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日本と海外の酒めぐり
スコットランド紀行
シングルモルトの旅 マッカラン蒸留所
酒をデザインする
マッカラン蒸溜所の案内は社旗の解説から始まった。「ブルーはスペイ川、最上部はそ
こにかかる古い橋であるタルフォードブリッジを、両サイドの花はスコットランドの国花あざみを表しています」と。そして、蒸溜所の室内での写真撮影は禁止だと告げられる。理由はカメラのフラッシュがアルコールに引火することを防ぐためだという。しかしながら、今回訪ねたほかの蒸溜所でも、日本のサントリーやニッカの蒸溜所でもこうした制限は見られない。厳密なリスク管理というよりも、格式の高さを訪問者に体感させるための、マッカラン一流のスタイルであろう。
製麦は関連会社に委託し、ピートは使用しない。麦芽の破砕は昔からのミルを使い、完全密閉型のマッシュタンで厳密な温度管理のもとで糖化する。発酵タンクはステンレス製で、20年前に慎重な実験結果に基づき木桶から変更したという。蒸留器はスペイサイドでもっとも小さいタイプであり、ひとつの初溜釜からの蒸留液をふたつの再溜釜で蒸留するという固有の手法を用いる。
このように、伝統製法を保持するスタンスをとりながらも、随所に新たな技術を導入していることは、すべてのシングルモルトウイスキーメーカーに共通する。多岐にわたる製造工程のなかで、どこを伝統手法ままでおき、どこにどう新しい技術を採用するのか、まさに酒づくりデザインである。それは酒質にとどまらず、飲み手へのメッセージまで決める。

極上のシェリー樽だけで熟成
貯蔵はすべてシェリー樽でおこなわれる。スコッチウイスキーの貯蔵には、バーボン樽が多く使われているが、マッカランは一切使用しない。総コストで見るとシェリー樽はバーボン樽の10倍もの価格になるという。ただし、シェリー樽がバーボン樽より優れているというわけではない。樽の材質・香り・サイズが異なるため、タイプの違うウイスキー原酒が得られるということだ。
マッカランはシェリー樽の確保のために、スペインで新樽を買い付け、一年間シェリーの醸造に使用させた後、二年間オロロソ・シェリーを貯蔵させている。そのうえで樽を輸入してウイスキーの熟成に用いる。大麦の契約栽培といい、シェリー樽の徹底した管理といい、マッカランの酒づくりは独特の信念を感じさせる。
ところで、ウイスキーが樽で貯蔵されるようになった時期は一八世紀頃とされる。当時、イングランドではシェリーの需要が急増しており、その空樽が豊富にあった。それがウイスキーづくりに使われるようになったという。一方、アメリカでコーンを使い、連続式蒸留機によるバーボンが登場するのは一八世紀末。ポットスティルを使わなかったのは、ウイスキーづくりを始めたのがアイルランド系の移民が多かったためという。スコッチウイスキーが使い始めたのは、シェリー樽のほうが古く、バーボン樽は後である。

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