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酒で巡る韓国の旅
酒で巡る韓国の旅  
自宅での酒づくりセミナー
  伝統民俗酒と認められた特定の酒の保護育成とは別の切り口で、韓国の酒文化の伝承に取り組む動きもありました。ベ・サンミョン酒家はサンサチュンというサンザシのお酒のメーカーで、本社工場に伝統酒博物館を併設しています。親会社は漢方薬エキスをふんだんに含む百歳酒を製造する麹醇堂(クッスンダン)。ちなみに両社の製品は米を蒸さず生米のまま粉にしてヌルッと醗酵させる、独特の製法による酒がベースとなっています。
 伝統酒博物館には、時代ごとの酒づくりの整理、韓国の家々で酒づくりの道具を展示、各工程のジオラマによる再現、酒づくりの機械化の進行などが展示されていました。そしてもっとも感心したのは「酒文化セミナー」を定期的に開催していることでした。三〇人ほど入るセミナールームで、家醸酒セミナーや酒器づくりセミナーを開催しています。副支配人のチョン・チャンミンさんは「韓国では家庭での酒づくりが盛んでしたから、自分でお酒をつくるセミナーは今、やっておくべきだと考えています」と言います(図表13)。ちなみにチョンさんは日本の大学の医学部で一一年も乳酸菌の研究をしていたそうで、きれいな日本語で対応くださいました。

揺れ動く韓国の酒作法
  さて、韓国伝統の酒作法は今どのように伝えられているのでしょうか。儒教の影響が強い韓国では、長幼の序列を大切にします。かつては目上からすすめられるまで酒は飲んではいけないとか、目上の人の前で酒を飲む時には上半身を捻って顔を横に向けて飲むように躾けられました。
 こうした作法はソウル市内の飲食店や酒場を見る限り、かなり薄まっているようでした。酒をやり取りする時に、注ぐ側も受ける側も右肘もしくは右脇に左手を添えるスタイルは健在でしたが、目上の人の前で体を横に向けて飲むことはあまり見かけません(図表14)。ただし、この作法も少しフォーマルな場では当たり前におこなわれているとのことです。今回取材をコーディネートしてくれたイ・キョンアさんは、「私もあらたまった感じの席では、意識しなくとも自然に体を捻ってしまうんですよ。友だちもほとんどそうだと思います」と言います。イさんはソウルに住む二〇代の女性です。
 また、韓国では「会社」がたいへん強く意識されています。上司は公私共に部下の面倒をみるものと考える企業風土があります。社員旅行など会社の行事も盛んです。当然、会社の仲間と飲む機会は多く、そこでは上から下への酒がありましょう。強制する人は多くありませんが、上からの酒は断りにくいという感じはあるはずです。
 ビールの入ったジョッキに、ウイスキーを入れたショットグラスを沈めて飲む爆弾酒は、韓国名物とまで言われます。実際に爆弾酒をやっていたグループに話を聞くと、「男同士で絆を深めるためのもので、いつもやっているわけではない」と力説しました。爆弾酒のあまりの評判の悪さに、韓国の国会議員の有志が撲滅運動を始めたと報じられていますが、こうした状況を見ると、そう簡単に爆弾酒はなくなりそうもありません(図表15)。

  校洞法酒を伝承するベ・ヨンシンさんのご長男で、現在、実質的な同社のトップであるチェ・キョンさんは、爆弾酒など乱暴な飲み方が拡大していることを懸念していました。チェさんが特に問題視していたのは家庭に酒の飲み方の教育機会がなくなってしまっていることです。彼は、かつて韓国では七歳から酒に触れさせ、泥酔するまで飲んではいけないことを教えていたと言います。特に長男は家を代表する立場で他家との交際をするための準備として、挨拶の仕方や酒の応酬について厳しく躾けられたのだそうです。未成年飲酒禁止法を改正して家庭での飲酒教育を促すべきだと主張していました。
 ムンベ酒の李基春氏も同様に家庭での飲酒教育の不足を指摘していました。そして伝統的な上質の酒をゆっくり味わって飲む風土を復活させていくことが大切だという考えを示していました。
 希釈式焼酎は、防波堤で釣りをしながら酒盛りをするような、カジュアルな酒との付き合い方をもたらしました(図表16)。一方で、深く酔うことも容認しています。節度を持って酒を楽しむという難題を、韓国もまたこれから模索していくのでしょう。

写真提供『週刊新潮』/撮影 西村 純

月刊酒文化 2005年12月

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