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日本と海外の酒めぐり
中欧「酒と水」紀行
中欧「酒と水」紀行1 オーストラリア  
ウイーンにて
写真 半年ぶりのウイーンはすっかり緑に包まれていた。前回は年末ということもあり日没が早く、その上ヨーロッパ特有の曇り空の毎日で一日中夕暮れか夜という感じだった。町にはイルミネーションが輝きコートをはおった人々が行き交い、広場ではグリューワインを片手に談笑する人々が溢れていたものだが、今のウイーンは明るい太陽の下、全く別の顔を見せている。
夕暮れを待っていてもなかなか暗くならないので、友人と「グリンツィング(ウイーン市内の町名でホイリゲの集まる地区)」に出かけることにした。メトロとバスを乗り継いでお目当てのホイリゲ(ワインの新酒を飲ませる造り酒屋)に着いたのは七時頃だったが、まだ昼間の明るさが十分残っている。明るくてもホイリゲはにぎわっていた。赤ワインや白ワインを片手に仲間同士で楽しそうに談笑している。飲み客の間を縫うようにアコーディオンとヴァイオリンの演奏者が行き交う。
冬の間は室内での飲食になるが、この季節のホイリゲは太陽の光が木々の間を通して降り注ぎ、鳥がさえずり、名も知らない多くの花々が咲きみだれ、日常を忘れる別世界を作り出している(飲んでいるうちに「桃仙郷」という言葉を思い出した)。やはりホイリゲは暖かい季節に限るようだ。音楽を聴きながらワインを飲み、語り合えば時間の過ぎていくのを忘れてしまう。この時期忘れてならないのはウイーンのホワイトアスパラだ。直径三センチ近くはあろうかという大きなもので、茹でたり唐揚げにして食べるのだが、これがまたワインとよく合う季節限定の超おすすめ料理なのだ。

写真 次の日ウイーンの中心部ケルントナー通りにあるイタリアンレストランを取材した。このレストランは前回来たとき昼食に寄ったのだが、愛想のいいフロアマネージャーに「近いうちにまた来る」といった約束を果たすためだ。というのもその日本びいきの太っちょマネージャーが「今度来たら美味いグラッパを飲ませる」といったのを私はしっかりと覚えていた。イタリアの蒸留酒グラッパはワインの搾り滓から造ると聞いていたが、フランスのマールやスペインのアグアルディエンテなどと同じ製法だ。この酒の由来にはgrappolo (葡萄の房)から来たという説とバッサーノ・デル・グラッパ(グラッパ山の麓)から来たという説がある。元々はイタリアの限られた地域で飲まれていたもので、前回ご紹介したハンガリーの蒸留酒パーリンカや日本の焼酎とも通じるものがあり面白い。食後酒としてストレートで飲むのが基本だ。スパゲティーや魚介類の料理のあとはお目当てのグラッパの登場だ。小さなグラスからぐいっと一気に飲み干すとアルコール特有の刺すような快感がのどを刺激する。思わず「美味い」というと彼ははじかれたようにまたグラッパをいっぱいに注いだグラスを持ってきた。このグラッパは複数の葡萄滓を混ぜたものではなく、写真 カベルネ・ソーヴィニヨン種単一の「グラッパ・ビアンカ」だという。こんなことが数度続きすっかりいい気持ちになってしまった。このグラッパはウイーンではイタリア料理店のほかにスーパーなどでも手に入る一般的な酒だ。イタリアとオーストリアはすぐ隣の国だということを考えれば当たり前かもしれない。再会を謝して店を出たとき少し下がおぼつかないことに気づき「このあとの取材は無理だな」と感した。

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