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いま、酒造業を創業するということ
製造免許なしのスタート
ヴォー・ペイサージュは、酒造免許も製造設備もないワイナリーである。創業は1999年。あるのはぶどう畑と岡本英史さんの醸造技術だ。収穫したぶどうを、近くのワインメーカーの工場を借りて自分でワインにする。ワインの製造元はそのメーカーとなるが、実質的に彼が作ったもの。オリジナルのラベルを貼って、ぶどう畑のそばにオープンした観光施設で消費者に直接販売している。
岡本さんは愛知県出身の31歳。山梨大学でワイン醸造を学んだ後、勝沼のワインメーカーに就職する。最初の年からワインの製造を任され、3年間試行錯誤を繰り返す。そして彼のワインは勝沼地区のワイン鑑評会でトップの評価を受けた。
「ワインは基本的な醸造の知識を身につけたうえで、一生懸命作ればある程度のものはできるようになります。そこからもっといいものを作ろうとすると、ぶどう作りを自分でやるしかない。ワイナリーの本来の姿にならなければできないんです」
これが、不安定な形のままで、あえてぶどう畑作りに踏みきった理由である。
山梨県須玉町は標高が800m近くあり、冬場は冷え込みが非常に厳しい。町内にワインメーカーはなく、ぶどう栽培は冬場の気温が低すぎて難しいといわれていた。にもかかわらず、ここにぶどう畑を作ったのは、ワイン用のぶどう作りに適した土壌で、春夏の気象データがカリフォルニアのナパヴァレーに近いからだ。
何度も地主を訪ね、土地の提供をお願いした。甲府から須玉町に引っ越してきた時にも、まだ、確約がとれていないという綱渡りのスタート。畑作りは、岡本さんご夫妻とご両親だけ、まさに家族総出であった。

求められる産地意識
ぶどう畑作りからスタートするワイナリーは海外では珍しくなく、高く評価されているワイナリーにもこのスタイルで創業したところが少なくないという。既存のワイナリーが醸造設備と場所を提供することで、新しい意欲的な作り手のチャンレンジを促進し、産地としてのポテンシャルを高めるという理解があるのだそうだ。そして、こうした手法であれば、岡本さんは、1.5haのぶどう畑で家族経営のワイナリーは成り立つと言う。
たしかに課題は山積している。ぶどうは着々と育っているが、酒造免許取得のめどは立っておらず、今秋に醸造場所を提供してくれるワイナリーも決まっていない。剪定や収穫などの農作業も、自分たちだけではまかないきれず、一般のボランティアに頼らざるを得ない状況だ。販路も、観光施設の売店とそこでの飲食施設、近隣のペンション数軒だけだ。支援者を増やし、岡本さん自身がワイン作りに集中できる体制づくりは急務である。
農産物にもっとも近い酒であるワインは、産地と切り離すことができない。ヴォー・ペイサージュが飛躍するには、これまでにワイナリーのなかった須玉町津金地区をいかに巻き込んでいくかが鍵であろう。ぶどう畑に隣接する観光施設は、古い小学校の校舎を改造した「おいしい学校」という体験型の食の振興施設だ。第三セクターが運営するこの施設と共同し、津金地区を銘醸ワインの産地として活性化するくらいの展望がいる。「おいしい学校」が製造免許を取得し、ヴォー・ペイサージュ方式のワイナリーを周辺にどんどん誘致するというのはいかがだろうか。

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