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日本と海外の酒めぐり
黄河下流域の酒を訪ねて
黄河下流域の酒を訪ねて―中国山東省の酒と飲み手  
即墨で黒い黄酒を味わう
写真  北方型老酒を代表するのが即墨老酒(ジモウラオチュウ)です。即墨は産地名で、青島の隣にある即墨市の特産品となっています。特徴は黒ビールのような濃い色合いとローストした香ばしい香り。紹興酒よりも甘酸っぱく、アルコール度数は一一度と低くなっています。
 即墨市内には北方型老酒メーカーが一〇〇軒前後ありますが、即墨老酒を名乗れるのは山東即墨酒廠の製品だけ。同社の本社工場は、年間八〇〇〇トンの即墨老酒を製造し、北部最大の老酒工場となっています。さらに品質管理レベルは高くISO九〇〇〇に認定されています。
 この酒の黒く香ばしい香りは、独特の製法から生まれます。十分に水を吸わせた黍を大きな鍋に入れ、水を加えて濃いきつね色に焦げるまでじっくりと煮詰めます。そこに、よく炒った麦麹と水を加えて、糖化・発酵させ、搾った後は紹興酒と同じような陶の甕で貯蔵熟成させます。このタイプの甕は、かつて家庭で漬物をつくる時などに広く利用されていたと言います。
 ただ、山東省では即墨老酒がふだんの食事の時に広く飲まれているかというと、そうでもないようでした。市内の販売店では店の隅のほうに並べられていることが多く、どこの飲食店のメニューにもあるというわけではありませんでした。
写真 少し前まで中国北部では酒といえば白酒(焼酎のような透明な蒸留酒)を指しました。食事の時も、乾杯の時にも、アルコール度数が五〇度を超える白酒です。都市部では最近ビールが一般化して白酒に変わりつつあります。こうした飲酒動向のなかで、即墨老酒は健康酒としての性格を強めてきたのでしょう。ビタミン・ミネラルを豊富に含み、アミノ酸の含有量はビールの一〇倍以上とあって、健康酒として毎日少し飲むものという声が多く聞かれました。
 念のため言っておきますが、そうではあるけれども味がよくないわけではありません。甘酸っぱく香ばしいうえに、うまみも豊かな味わいは、間違いなく中国を代表する醸造酒です。日本で飲まれる黄酒は紹興酒タイプがほとんどですが、バラエティが拡がるとしたら、即墨老酒はその筆頭と言えましょう。

蘭陵の美酒
写真  山東省の南部、蒼山県(ツァンシャンシエン)の古い町蘭陵(ランリン)は、名酒の産地として有名です。古くは唐代の詩人李白が、この地の酒を「蘭陵美酒郁金香、玉碗盛来琥珀光、但使主人能酔客、不知何処是他郷」と詠い讃えました。蘭陵美酒(ランリンメイチュウ)は北方型老酒であろうと想像されており、今は、原料の黍を蒸してつくる(即墨老酒は煮詰めて焦がす)、甘みを強く残した黄酒が再現され、商品化されています。
 現在、蘭陵は白酒の大産地となっています。蘭陵でもっとも古く、中国全土でも第三位の白酒の製造規模を誇る蘭陵美酒廠を訪ねました。
 中国式の立派な本社屋で製造部門を統括するさんから、同社のプロフィールをうかがいます。白酒の商品数は一〇〇種類ほどありますが、最近はアルコール度数が低いものが好まれるようになっており、三九度のものがよく売れているそうです(伝統的な白酒はアルコール度数が五〇度を超えます)。さらに「今、二八度でもおいしいタイプを開発しています」と自慢げに話してくれました。
 さんの案内で、白酒の製造工程を見せていただきました。最初に案内された瓶詰め工場には、思わず「うわっ」と声をあげてしまうほど大勢の人が働いていました。一〇近い詰め口ラインのひとつひとつに、五〇人もの作業員が張り付いているのです。貯酒タンクから送られてくる酒を瓶に充填する人、栓をする人、ラベルを貼る人、化粧箱にセットする人、段ボール箱に詰める人などが瓶詰めラインの両側に二列に並び、大きな体育館のような工場のなかは白酒の香りが充満しています。聞けば従業員数は五〇〇〇人、蘭陵の人口はおよそ一〇万人ですから、五%が同社で働いていることになります。

《 写真提供「週刊新潮」 》

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