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日本と海外の酒めぐり
黄河下流域の酒を訪ねて
黄河下流域の酒を訪ねて―中国山東省の酒と飲み手  
庶民に浸透したビール
写真  山東省の中核都市である青島はビールの産地として広く知られています。青島ビールは一九〇三年に、当時山東半島を領有していたドイツによって設立され、今日では中国最大のビールメーカーとなっています。近年、中国のビール消費量はうなぎ登りに増え、一昨年、アメリカを抜いて世界最大のビール消費国となりました。欧米や日本での消費が飽和するなか、急成長する中国ビール市場には国際的に展開するビールメーカーがこぞって参入、バドワイザー、ハイネケン、ミラー、インターブリュー、そして日本のビールメーカーが中国企業としのぎを削っています。
 中国のビールの特徴は味わいが軽いことです。苦味がなく、アルコール度数も三%前後と低め、日本の規格では発泡酒にあたるものがほとんどです。麦芽をたくさん使いホップをきかせた濃厚なビールを好む方にはもの足りないかもしれませんが、脂と香辛料を多用し、濃い目の味付けが多い中華料理にはこれがよく合います。
 青島ではさすがにビールが庶民の生活にしっかり定着していました。レストランでは山東半島名物のアサリを肴に青島ビールが飲まれ、どこの酒売場にも必ず青島ビールが並んでいます。普段は瓶ビールですが、夏季にはジョッキで楽しむ樽生ビールが人気を集めます。これをコンビニエンスストアやレストランで買って、ビニール袋でテイクアウトするほどだそうです。また、結婚式では黄酒はないことが珍しくありませんが、白酒とビールは必ず用意されると言います。
写真 けれども地元からほんとうに愛されている青島ビールも、庶民に飲まれるようになったのはそう古いことではありません。生粋の青島っ子で運転手の蘇さんは、青島ビールが毎日飲めるようになったのはここ一〇年くらいのことだと言います。一九九〇年以前は盆と正月に各世帯に四本配給されるだけ、ほとんどが輸出に回され庶民の口に入るのは地元向けの小規模なビールメーカーの粗悪品だったそうです。経済成長で所得が増えたこと、青島ビールの製造能力と技術レベルが向上したこと、青島ビールのような大規模メーカーが中小メーカーを吸収したことなど、さまざま条件が重なって庶民に広く飲まれるようになったのです。ちなみに蘇さんがビールを飲み始めたのは一五歳の時。中国には飲酒の年齢制限がありませんが、このくらいからお酒に親しみ始めるのが一般的だそうです。

本格化するワインづくり
写真  青島ビールの創業よりも早い一八九二年、烟台(イェンタイ)では欧州系の葡萄品種を用いた本格的なワインづくりがスタートしました。中国国内で二五%のシェアをもつワインのトップメーカー、現在の張裕葡萄酒です。
 烟台は山東半島の中部にあって、渤海をはさんで大連に面し、同緯度の内陸に比べると温暖です。清朝が欧米の圧力で開国すると税関が置かれ(一八六一年)、各国の領事館がありました。ここに駐在する欧米の職員たちにはワインを自家醸造するものがあり、烟台がワインづくりに向いていることを気づきます。張裕葡萄酒の創業者である張弼士(チャンピン)氏は、東南アジアで広く事業を展開していましたが、ドイツやフランスを通じてこうした情報を得て、ワイン・ブランデー製造の事業化に乗り出したといいます。
 中国のワイン消費はビールや白酒に比べるとまだわずかです。けれども着実に伸びており、都市部の酒売り場ではワインが必ず品揃えされ、上海などの大都市ではワイン専門店も登場し始めています。ビールや白酒の価格は日本の一〇分の一以下ですが、輸入ワインは日本と変わりません。それでも買い求める富裕層が小さからぬボリュームで存在するのが現在の中国です。
写真 二〇〇二年、烟台葡萄酒は一三五ヘクタールの葡萄園をもつワイナリーを、フランス企業と合弁で設立しました。渤海に面する広大な葡萄畑には、白ワイン用のシャルドネやリースリング、赤ワイン用のカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロー、そして独自の品種であるカベルネ・ガーニッシュが植えられています。醸造所内は清潔に保たれ、衛生管理レベルは予想以上の高さです。温度と湿度がコントロールされた貯蔵庫にはさまざまな樽で、あるいはボトルでワインが貯蔵されていました。ここから世界に通じるワインが生まれるのも、そう遠くはないかもしれません。

(写真提供『週刊新潮』)

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