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蒸溜に魅せられたヴィットリオ
蒸溜に魅せられたヴィットリオ  
酒の洗練と生活が見える
 案内を終えると、試飲を勧められました。娘のオリヴィアさんは、「グラッパは最後。繊細なものから試してください。最初は・・・・」と言い、チェリー、アプリコット、りんご、ビール(ホップを加えた後から蒸溜したもの)などの順を追って試飲を勧めます。どれも、素材の瑞々しい香りをたたえていますが、味わいはホワイトスピリッツです。素材本来の味わいを生かすという考えが根本にあるのでしょう、ウイスキーのように貯蔵樽の香味を活かす思想は見受けられません。
 次第に「錬金術」や「エリクサー」という言葉が脳裏に浮かんできました。ヴィットリオは、留めることができない完熟した果実の豊かな香味を、蒸溜によって安定した形で取り出そうとしているのではないのか、という思いが過ぎります。
 あらためて、酒づくりは「選別の連続」であるという思いを強くします。清酒では米を選別したうえ、精米によって欲しい成分を取り出します。ビールは麦芽への加熱の仕方を管理して狙った麦汁を得ます。ワインも葡萄を剪定・誘導し、収穫時に葡萄を選別、破砕の程度を加減して、求めるマスト(搾り液)を得ます。蒸溜酒はさらに蒸溜段階で、欲しい成分を選り分けて行きます。環境と、原材料の個性と、微生物の活動が、相互に影響しあいながら生まれる酒は、授かりものという性格を持つ一方で、要所要所で人間が欲しいものを恣意的に選別しています。
 ふと、カーポヴィッラ蒸溜所の庭先に運び出されていた蒸溜器が目に止まりました。ヴィットリオが「この蒸溜器は気にしないでくれ。近所の農家がヴィナッチャを蒸溜させて欲しいというので、表に出しただけなんだ」と言ったものです。蒸溜は、燻製や漬物のように、食品の保存性を高めたり、別のおいしさを手に入れたりするための加工技術として、生活に根ざしていたものでもあるのです。
 イタリアの田舎町の小さな蒸溜所は、蒸溜の思想や生活とのかかわりを、静かに語っているようです。

月刊酒文化 2005年2月

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