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日本と海外の酒めぐり
ほろ酔い紀行中国北京
中国の居酒屋で考える  
中華料理の店での日本酒の反応
 私が今回訪ねた瀋陽、承徳、北京などでは前記のような日本料理店の他に、中華料理店もそれぞれ特徴あるところを覗いてみた。承徳では地元名物の鹿肉の旨いところ、北京では北京ダックの老舗店など、時間の許すかぎりいろいろまわった。そんな時、店の店主や従業員にわが国から持参した日本酒をふるまって素直な感想を聞いてみた。そこで驚いたことには、そんな試飲に応じたほとんどの人たちが日本酒を口にするのは初めてだったのである。
 私が海外へ出かける際には、必ず米飯や海苔、梅干などの和食セットと日本酒を持参することは、私と海外へ同行した人たちなら知るところである。私は生来、少なくとも日に1度は米飯を口にしないと、どうにも体調が思わしくないのである。ただ今回の旅のような中国とか、他に韓国、台湾といった米飯に簡単にありつけるところでは、その点での杞憂はない。
 さらに日本酒を持参するのは、日本酒こそ最も端的にわが日本人の特徴を知ってもらえる味わいだと思うからで、他意はない。ややもすると極端な風味で当方の味覚を圧倒しようとする多くの外国の酒に対して、デリケートこの上ない日本酒の風味が少しでも理解されれば有り難いと思うからに他ならない。
 20数年前に、はじめて中国の紹興を訪ねた際、紹興酒の工場責任者が私の出した日本酒を口にして単に「浅い」とだけ表現されたショックは今も忘れない。その後も、世界各国の人たちに試飲の感想を求めたが、その詳細については拙著『知って得するお酒の話』(実業之日本社)に書いた通りである。
 そして今回は、純米吟醸、生ml純米、純米十年古酒など数本を持参した。そして白酒にすっかり慣れた中高年層よりも、多くは20代の若者を中心に試してもらった。紙面の都合で詳述できないが、その一部である。
 「香りが素晴らしい」「随分きめが細かいのねえ」「きつくないからちょうどいい」。同じ酒でも「少し甘い」「少し辛い」と評価が分かれる人。「こんな優しい酒ならいくらでも飲めそう」。「……」表現する言葉をすぐに思いつかない人なども含めて、かなりの期待感を持たせられる反響だった。
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 ところで、わが国で近頃「居食屋」なる看板をよく見かけるようになったのはご存じの通りである。これは居酒屋の「酒」に対して「食」に重点を置いたことからで、「飲む」よりも「食べる」ために足を運ぶ客相手だからファミリー層が多い。したがってこのような店で高濃度の酒を飲む客はほとんどいない。
 中国のレストランでも生活水準の向上とともに、このように「酒」よりも「食」にポイントを置いた家族向きのレストランが増えつつある。そんなところで白酒より低アルコールのビールの需要が増えるのは当然として、繊細で味の奥行きの深い日本酒が認知されるきっかけをなんとかつかめないものかと思う。
 前述のように中産階級を中心に健康食としての和食が注目され、それに合う日本酒が静かなブームを起こしつつある中国である。
 和食の居酒屋も増えるだろうが、既存の中華の料理屋でも、和食と日本酒を次第に常備せざるを得ないようになるのではないかという気がする。

【プロフィール】
山本祥一朗(やまもと しょういちろう)
昭和43年の『みちのく酒の旅』(秋田書店)以来、『美酒との対話』(時事通信社)『日本酒を愉しむ』(中央公論社)から近著の『知って得するお酒の話』(実業之日本社)まで48冊の著書がある。日本文芸家協会会員。


月刊酒文化 2004年12月

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