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日本と海外の酒めぐり
スコットランド紀行
シングルモルトの旅 グレンフィディック
風土が酒を育て技術が洗練する
土を剥き出しにした貯蔵庫には、スコットランドとは思えない湿度がある。ちょうど日本の土蔵のなかにいるような感じだ。そこで長い眠りを経たウイスキーは樽ごとに異なる表情を見せる。

そして、マッカランでは再溜釜が一四基あり、蒸留直後にひとつのタンクにまとめられて樽に詰められる。つまり、樽詰する時点では均質の酒だ。それが、よく管理された樽で、同じ貯蔵庫で熟成されたにもかかわらず、色も香りもずいぶんと異なったものとなる。見学者用にそれを示すサンプルボトルが用意されている(写真4)。

それらを示しながら案内者は次のように言う。
「同じように大切に育てたウイスキーも、このようにさまざまな原酒になります。スコットランドの風土と樽の恵みです。でも、マッカランの名を冠するものを、バラバラな味わいのまま世に出すわけにはまいりません。ウイスキーメーカーと呼ばれる4〜5人のチームが150の樽を選び出し、それをさらに50に絞込み、ヴ ァッティングのレシピを作りマッカランにふわしい味わいに仕上げていきます」

ゲストハウスに戻ると隣接してあるブレンダー室が目に入る。ウイスキーのサンプル瓶が机の上に山ほど並んでおり、香味成分を分析するらしい機器も見える。ゲストハウスのショップからテイスティングルームへの通路には、マッカランを代表する商品のテイストチャートが壁にかけられていた(写真6)。風土に育まれた酒を、自分たちが洗練しているのだというメッセージであろうか。素朴で豊かな素材感を感じさせるシングルモルトに、人の技術が大きく関与しているのだということを示す見事な演出である。こうした仕掛けは他のシングルモルト蒸溜所では見受けられない。

風贅沢であることがマッカランの証
マッカランの酒づくりをたどってみるとハロッズがロールスロイスと評した理由がはっきりと見えてくる。贅沢に素材を使い、人知をもって洗練を極めようとする酒を例えるなら、ジャガーでもロータスでもなく、やはりロールスロイスなのである。酒をこうしたいという強烈な意思と、それに即してデザインされた製造体系。ゴージャスな味わいを強調し、蒸溜所を訪れる人々へのプレゼンテーションもそのように設計される。
マッカランは、シングルモルトが単に風土の酒と受け止められることを好まないだろう。風土とともに在りながら、ブレンデッドを超える洗練を獲得しようとしているからだ。
ただ、マッカランがこうしたチャレンジを可能にするビジネスの仕組みをもつことも忘れてはならない。同社は、モルトウイスキーの蒸溜所としては最大級の規模をもち、ブレンデッド用にたくさんのモルトウイスキーも販売している。また、モルトウイスキーを自社の貯蔵庫に寝かせたまま新酒で売買し、需要が予想を上回れば買い戻すような取り引きもある。ウイスキービジネスは、製品が商品となって売れるまでに長い時間を要する。酒づくりは経済システムの上に成り立つものという側面を忘れてはならない。

月刊酒文化(2002年11月号)

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