時代や文化とリンクしたお酒に関する旬の情報サイト
酒文化研究所ホームページ
会社概要酒文化の会メールマガジンContact UsTOP
イベント情報酒と文化コラム酒文研おすすめのお店酒文化論稿集酒飲みのミカタ特ダネ
海外の酒めぐり日本各地の酒文化見学できる工場・ミュージアム酒のデータボックスアジア酒街道を行くリンク集

日本と海外の酒めぐり
アイリッシュの酒文化
アイリッシュの酒文化  
 ヨーロッパの西端、イギリスの横に浮かぶアイルランド島。その島の住人アイリッシュたちは昨今、ケルト文化の継承者として注目を浴びているが、彼らの先祖はまろやかなアイリッシュ・ウイスキーを生み出すなど酒文化に大いに貢献してきた。アイリッシュと酒文化。ウイスキーを中心にその一端をのぞいてみると――。

ウイスキーの発明者?
 アイルランドの首都ダブリンのパブで、目鼻立ちがぱっちりした中年のバーマンと酒談義にふけっていると、突然、彼は胸を張ってこう言った。
「アイリッシュ・ウイスキーこそウイスキーの原点!」
すごい自信だった。それがこのバーマンだけではなく、多くのアイリッシュたちがそう思っていることがわかった。つまりアイルランドがウイスキーの故郷だということ。もちろん造り手はアイリッシュである。ウイスキーがいつ、どこで、だれの手によって発明されたのかは定かではない。それはしかるべき文献や史料がないからで、諸説ふんぷんといった有り様なのだが、アイルランドではつぎの説が一般的だ。
 6世紀、中東を訪れたアイルランドの修道士が驚くべき技術に眼を見張った。それが蒸留だった。ウイスキー造りに欠かせない蒸留技術は、アラブ人によってすでに四世紀ごろに発明されていた。彼らは香水を造るため花びらを潰して蒸留していたのだが、その技術を修道士が祖国にもたらし、大麦を原料にして酒造りに応用したというのである。その結果、生まれたのがウイスキーだというわけ。香水ではなく、アルコールに眼を向けたのが、いかにもお酒好きのアイリッシュらしい。
 この話はなまじウソとは言えない。6世紀ごろのアイルランドは修道院文化が花盛りで、まさにヨーロッパの先進国だった。修道士によって各地へキリスト教が伝播され、お隣のスコットランドへは五六三年に聖コロンバによって伝えられた。こうした流れを見ると、アイルランドからスコットランドへウイスキー造りの技術が伝わったと考えても何ら不思議ではないように思われる。
 そもそもウイスキーという言葉にしたって、アイリッシュが生み出したと言われている。12世紀、イングランド王のヘンリー二世がアイルランドへ遠征したとき、人々が「ウシュク・ベーハ」(Uisce Beatha)なるアルコール飲料を愛飲していたと記録に残している。「ウシュク・ベーハ」とは、ケルト語の一種アイルランド語(ゲール語)で「生命の水」のこと。それが後にイングランドへ伝わり、「ウシュク」「フスク」「フイス」などと転訛し、16世紀半ばに今日の「ウイスキー」になったという。
 とまれ、ウイスキーの発祥地がアイルランドであれ、スコットランドであれ、ケルト系
の人たちが創造したのはまず間違いない。だからウイスキーは「ケルトのお酒」なのだ。琥珀色の液体のなかに宿る「ケルトの息吹」……。ぼくはそれを感じつつ、いつもグラスを舐めている。

<<前頁へ      次頁へ>>