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日本と海外の酒めぐり
スコットランド紀行
シングルモルトの旅 グレンフィディック
イングランドに接し、スコットランドではいち早く工業化・都市化の洗礼を受けたローランド地方。この地方のモルトウイスキー蒸溜所は、ブレンデッドウイスキーの登場を機とするウイスキー産業の大規模化のなかで静かに消えていった。わずかに残ったローランドのモルトウイスキー蒸溜所の足跡から、スコッチウイスキーの一面を眺める。

グレーンウィスキー蒸留所と瓶詰め工場
スコットランド南部のローランド地方には、なだらかな丘陵や平野が広がっており、ハイランド地方のような険しい山や島嶼部のような強い風はない。スコットランドの産業や観光の拠点都市エジンバラとグラスゴーはどちらもこのエリアにあり、両市を合わせると人口は100万人を超える。スコットランドの人口のおよそ二割が集中している勘定だ。
しかし、モルトウイスキーの蒸溜所はわずか七つ。スコットランドの100を超えるモルトウイスキー蒸溜所の一割に満たない。そのなかには閉鎖されている蒸溜所や、ブレンド用のモルトウイスキーを造るだけで独自の商品をもたない蒸溜所もある。
一方、グレーンウイスキー蒸溜所はローランドに集中している。スコットランドには八つのグレーンウイスキー蒸溜所があるが、そのうち七つはローランドにある。グレーンウイスキーのほとんどはブレンデッドウイスキーの原料となる。そのためローランドには瓶詰め工場が集中し、ブレンダーも大勢いる。

そう、ローランドは、アンドリュー=アッシャーに始まるブレンド技術と、イオニアス=コフィの連続式蒸溜機の発明という二つの技術革新によるウイスキー産業の変貌を、体現するエリアなのである。

ローランド伝統の三回蒸溜
現在もローランドで操業し、シングルモルトウイスキーを市販している二つの蒸溜所のひとつ、オーヘントッシャン蒸溜所を訪ねた。
ここは、グラスゴーから車で20分ほどの郊外にあり、そばをクライド川が流れる。周辺には住宅も多く、背後にキルパトリック丘陵を抱えている。創業は1823年、現在はモリソン・ボウモア社が所有している。ロニー工場長自ら工場を案内し、オーヘントッシャン製法の特徴を説明してくれた。同社の最大の特徴は三回蒸溜という蒸溜方法にあり、より早く熟成するウイスキー原酒が得られるという。これは蒸溜を三回繰り返すローランドの伝統的な手法であるが、現在も続けているのは同社だけである。ふつうスコッチのモルトウイスキーは、麦芽の発酵液(ウォート:アルコール度数7%前後)を蒸溜しローワイン(アルコール度数25%前後)を得る初溜と、それを再度蒸溜しアルコール度数を68%前後に高める再溜の二回の蒸溜をおこなう。三回蒸溜は、初溜と再溜の間にインターミディスティルといわれる蒸溜工程が入り、最終的にアルコール度数は81%にまで高まる。こうして得られたニューポットはキルパトリック丘陵の湧き水でアルコール度数63.5%に調整され貯蔵される。蒸溜機はぜんぶで三基。三回蒸溜の工程でいえば一式だ。ハイランドで見たグレンフィディックやマッカランは20基以上の蒸溜機を有しており、それらと比べると段違いに小さな規模である。もっとも両社はスコットランドのモルトウイスキー蒸溜所のなかでも最大級であり、オーヘントッシャンのようなスタイルが一般的と言うのが正しいだろう。

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