時代や文化とリンクしたお酒に関する旬の情報サイト
酒文化研究所ホームページ
会社概要酒文化の会メールマガジンContact UsTOP
イベント情報酒と文化コラム酒文研おすすめのお店酒文化論稿集酒飲みのミカタ特ダネ
海外の酒めぐり日本各地の酒文化見学できる工場・ミュージアム酒のデータボックスアジア酒街道を行くリンク集

日本と海外の酒めぐり
社交を彩る酒の文化
社交を彩る酒の文化  
幻の三ツ星レストラン
エリゼ宮の入口に立つ儀仗兵 レストランを星の数で格付けするミシュラン・ガイドブック(三つ星が最高)について笑い話がある。
パリのど真中に誰も入れない三つ星レストランがある。さてどこでしょう。
答えはフランス大統領官邸のエリゼ宮。最高級の料理とワイン。世界のV I P をもてなす洗練された作法。セーブル焼の器にバカラのグラス等の食器類……。本来、饗宴は味覚、視覚、触覚など五感を総動員して味わう。この意味で、エリゼ宮はいかなるレストランの追随も許さない。しかも選ばれた者だけがエリゼ宮の食卓に座る資格がある。笑い話はあながちウソではない。
最初に断っておくと、私もエリゼ宮の饗宴のお相伴にあずかったことはない。しかしエリゼ宮にはよく行った。平均すると月二回は足を運んだろうか。時折の大統領会見やスポークスマンのブリーフィング。毎週水曜日の閣議も、重要な案件があると出かけて行った。外国の賓客の歓迎晩餐会も欠かせなかった。
賓客とフランス大統領の饗宴前の会談、饗宴でのスピーチと会話などをフォローするためだ。
晩餐会の模様は、主賓と招待者が引き揚げた後、スポークスマンがブリーフィングしてくれる。この時、饗宴メニューのコピーも配られるが、最初の頃はニュースにならないから注意も払わなかった。料理名とワイン、シャンパンの銘柄を書いただけの、わずか数行のメニューに、外交を読み解く様々な情報が詰め込まれていると気付いたのは、パリ特派員も大分経ってのことである。
どういうことなのか、最近の小渕首相のフランス訪問を例に挙げてみよう。今年一月七日、シラク大統領主催のエリゼ宮歓迎晩餐会である。その時のメニューは次のようなものだった。

[料理]
うみざりがにのポタージュ
若鶏のロティーの悪魔ソース、
バイヨンヌのハムとポテトを添えて
チーズ
チョコレートのデザート
[飲み物]
ワイン
シャトー・オーブリオン88年
シャトー・コス・デストゥルネル90年
シャンパン
ドン・ペリニョン90年

悪魔ソースはエシャロットをみじん切りにして炒め、トマトと煮込んで作ったソースである。バイヨンヌはスペイン国境に近いフランス・バスク地方の町で、ハムが特産だ。
さて飲み物である。シャトー・オーブリオンはボルドー地方でもグラーブ地区の極上白ワイン。同地区は13の赤ワインと8つの白ワインを格付けワイ ンに指定(その中での等級は付けていない)しており、オーブリオンもその一つである。生産量は極めて少なく、晩餐会に出席したワインに造詣の深い松浦晃一郎駐仏日本大使に聞くと「繊細で香り高く、素晴らしかったです」と感想を語った。
赤ワインのコス・デストゥルネルはやはりボルドー地方のメドック地区格付け第二級。内容的には最高レベルの第一級の実力を持つワインだ。そしてシャンパンだが、エリゼ宮がこれぞという賓客に出す二銘柄がある。クリュッグと、このドン・ペリニョンである。
私が持っているメニューによると、エリゼ宮で過去最高のもてなしを受けたのはミッテラン大統領時代の海部首相(90年1月)だった。白、赤とも二番 手クラス。シャンパンは小渕首相と同じドン・ペリニョンだった。しかし総合的にみると小渕首相の方が海部首相より饗宴のレベルは高いといえる。なぜかというとワインの年代がいいのと、希少価値のオーブリオンを供したところにシラク大統領の心遣いを感じさせるからだ。

国賓歓迎晩餐会に使用されるセーブル焼の皿。ナイフ、フォークはクリストフル社製


<<前頁へ      次頁へ>>