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日本と海外の酒めぐり
中欧「酒と水」紀行
中欧「酒と水」紀行1 オーストラリア
バーデンへ
写真 真っ暗なのに目が覚めた。時計を見ると午前4時。それ以降眠れなくなり起きてしまったが、明るくなったのは7時半を過ぎてからだった。
ホテルの朝食は品数も多く質、量ともに申し分ない。特にパンの種類と、チーズやハム類の豊富さはさすがヨーロッパと思わせる。外は霧が立ちこめて天気は最悪である。「フォルクステアーター」まで行き、王宮広場を歩いてみたが、犬を連れたたくさんの人たちが散歩していた。この国に限らず、中欧の人は犬が好きなようで、だいたいの家で飼っているようだ。その犬たちは概ねよく訓練されており人に向かって吠えるなどということはない。ホテルなども犬と同宿できるところがあり、レストランなども同伴できるところがある。日本との違いはよく訓練されていることで、たいていの犬は生後しばらくして訓練所に預けられ、最低限のしつけが施されると聞いた。
散歩から帰ると、今日「バーデン」に案内してくれる、岩切さんご夫妻が迎えに来てくれた。岩切美夏さん、宮崎県出身のオペラ歌手でご主人はオーストリア人である。お二人の案内で「バーデン」へと向かったが、霧が深く、時々ふっと晴れると車窓には果てしなくブドウ畑が広がっていた。まずは「テルマルバート」にある湧水を訪ねた。ここは温泉地としても有名なところで、野外に大きな入浴場がある。温度が低いため冬季は入る人もいないが(室内の施設は結構込んでいた)、春から秋にかけては湯治客で賑わうという。また飲み水としても利用され、毎日大勢の人が水汲みに訪れている。施設の担当者に成分などを尋ねてみたが、誰も知らないという。また分析表などもないとのことで、この辺は日本人の几帳面さと違いおおらかで面白い。早速飲んでみたが、微炭酸が口の中を刺激し、硬水という感じはする。しかしそれほど違和感も感じられず結構うまい。この辺に降った雨がブドウ畑に浸透して地下水となり、何10年という時を経て湧き出しているのだ。思えばこのあたりも火山台地のようで、いい水が湧く要素を持っている。
温泉を撮影していたら正午近くになったので、水道局に急いだ。アルプスから運んできた水をここで消毒して各家庭に給水しているのだが、その辺のことを取材したいと思い訪ねた。正午には5分ほどの時間があったが、担当者は「もう昼だから午後にしてくれ」という。何時に訪ねたらいいか聞くと2時だといった。午前8時から12時までと午後は2時から4時までということらしい。とりつく島もなく追い出され、岩切さんと「ホイリゲ」で昼食を摂ることにした。

ホイリゲ
写真 ウィーンの町の周辺にはワイン畑がたくさんある。そんなワイン畑の真ん中に「ホイリゲ」(複数になるとホイリゲンと言うらしい)はある。有名なのはウィーンの森に近いハイリゲンシュタットからクリンツイング、カーレンベルクにかけてであるが、我々はバーデン近くの「ホイリゲ」にはいった。「ホイリゲ」とは「今年の」という意味があり、今年採れたブドウで作ったワインを指すとともに、それを飲ませる酒場もそう呼ばれている。11月11日聖マルティンの日に解禁になり、新酒のある店には軒先に松の枝でできた「杉玉」のようなものがぶら下がっているのですぐわかる。この辺は何となく日本の造り酒屋に似ているのが不思議だ。各酒場には自作ワインがあるので、きっと店ごとに味が違うのだろう。適当に店を選びはいると、ワインを注文し(もちろん白、赤両方)ウインドウのつまみを物色する。ローストビーフ・ソーセージ・ハム・ベーコン・茹でたジャガイモ・ザワークラウト・ピクルスなどたくさんの種類が並んでいる。白ワインはドイツのものに似たフルーティで少し甘みのあるものと、赤は新酒なので当たり前のことながら、若い感じだが結構おいしく飲めた。
昼食を終え先ほどの水道局に戻ってみた。
この水道水がアルプス取水口から取り入れられ、ウィーンから90kmの所から水道橋で運ばれ、この処理場で殺菌されて(塩素殺菌)家庭に給水されていることと、水質検査は行っているがデータは出せないことだった。また、アルプスから水を引くようになったのは中世にペストが流行ったため、ドナウ川からの取水をやめたことに起因すると聞いた。
アルプスからの水がどのようにして運ばれているのかを見たくて、水道橋を見に連れていってもらった。ちょうどこの橋の下あたりに住んでいる、スージー・エトリッチさんのお宅からこの橋がよく見えるとのことで、行ってみて驚いた。スージーさんの裏庭から見上げる巨大な水道橋は、遙か上空を延々と続いているではないか。それはちょうど私の住まいする熊本、矢部町にある通潤橋を果てしなく長くしたようなものを想像願えればいい。この水道橋の上を数百年にわたって水が流れていると思うと人間の力も大したものだと思わせられる。水道橋とのハーモニーを演出する、黄色のしゃれた作りのその家は1850年から60年にかけての建築だという。しかし外観は美しくとてもそんなに歳を経た建物とは思えない。五年ほど前この家の裏にある川が氾濫して大変だったようで、そのときの写真を見せてもらったが、自然のすさまじい力に驚くばかりであった。

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