは疑問で、州政府の定める設備、施設の規定や環境整備および衛生基準などを満たしているかどうかが問われた。名前の知られている蒸溜所は保健所の検閲を受けやすく、保健所の提示した条件どおりに整備することができず、閉鎖したところも多々ある。
 もともと「アーティザン・カシャーサ」は砂糖生産の副産物として生まれた酒で、自家用あるいは近所に分けるくらいの量でつくられていた。ほとんどの農家(こちらでは fazendaとよぶ)はコーヒー栽培、サトウキビ栽培、牧畜などを兼業している。それが、18世紀に起こったゴールデンラッシュの際にMG州に入植した外部からの労働者が、採掘の疲れや冬場の厳しい寒さを癒すためにカシャーサを所望したために製造業者が増えたいきさつがあり、ほとんどが密造酒である。生産者の多くは酒づくりが課税対象だとの認識すらなかったであろう。また国も雨後のタケノコのように増えた蒸溜所を探し出して課税する苦労を忌避したのではないだろうか。
 この小規模蒸溜所の数が国中で最多のMG州では、今も9000の製造者があるとされ、うち正式に登録されているのは10%ほどだ(『 Diario do Comercio』2010年より)。政府は1989年に、製造や販売の資格要件と課税率を定め、正式に登録させようと準備を進める。取り締まりが厳しくないうちは自ら進んで税金を払う人が少なかっただろう、いよいよ政府が本腰を入れて酒類業を統制に乗り出したというわけだ。税収確保のため、酒づくりの基準制定とは考えたものである。たしかに味がよい、香りがよいとは言っても酒の質を測る尺度がなかったうえ、人体にとっての安全性チェックもされていなかった。州政府は、カシャーサをブラジルの主要な輸出品に育てようと国への呼びかけ、同時に税収確保の二兎を追ってさまざまな法令を定め、製造者登録および販売者登録を促進している。また、販売先(スーパーマーケットや酒屋、料飲店)への教育にも力をいれ、MG 州の料飲検査局をパスした商品にはシールを貼り、このシールなしの商品の締め出しを進めつつある。

アランビケ・カシャーサ蒸溜所の事業スタイル
写真 アランビケ・カシャーサには蒸溜所として三つの形態が、瓶詰業者として二つの形態が規定されている。順番に説明していこう。
第一は一番シンプルな一貫生産スタイルで、原料の栽培から、カシャーサの製造、そして販売までをすべて自社でおこなうケー  ス。蒸溜所は畑を持ち、サトウキビを栽培・収穫する。それを搾って発酵させ、蒸溜し、瓶に詰めて、卸売したり小売したりする。
 第二は近隣の農家からサトウキビジュースを購入して、カシャーサを製造し卸売をおこなうケース。国内で現役最古のアランビケ・カシャーサの蒸溜所といわれるセクロのタイプだ。
 第三は一度だけ蒸溜した蒸溜液(初溜液)を仕入れて、単式蒸溜器で再蒸溜し瓶詰、販売するケース。
 瓶詰業者のスタイルのひとつは、蒸溜所からタンク単位(通常500L)で蒸溜液を購入したカシャーサをそのまま瓶に詰めて販売するケース。もうひとつは複数の蒸溜液を購入し、ブレンドして瓶詰するケースだ。いずれも自社の銘柄名を名乗ることができる。
 なお、カシャーサの熟成は、各蒸溜所の方針とラインアップにより熟成させてから瓶詰めされる商品もある。また、輸出に関しては、すべてのケースで別に登録申請をし、受理されれば輸出も可能である。
 このようにアランビケ・カシャーサメーカーといっても、仕事の業態は様々であるが、近年は大規模化が進む傾向にある。蒸溜器の進化により、長年伝えられてきた(サトウキビ)収穫期あたりのカシャーサの製造量はどんどん増えて、今では一蒸溜所あたり20万Lは軽く超えるようになっている。もちろん昔ながらの蒸溜器を用いている蒸溜所もあるが、この量はすでに小規模蒸溜所とは呼べなくなっている。

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