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日本と海外の酒めぐり
イスラエルの酒事情
イスラエルの酒事情
街に溢れる酒
 ワイン以外に目を向けると、ビールも古代から消費されていて、今でも1番ポピュラーな飲み物である。ゴールドスターとマカビーが二大ブランドで、ハイネッケン、カルツバーグ、ツボルグなどの外国ビールも現地生産されている。
 イスラエルの人口は、2005年12月で697万人だが、そのうち150万人ちかくはアラブ系住民で、彼らはアルコール飲料を一切消費しない。ペレストロイカ以降、長年出国を禁じられていた旧ソ連からユダヤ人が1990年代に大量にイスラエルに移民した。その数は100万人におよび、受け入れるイスラエル側にも深刻な社会問題、失業問題などを引き起こしたが、副産物としてウォッカの消費を爆発的に増やした。イスラエル産のウォッカも生産されているが、外国からも大量に輸入されている。
 イスラエルというと自爆テロや戦争のイメージが強く、緊張感の高い国と思いがちであるが、実際に行ってみると人々はゆっくりと食事、お酒を楽しんでいる。ワイン、ビール、ウォッカ以外にもあらゆるアルコール飲料が街に溢れているのは、日本と全く同じだ。テルアヴィヴでは深夜遅くまで営業している店も多く、人々は酒を片手に楽しげに談笑している。

多国籍な食卓と洗練
photo 酒のパートナーである料理の方に目を向けると、これが素朴だが親しみやすいものである。イスラエルは世界中のユダヤ人が移民して建国した国なので、料理もそれを反映して多国籍だ。移民が自分の暮らしていた国の料理を持ち込んで、モザイクのように作られてきた料理である。中心となるのは中近東料理で、そこに東欧、西欧、北アフリカの影響が加わっている。オリーヴ、ピタ(直径20cmほどの円形の薄いパン)、フームス(ヒヨコ豆のペースト)、羊肉、牛肉のシンプルなグリルや串焼き、バクラヴァ(薄いペストリーシートを何枚も重ねて巻き、中にナッツ類を入れて焼き、シロップをかけた菓子)など中近東の名物料理はここでも主役である。イスラエルは柑橘類(ジャファ・オレンジが有名)、マンゴ、アヴォカドなどの果物、野菜が美味しいことで有名だが、強烈な太陽の光のもと育ったこれらの果物、野菜は濃い味を持ち、実に美味しい。興味深かったのは、ワインを飲んでいても、一緒にテーブルにオレンジジュースやレモネードが出されることで、水代わりといった感覚なのだろうか。コーヒーは粉ごと煮て上澄みを飲むアラブ式で、カルダモンが入っていてかなり苦かった。
 若い国らしく食文化はまだ素朴で、素材の風味をダイレクトに活かしたものが多いが、国際的なユダヤ民族らしく世界中の様々なトレンドを受け入れて急速に進化していっている。何千年も前からの規則を厳格に守る一方、新しいものも貪欲に吸収するイスラエル。この国の酒文化も今後ますます多様化していくような印象を受けた。
(みやじまいさお:ワインジャーナリスト)

月刊酒文化2006年12月

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